AIとARで変わる、未来の職場・働き方

ロボットの時代が、すぐそこまで来ています。しかし、パニックを起こさないでください。ご存知のように、近年、AIなどの破壊的テクノロジーはSF映画の世界に留まらず、現実の日常生活の中に蔓延するようになりました。私たち人間とそのキャリアの未来には、何が待ち受けているのでしょうか? 専門家の話を以下にまとめてみました。

AIの隆盛

作業効率に着目すれば、機械の能力は、手作業やルーチンワークの大半において人間を上回っており、そこに疑問の余地はありません。しかし、専門家の予測では、実のところAIは、仕事を奪うよりも、むしろ生み出すことのほうが多いという考えが主流となっています。労働者は、仕事の自動化に向けた適切な支援とトレーニングが行われるならば、それによって解放される時間を、ロボットには不向きな、より創造的で重要な作業にあてることができるでしょう。

コンサルティング企業、ザ・エンビジョナーズの創業者であり、英国マイクロソフトの元チーフ・エンビジョニング・オフィサー、つまり会社の将来の展望を描く地位にあったデイブ・コプリン氏は、次のように述べています。「高いスキルを要しない作業をアルゴリズムで自動化することによって、企業は運用コストを30%カットできる可能性があるでしょう。しかし、将来の職場の構図は、人間対機械ではなく、むしろ人間プラス機械であると捉えるべきです。今のところロボットは、チェスの名人に勝つことができても、モーツァルトのような作曲はできません。」

「ロボットの隆盛に伴い、人間の労働者の再教育が極めて重要になる」と語るのは、フューチャリストのマシュー・ケイン氏です。リサーチとアドバイザリのサービス企業であるガートナーの副社長でもある同氏は、次のように語っています。「誰もが、技術に対する洞察力を今より高めていく必要があります。AIが私たちの活動のあらゆる場面に浸透してくるにつれ、職務内容も変わり続けるためです。」

未来の労働者

未来のビジネスは、私たちにさまざまな自由をもたらします。それは、決して一通りではありません。オンラインオークションサービスであるイーベイのバイヤーエクスペリエンス担当副社長、ブラッドフォード・シェルハンマー氏は、次のように述べています。「特にテクノロジー業界では、仕事において自分を偽らなくても済むようになることが、ビジネスの未来だと思います。私が社会人になったばかりの頃は、仕事中に誰もが別人のように振る舞っていました。セクシュアリティであれ、自分のくだらない一面であれ、プライベートに関わる物事は同僚から隠していたものです。ありのままの姿ではいないのが普通という文化でした。今ではみな、仕事中に自分のことを隠さなくなってきていると思います。人間として偽りがなく、正直でいられるということです。」

さらに、多様性に対する適切なアプローチは、如才ない企業にとって、ただ生き残るための方策ではなく、大きく成功するための鍵になるとシェルハンマー氏は確信しています。「セクシュアリティであれ、ジェンダーであれ、人種であれ、多様性の向上は、企業が多彩なバックグラウンドを持つ顧客とより適切に関わりを持つ上で有益でしょう」というのが同氏の主張です。

通勤の終焉?

この他、劇的な変化をもたらす可能性のあるテクノロジーとしては、現実世界の上にデジタル画像を重ね合わせるARがあります。ARという表現手法を最もよく知らしめたのは、おそらく、すさまじい人気を誇るスマートフォンゲームのPokémon GOでしょう。しかし、ARはゲーム以外に、働き方を根本的に変える可能性も秘めています。たとえばゼネラルエレクトリックの技術者は、風力タービンを組み立てるため指示をデジタル映像化し、ARグラスで確認できるようにしています。これにより、技術者の生産性は34%向上しました

『破壊的テクノロジー』の著者であるポール・アームストロング氏は、次のように述べています。「ARはまさに本領を発揮しつつあるテクノロジーです。ARには、学習とリモートワークの促進に向けた膨大な可能性があるといえます。現実に通勤すべき職場の必要性はそれほど高くなくなり、オフィスの概念や、そこで行う仕事も変化を遂げることでしょう」

新しい働き方

「テクノロジーによって健康と幸福感が増進されるなら、生涯における就業期間を延ばせるかもしれない」と語るのは、ロンドン・ビジネス・スクールのマネジメント・プラクティス担当教授で、『ライフシフト―100年時代の人生戦略』の共著者でもあるリンダ・グラットン氏です。

「フルタイムの教育を受けたのちに仕事に就き、最終的にリタイアするという3段階の人生は、平均寿命が延びるにつれ時代遅れになっていきます次世代の70歳は、今の60歳に相当するのです。私たちは、継続的な学習と柔軟な労働を伴う、より多層的な人生へと移行することになるでしょう」とグラットン氏はいいます。実際、生命保険会社のプルデンシャルの調査によると、年金受給者の半数は退職年齢を過ぎても働く予定です。実際にも、一部の人は70歳を超えてなお働いていますが、これは多くの場合、経済的な事情も関係しています。

インペリアル・カレッジ・ロンドンにおけるイノベーション・アンド・アントレプレナーシップ・グループのリサーチフェローであるキャサリン・マリガン氏によると、未来のキャリアは、就業期間が長くなるだけでなく、そのスタイルも大きく変わる見込みです。同氏はこう述べています。「テクノロジーは、人間の能力を高めると同時に、働く場所の選択肢を拡げる可能性があります。配車サービスのUberや、フードデリバリーサービスのデリバルーにおけるフリーランス労働者のギグエコノミー、すなわち、インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方によって生み出された経済形態は、その一例です。」

マリガン氏は、これからの働き方がある意味で、働く人が自分の道具を持ち寄り請負作業を行う「ヴィクトリア時代の労働者」への回帰となることを予測しています。と同時に同氏は、このことが労働にもたらす可能性のある不安定さについても言及しました。それは、常に企業側の要求を受け入れなければ、即刻、職を失うというようなことです。

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労働のスマート化で労働日数を削減

もしも、現在のテクノロジーの進化が仕事の負担を軽減していないと感じたとしても、それは無理のないことといえるでしょう。たとえば、スマートフォンは「オフのない」労働文化を生み出すことに大いに貢献しました。今や多くの人が、夜間はもちろん、休日や週末にも仕事のEメールをチェックしています。おそらくはこういうことも関係して、英国では毎年、ストレスのために労働日数が約1,000万日分も失われているのです。

この点について、ツイッターでヨーロッパ、中東、アフリカ担当副社長を務め、『労働の喜び』という著書もあるブルース・デイズリー氏は、次のように述べました。「英国では労働時間の増大が起こっていますが、多くの人はこのことに不満を抱いています。先進的な企業は、家庭生活に影響を及ぼすような労働のあり方に異を唱えるでしょう。」

すでにその動きが見られるスウェーデンでは、1日6時間労働の実験が行われました。また、プロフェッショナル・サービス企業のKPMGや、コンサルティング企業のデロイトなどが週4日労働を模索しているという報告もあります。

そこから生まれるメリットは、多岐にわたるでしょう。医学雑誌ランセットで発表された調査によると、長時間労働には脳卒中と心血管疾患のリスクを高める可能性があります。そして別の調査では、長時間労働は、うつ状態低い生産性、従業員のモチベーションに対する悪影響、欠勤、離職と関連付けられているのです。

前述のイーベイ上で数百万もの人々がサイドビジネスを始め、趣味以上のものを見つけたり、キャリアを開拓したりしているのも、テクノロジーを利用して働き方や人生の過ごし方を変えようとする兆候の現れなのかもしれません。

この記事はThe Guardian向けにセブ・マレーが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。