世界最古級のコンピュータを動かし続けるCEの挑戦(後編)

【未来を創るチカラ Vol.11】未来技術遺産に登録されたFACOM128Bの稼働を支える、堀 信之・濱田 忠男

(インタビュー前編からの続き)
私たちの暮らしを支えている社会インフラは、テクノロジーの発展とともに進化し、なくてはならないものになりました。その一方でシステムにトラブルが発生すると生活の機能が停止しかねません。その危険性を予知して防ぎ、迅速に対応する。システムの守り人として、CEは今大きな変化の中にいます。

「動いて当たり前」のシステムを止めない

「コンピュータは進化するにつれて、稼働率を上げるために保守性も考えてメンテナンスしやすいように変わってきました。かつては"直す"ことに一所懸命でしたが、今では "動いて当たり前"。世の中に対する重要度も高くなりました。

肝心なのはお客様が使っている"システムを止めない"ということ。CEの仕事は、どうやったらシステムが止まらないようにするか提案し、予防保守をして"動くことを保障する"ということに意識が変わってきています。
最近の装置には自動通報機能が組み込まれていて、システムを監視することで、障害の予兆が発生したら自動的に通報してきて、壊れる前に予防保守が可能になっています。予兆がなく突然壊れるケースもありますが、自動通報されるため、お客様から連絡がきたときには状況が分かっていて早く直すことが可能になっています。
重要な装置は二重化してバックアップを持ち、片方が万が一壊れても自動的に切り替わるようになっています。壊れた方を切り離した上で、CEはお客様のところに駆けつけてとにかく早く直す。装置がどのように変わろうと、その精神はずっと変わりません。」

オープン系システムに変わった激動期にはイギリスに駐在し、異文化の中で仕事の幅を広げてきた。

保守・整備の複雑さが変化している

「1990年代にUNIXやWindowsマシンがでてきて、インターネットが急速に広がってネットワーク中心のシステムに変化してきました。最近では、OSやストレージ、ネットワーク機器を中心に、複数のメーカの機器やソフトを組み合わせてシステムが動くようになってきています。
どうしたらシステムが止まらないようにするかということを設計するのに、富士通一社の製品ノウハウだけではなく、幅広い知識と技術が必要になっています。
このようなネットワーク中心のシステムでは、たとえばどこからか変なものが接続されてシステム全体が動かなくなることも起きます。我々CEにはどこに原因があるのか、ネットワークを辿って見つけることが必要になってきました。
またセキュリティが厳しくなってきたので、ウィルス対策やファイヤーウォール、暗号化などのセキュリティ技術を組み合わせて、システムが安全に稼働するよう提案することも求められています。このようにCEに求められる技術は従来のハード保守だけでなく、幅広い分野へと大きく変わってきています。」

現場を一人にするな!組織で現場をバックアップ

「一人の持っている技術力は昔から比べれば随分高くなってきているのですが、その中でもミスというものは発生してくるものです。そのミスをミスにしないということを、組織的にはすごく考えなければいけないですね。

富士通のCEは、お客様のところに行くCEと、バックに製品のスペシャリストたちを準備して、両者の間で会話しながら解決できるようにしています。複合的な問題の場合は、皆を集めてどこが悪いかを相談する。現場は現場でお客様とやりとりしながら、組織で対応できるようにします。現場に行くのはCE一人かもしれないけれど、現場を一人にしない。周りのいろいろな人のバックアップを手厚くして、品質の高い作業をするということが永遠の課題だと思います。」

調べるものがマシンからネットワークに変わっても、直った時お客様から喜んでいただける喜びは変わらない。

お客様の一番近くにいるCEが、フィードバックしていく

濱田「お客様のところへ足を運ぶ機会が多いCEは、お客様とは情報を共有しておくことが大事だと思います。リスクについても会社側が一方的に背負えばよいというものではなく、お客様とともに考えながら保守していくことも大事だと感じています。

CEはお客様との距離が一番近いエンジニアだと思います。システムや製品を運用レベルで見ることも考えることもできます。それぞれのお客様に、こうした方がいいのではないですか?といった提案や、こうありたいというお客様のお気持ちを一緒に考えていったりすると、そこから新しいビジネスも生まれます。重度なトラブルや問題を解決したという時はお客様と一緒に喜びを感じますね。」

「現場にいる人は皆、そういう喜びがありますね。」

かつてはお客様から夜中でも電話がかかってきた。コールセンターができて個人の負担は軽減された。

濱田「トラブルは起きる前に、定期点検で危ないところを見つけて対応するというのがベストですね。それでも起きてしまったトラブルは対応状況や復旧時間などを把握し分析しています。」

