AIとマシンラーニングにおける2018年のトップトレンド

AI研究の第一人者であるジョン・マッカーシー氏が、1955年のダートマス会議で「Artificial Intelligence」という用語を生み出してから、私たちは大きな発展を遂げてきました。63年経った今、AIは医療やフィンテックなど、さまざまな業界をあらゆる側面から変革しつつあります。人間の知性の再現に向けた探究が続く中で、ビッグデータとマシンラーニング分野の研究も大きく進歩し、AIはメインストリームへと移行することができました。本稿では、AIとマシンラーニングに関する2018年トップトレンドをご紹介します。

1.医療

アクセンチュアによると、米国のAI関連医療市場は2021年までに66億ドル規模に達し、その年平均成長率を意味するCAGRの数字も40%に上ると見られています。

医療技術におけるAI利用の成長の促進剤として大きな役割を果たしたのは、医学分野のイメージングや診断を手掛ける企業です。たとえば、放射線科医向けのクラウドベースのAIアシスタントを提供するアーテリーズは、2018年の2月に、FDAことアメリカ食品医薬品局から、がん専用のAIスイートを使って肺腫瘍や肝腫瘍の画像を分析するための認可を受けました。

個人向けにカスタマイズされた医療や、細胞を遺伝子レベルで分析して適切な薬品のみを投与するプレシジョンメディシンも、AIのおかげで大きく前進した分野です。8月には、シンガポール大学の研究者チームが、血液がんの一種である骨髄腫に向けた薬物の併用療法で利用すべき薬品をAIによって特定、最適化しました。

2.Fintech(フィンテック)

資産管理や資金調達から、ローン、モバイル決済まで、すでにフィンテックは、破壊的な改革をもたらす技術であることが証明されています。そして、それらの分野におけるビジネスの競争力を次のレベルへと引き上げるためにAIが利用されているのです。

その中には、ユーザーが、好みのモバイルデバイスを利用して銀行に小切手を預けられるようにするための画像認識技術なども含まれますが、それだけにとどまりません。昨年10月には初のAIを利用したETF、つまり上場投資信託が発売されたほか、金融分野の情報分析の専門企業であるエルセンは、AIを活用して大手金融機関によるビッグデータの処理を支援しています。また、マシンラーニング利用のものを含む取引アルゴリズムのテストや共有を目指して、定量的な分析手法を用いる株式トレーダーたちが集うコミュニティの「クワントピアン」も台頭してきました。

3.エネルギー

石油・ガスの巨大企業から再生可能な環境技術まで、エネルギー業界は大量のデータを生み出しています。AIは、その大規模なデータセットを処理して、エネルギー生産者と消費者の双方が電力網をより有効に利用できるようにするための、実用的な洞察を引き出すうえでも最適なテクノロジーです。

たとえば、エネルギー貯蔵の最適化ツールである「アテナ」は、800箇所を超えるエネルギー貯蔵システムから得られる、1分間に400メガバイトにもなるエネルギーデータを処理し、エネルギー利用のタイミングを最適化します。これにより、顧客は年間にして800万ドルもの費用を節約することが可能となりました。

また、家庭ではスマートサーモスタットデバイスの「ネスト」が、住人の暮らしの習慣に合わせてエネルギー消費を低減してくれます。さらに海外にも目を移せば、英国のナショナル・グリッドと、グーグル傘下のディープマインドが、英国の電力網の合理化に向けた提携について協議中です。

4.企業

調査会社テクナビオの最新の市場調査レポートによると、企業向けAIの世界市場は、2018年から2022年にかけて45%の年平均成長率を記録すると予測されています。テクナビオによれば、この成長の大半が、顧客サービス用チャットボットを利用したビジネスの台頭によるものと考えているとのことです。

ビッグデータの処理に対応するマシンラーニングソリューションも、このような大幅な成長の理由の1つといえます。アマゾン、IBM、インテル、マイクロソフト、グーグル系のアルファベットなどの巨大テクノロジー企業がその開発の先頭に立って、マシンラーニングの一般化に貢献する基本的なAIフレームワークとツールを数多く提供し、サポートしてきました。グーグルにはディープマインド、IBMにはワトソンと呼ばれるAIソリューションがある一方、アマゾンウェブサービスはビッグデータの分散処理フレームワークであるアパッチ・スパークを取り入れて、企業が大量のデータを処理できるように支援しています。

