AIとIoT 、先端テクノロジーをどう活用するべきか

中山に続いて、富士通AIサービス事業本部の東圭三が登壇し、富士通のAIやデジタルアニーラにおける具体的な取り組みを紹介しました。

デジタルトランスフォーメーションを支える富士通のAI技術

富士通株式会社
AIサービス事業本部 本部長
東 圭三

私は「Zinrai(ジンライ)」「デジタルアニーラ」という富士通にとっては最先端領域に属する事業を担当しています。Zinraiのコンセプトは、ヒューマンセントリック。つまり「人間を中心としたAI」です。また、継続的に成長するAIを標榜しています。

Zinraiでは多種多様なデータに対応できるAI技術として、最先端の技術である「ディープラーニング」を活用し、「メディアデータ」「自然言語」「数値データ」の3つのカテゴリで構成されています。

特に富士通研究所が開発した「TDA(トポロジカルデータ解析)」や「Deep Tensor®(ディープテンソル)」「ナレッジグラフ」などの技術を用いて、より高度な解析を実現しています。その一方で、AIの推定結果が得られた理由を人間が検証することが困難なため、AIを使った専門家の判断に関して説明責任が問われる分野への適用に課題がありました。そうしたある種、ブラックボックス化してしまった技術に対して、富士通では「説明可能なAI」を実現しています。

富士通では多種多様なデータに対応できるAI技術を備えている

もう一つのAI技術であるデジタルアニーラは、量子現象に着想を得て開発したデジタル回路によって「組合せ最適化問題」を高速に解く新アーキテクチャです。

デジタルアニーラでは、従来解けなかった社会的な課題の解決を支援しています。主に「化学・創薬」「医療(治療計画)」「交通(渋滞回避)」「金融(投資ポートフォリオ)」「製造流通」の5分野での支援を想定しています。

ここからは、最新のAIを活用した事例を紹介していきます。従来はエキスパートが時間をかけてやっていた手間のかかる作業を瞬間的に処理できるようになっています。

  • 川崎地質様
    道路陥没を防ぐ路面下空洞探査に活用しています。従来は地中レーダー装置を使ってエキスパートが地中の空洞を判別していました。ディープラーニング技術を使うことで、探査装置から収集した膨大なレーダー画像から地中の空洞を判別し、解析時間を10分の1まで短縮することができました。現在は精度向上を図り、より高精度に空洞を見つけることができています。
  • Siemens Gamasa Renewble Energy(スペイン)様
    風力発電用の羽根の品質検査にAIソリューションを活用しています。従来は人手で6時間かかっていた品質検査が約1時間まで短縮でき、100%不良検知率を達成しています。
  • 島津製作所様
    共同開発したAI技術を質量分析装置に適用しています。手作業が多かったピークピッキングを自動化し、熟練作業者と比べても遜色ないレベルで使える可能性が示されています。

次に紹介するのが、複数のAI技術を多段につなげて大きなソリューションを実現した「コールセンターのオペレーション業務でのAI活用」です。音声認識による問い合わせ内容のテキスト化や応答内容の要約までを自動化しています。オペレータの受電から回答、後処理までの作業を大幅に短縮しています。

続いて、デジタルアニーラの活用事例を紹介します。

  • 欧州の自動車製造会社様
    生産計画の現場で仕事(ジョブ)を機械に効率的に割り振ることで完了時刻や納期遅れ等の最小化を目的としたスケジューリング問題について、デジタルアニーラを活用して生産工程の最適化を図っています。
  • National Westminster Bank(英国)様
    資産ポートフォリオの組み合わせ最適化問題を既存のコンピュータの約300倍のスピードで高速化しています。

富士通は2018年12月に第2世代のデジタルアニーラを提供開始しました。従来比で処理速度が100倍となり、より大きな組み合わせ最適化問題が解決できます。2019年度以降は、100万ビット規模の問題を解けるように大規模並列処理を可能にするように拡張する計画です。

また、AIビジネスにおけるグローバル展開の戦略策定とその実行を担う新会社「FUJITSU Intelligence Technology」をカナダのバンクーバーに設立しました。今後は同社を拠点としてグローバルにAI・デジタルアニーラソリューションを提供していく予定です。

IoTの最新事例と注目テクノロジーを紹介

東に続き、富士通 ネットワークサービス事業本部の須賀高明が登壇。富士通のIoTにおける具体的な取り組みを紹介しました。

富士通株式会社
ネットワークサービス事業本部 本部長
須賀 高明

富士通では2014年、IoTの専任組織を創設しました。当時と比べると、現在のIoTは目的から手段に変わってきています。社内でも製造や流通など業種ごとにIoTのソリューションを提供する部隊を立ち上げています。

経済産業省「2018年版ものづくり白書」によると、製造業において「データの収集・利活用にかかる戦略・計画を主導する部門」は、企業規模を問わず経営者や経営戦略部門の参加が増加し、IT部門が本格的に参画するなど実用フェーズに入っていることが示されています。

富士通のIoT有償受注案件数も2017年と比べて1.5倍に増加しています。お客様とのPoC(実証実験)を経て、実用フェーズに入っていることが分かります。

現在、富士通はものづくり分野では「COLMINA(コルミナ)」、流通分野では「SMAVIA(スマーヴィア)」というように業種向けIoTソリューションを提供しています。ここでの重要なポイントは2つあります。1つが「既存のシステムのデータとIoTによって得られた新しいデータをどう組み合わせるか、どう活用できるか」という点です。もう1つが「システムとしての可用性や性能、セキュリティなどの非機能要件の担保」です。

IoTに関するPoCに取り組む中で、PoCでは分からない課題も出てきています。たとえば、連携するデバイスやシステムが増えることで大量のデータをどう処理するか、連携先が増えたことでセキュリティ対策をどうするのかといった問題が顕在化しています。これらは実用化するためには避けては通れない課題だと言えます。富士通では「大規模リアルタイム処理」「エッジコンピューティング」の2つの技術でその解決を目指しています。

大規模リアルタイム処理とエッジコンピューティングでIoT活用における課題を解決する

大規模リアルタイム処理では、富士通研究所が発表した「Dracena(ドラセナ)」という技術を活用します。Dracenaは、大量のIoTデータ処理を停止することなく処理内容の追加や変更を実行できるストリームデータ処理アーキテクチャです。

全てのデータをクラウドに集めるのは大変です。そこでエッジコンピューティングが役に立ちます。セキュリティの観点からも重要な情報は現場で、分析に必要なデータだけクラウドに使い分けるハイブリッド型の組み合わせも可能です。

富士通では分散されたエッジデータの効率的な再利用を可能にする「DRC(ダイナミックリソースコントローラ)」技術を開発しています。センサーから収集された大量のデータの処理を、最も効率的に行えるよう自動的にクラウドとエッジコンピュータに振り分けることが可能です。

このように既存システムとIoTとの連携、IoTにおける大規模な処理やセキュリティの要望などに応えるためには様々な技術が必要となります。富士通では、それに応えるソリューションを多く取り揃えています。

これからも富士通は、国内に約400社ある富士通グループ全体で一丸となり、全国のお客様のデジタル革新をサポートしていきます。

登壇者
  • 富士通株式会社
    常務理事
    グローバルマーケティング部門
    首席エバンジェリスト
    中山 五輪男
  • 富士通株式会社
    AIサービス事業本部
    本部長
    東 圭三
  • 富士通株式会社
    ネットワークサービス事業本部
    本部長
    須賀 高明