「可用性というのは、設計段階で決まります。信頼性の高い設計のもとで我々は保守をする。緊急度は変わりませんが、設計が良ければ保守は少し楽になります。ですから過去のCEが得た情報をフィードバックして、設計になるべく反映するようにしたり、お客様にもこういう風にしたほうがいいですよとお伝えしたりしています。」

最新リモート技術で最古級のFACOM128Bを動かしたい

濱田「リレー式計算機FACOM128Bについて話せば、これからも動かし続ける事は勿論ですが、でもどう見せていくか、活かせるかというのが次の課題かなと思います。今はFACOM128Bが設置されている沼津まで足を運ばないと動いている様子を見ることができませんが、ネットワークが普及した今日、自宅のパソコンから60年前に造られたリレー式計算機を動かせるようになったら面白いだろうなあと思っています。」

「リモート保守技術というのはだいぶ進歩していて、リモートでできることと現場にいかないといけないこととがありますが、部品を送ればお客様でも換えられるようにするなど、CEの技術は継承するだけでなく、工夫していかないといけないですね。」

ウルトラマンの科学特捜隊司令室を彷彿とするFACOM128Bのコントロールパネル。懐かしいような近未来感がある。

変わってはいけない。変わらなくてはお客様を守れない

「ICTの世の中なので、形は変わっていくでしょうがお客様先には端末があり、セキュリティのための機器が残り、クラウド化が進んでもセンターやクラウドの中にはマシンが残る。ハードを直すという業務は絶対になくなりませんが、それをどうやって効率よく行っていくか、技術を磨くかが課題です。専門のサポート部隊と現場の人たちがお互いに技術を継承しながら、いろいろな機械に対応していかなければいけません。」

濱田「CE、カスタマ・エンジニアというネーミングはずっと変えないでいてほしいなと思いますね。システムが複雑化し保守も効率化が進みCEの保守技術や現場対応も変わってきていますが、やっぱりお客様(カスタマ)のためにCEがいて、お客様の立場に立って考え行動するエンジニアであってほしいと思います。お客様がいらっしゃるところに何かがある。イノベーションもあると思います。」

「その気持ちを持ちながら、業務の中身ではハードだけではなくOSやネットワークやセキュリティなどソフト寄りの技術を身につければ、お客様のためにできることが広がります。これからは、お客様が困った時にシステム全体を理解して対応出来る技術者に変わっていかなくてはお客様を守れないと思います。」

FACOM128Bのプリンターの不調を直す濱田。原因を見つけ出すCEの目になる。

「今の若い人たちは、スマホやPCを子どもの頃から使っているので、ネットワークの知識などはだんだん頭の硬くなる我々おじさんたちよりよく知っているんじゃないかと(笑)期待したいです。逆に使うことやプログラムをパッと書くのは上手だけれど、機械がどうやってソフトにコントロールされて動くかという理論は、まだまだ我々は過去の経験があるので強いかもしれません(笑)。」

濱田「まず興味を持ってほしいですね。何でもそうだと思いますけれど、興味を持つと吸収していきますから。」

株式会社 富士通エフサス 代表取締役副社長
堀 信之
1956年 佐賀県生まれ 学生時代は剣道部。
1978年4月 富士通入社 東京のCE部門に配属、東京地区の大型Mシリーズの保守を担当。
1989年CE部門の子会社化にともない富士通エフサスに移籍、保守だけでなくのインフラサービスを担当。
2011年から製品のサポートを担当する部門の本部長となり、富士通製品およびOEMのハード、ソフトのサポート担当。
2015年から現職でコーポレート全般を担当。
入社以来CEが長かったので富士通製品保守のノウハウを生かして、OEM製品のハードやソフトのサポートを担当。ベンダーとのチャネルを生かして、インフラのサービスビジネスを拡大してきました。最近はコーポレート全般をみるようになり、新たなチャレンジをしています。
富士通特機システム株式会社
ICTサポート事業部システムサポート部
部長
濱田 忠男
1969年 長崎県生まれ。
1988年 富士通特機システム(株)に入社後間も無く、海上自衛隊哨戒機の搭載コンピュータ等を整備し保守技術を磨く。その後、電算機CEとして従事。
現在は、防衛に専属するセンターCE・コールセンターの長。国防を担うICTシステムを富士通CEグループ全体で、24時間365日安心安全をサポート。