5.小売

小売業は、引き続きAI分野においてイノベーションを生み出す土壌となっています。前述のとおり、小売業者もチャットボットを使って顧客サービスの経費を削減しているほか、予測分析によって製品価格の最適化を図ったり、宝の山ともいえるビッグデータを活かして顧客の詳細なプロフィールを作成したりする取り組みを行ってきました。

小売分野におけるAIの著しい普及は、すでにこうした事例を広く知らしめていますが、さらに直近のイノベーションの影響に目を向けると、テクノロジーの成熟に伴って企業の創造力も高まっていることが理解できます。

たとえば、チャットボットについて耳にしたことはあっても、実店舗型の小売業で客足を70%も増加させたロボットについて知っている方は、まだ少ないかもしれません。また、顔認識技術を使って、顧客が店内に足を踏み入れるとすぐにその顧客の好みを店舗スタッフに伝えるAIアシスタントの「カイロス」についても同様ではないでしょうか。

さらに、巨大な多国籍企業へと成長した日本のソフトバンクが、ロボット利用のピザ宅配サービス「ズーメ」に対する最大7億5,000万ドルの投資について協議中であることを考えれば、誰もが未来に生きていることを実感するはずです。

6.ソフトウェア開発

コーディング担当者は常に、プログラマーの生産性を向上させるためにより高度な抽象化を目指しています。ここでいう抽象化とは、個別の案件や課題ごとに異なるプログラムを書かずに済むように、処理の本質となる要素を抽出して汎用化することです。最新のソフトウェア開発ツールやライブラリ、フレームワークに関して、いかに開発プロセスの効率化や簡素化に役立つかが大々的に宣伝されるのも、それらがプログラムコードの抽象化に貢献するからにほかなりません。

いつか到達する可能性のある究極の抽象化とは、プログラムによって自動的にコードが作成されるようになることです。しかしそこまでではなくとも、AIを利用して開発者の作業を軽減できるツールは、すでに数多く存在しています。

たとえば、グーグルのバグ予測ツールでは、欠陥のあるコードを発見するためにマシンラーニングアルゴリズムと統計分析が長い間使われてきました。また、ETHチューリッヒが開発したディープコードは、ポピュラーな英文校正ツールであるグラマリーのプログラマ向けバージョンともいえる存在で、プログラミング自動化への歩みをさらに一歩前進させるものです。このツールは、コードのバージョンを管理するウェブサービスのギットハブのデータベースを、公開か非公開かを問わず精査して問題を発見し、改善策を提案できる能力を持っています。

デジタルアシスタントから自動運転車、そしてさらにその先へ

2018年の今、AIはかつてないほどSFの世界に近づいているといえるでしょう。これまでに紹介したトップトレンドほどではないとしても、以下のようなニュースやレポートは十分に刺激的です。

  • アマゾンのAlexa、マイクロソフトのCortana、アップルのSiriのようなデジタルアシスタント:すでに世界中の何百万もの家庭や企業で使われています。
  • グーグルのデュプレックス:「I/O 2018」で大々的に発表され、自然言語処理の最前線を示す存在としてデモが行われました。このデジタルアシスタントは、人間そっくりの声を使い、「うーん」や「えーと」といった口調で考える素ぶりまで見せながら、簡単に美容院の予約を取ることができたのです。
  • 自律運転車:もはや、この分野で先行していたグーグルやウェイモだけのものではありません。GMやメルセデスベンツの親会社であるダイムラー、BMW、フォードをはじめ、さまざまな自動車メーカーがこの技術の開発を積極的に進めています。
  • 製造自動化:この分野も、AIの発展による恩恵を受けています。ファナックロボティクスのLVCことラーニング・バイブレーション・コントロールというソフトウェアを使用すると、組み立てラインの特定のタスクに対して、ロボットのディープラーニングを加速させることが可能です。

本稿では、医療、フィンテック、エネルギー、企業、小売、ソフトウェア開発という6つの主要な業界に関して、AIがいかに変革をもたらしているかに焦点を当てました。しかし、それでもAIが世界を変革するさまざまな手法の表面をかすった程度にすぎないのです。

この記事は元々アップワークに掲載されたものです。

この記事はBusiness2Community向けにヨシタカ・シオツが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。