ARグラス:ウェアラブルテクノロジーの次なる境地とは

近年、ARはますます注目を集める存在です。広告小売もちろんのこと、教育、さらにはゲーム分野に至るまで、あらゆる業界で人々をとりこにしています。たとえばアップルはARKitフレームワークを発表し、AR関連特許を次々と取得しており、このことからも同社のARに関する一層のコミットメントを感じ取れるでしょう。同様に、アンドロイドがARCore 1.0をリリースしたほか、アマゾンもARVRのアプリケーション開発を支援する、独自のAWSスメリアンサービスの提供を開始しました。

しかし、いくらテクノロジ業界のリーダーたちが、こぞって「ARはいつか生活必需品になる」と予言しても、実際にはまだメインストリームの仲間入りすら果たしていません。前提となるハードウェアや処理能力などに限界があることから、現時点ではまだ形状と機能をバランスよく両立させることができず、それこそがARの普及にブレーキをかけています。また、ARが単なる物珍しい技術からより生活に密着した実用品となるためには、それに基づくアプリケーションがユーザーに実質的な価値を提供する必要があるでしょう。

では、どうすればメインストリームの商品となるに足る意義を、ARに持たせることができるでしょうか? その足掛かりとして最も自然に感じられるのは、ウェアラブルデバイスです。まだ初期段階にあるとはいえ、ARを、特にメガネやヘッドセット型のパーソナルデバイスに組み込もうとするビジネス的なシナリオは動き出しています。だとしても、スマートフォンを手に取る代わりに選びたくなるほどの使い道が、これらの製品にあるかどうかが重要です。

ではここで、現在考えられるスマートグラスやVRヘッドセットの姿を通して、ARをサポートしたウェアラブルデバイスの未来をのぞいてみましょう。

ARとは?VRとの違いなど簡単におさらい

ARVR違いは何でしょうか? VRについては、すでにおなじみという方も多いかもしれません。それはコンピュータグラフィックスとセンサーを駆使して人工的に生み出される完全に没入型の環境で、視覚と聴覚に働き変えて、仮想的な三次元の世界をまるで現実のように疑似体験することができます。ただし、ユーザーがVRを存分に楽しむには、視野全体をカバーするヘッドセットを装着する必要があり、すばらしい娯楽には違いないとしても、日常的に使うほどの実用性はありません。

一方でARは、周囲の環境や物体、人々にデジタル情報を重ね合わせることで、現実を「拡張」するものです。その意味で、ARは現実とVRの中間的存在ともいえ、共同作業や、位置情報に基づくマーケティング、ナビゲーション、あるいは、家具が室内でどのように見えるかの視覚的なシミュレーションなど、実際に役立てられる可能性がより高いといえます。このために必要なのは、現実の風景に情報を重ねて表示できるグラスやタブレット、スマートフォンなどを利用したビジュアルインターフェースです。こうしたデバイスやアプリが整備されれば、ARの用途は大きく広がります。

業務用途のARは、製造、科学、小売の分野ではすでに広く利用されつつありますが、より日常的でプライベートな利用分野は、より参入が難しい市場といえそうです。

ARを暮らしに取り入れるためのテクノロジー

AR向けのデバイスは、VRヘッドセットよりも小型で実用的なものにできるとはいえ、きちんと機能させるにはそれなりのハードウェアとソフトウェアが必要になり、以下の要件を満たせなければなりません。

  • 十分に長いバッテリー駆動時間
  • 大きなメモリ容量
  • 高速な処理能力
  • 物体認識ソフトウェア
  • ネットワーク接続
  • 周囲環境を検知し、高解像度の画像や映像を撮影するためのカメラ
  • 没入感のある体験を提供できる十分な大きさの高解像度ディスプレイ
  • マイク
  • スピーカー
  • GPS、ジャイロスコープ、磁力計、加速度計などの内蔵センサー

当然のことながら、日常生活で使えるように、たとえばメガネのようなレベルにまでAR対応デバイスを小型化しようとすれば、人間工学、着け心地、見栄えの点で、直面するデザイン上の課題が増えてしまいます。その他、ウェアラブルデバイスとしての没入性、ユーザーの動きの自由度、処理能力などの点を考慮することも必要です。機能面を必要以上に犠牲にしない代わりに、嵩張る製品も出てくるでしょう。異なるアプローチとしては、マジックリープのARグラスシステムであるライトウェアのような選択肢もあります。この装置は、ベルトに装着したボックスに接続して、情報処理やバッテリーをそちらに任せることで、性能を高めながらグラス部分の重量やサイズ感を抑えています。

いずれにせよ、娯楽用に家の中や業務のために製造現場で装着するヘッドセットならばまだしも、消費者がスマートフォンに代わるデバイスとして顔に装着してくれるようにするためには、着け心地と見栄えが重視されるのはいうまでもありません!

スマートグラスとARグラスの違い

さて、いわゆるスマートグラスとARグラスとでは、機能面で多くの共通点があるものの、根本的には別物です。両者をひとまとめに扱うことは、いわば「コンピュータ」と「ゲーム機」を同じ意味で使うようなものといえます。どちらも電子機器であり、共通の機能も備えていますが、最終的な主用途が違う製品です。

スマートグラスの特徴

  • AR機能を備えていること「も」ある
  • 透過型のディスプレイを採用することによって、ユーザーは周囲の世界をそのまま見ることができる
  • ディスプレイ上に役立つ情報を投影するが、拡張現実である必要はない
  • ユーザーは、通知やテキスト、心拍数、電話の着信、道順などをハンズフリーで確認できる
  • 製品/プロトタイプ例:グーグルグラス、インテル・バウント、ビュジックス・ブレードAR、ガーミン・バリアビジョン、ソロス・アイウェア

スマートグラスの用途例:旅行者に近くの名所を、道順と距離の情報を添えて紹介する。サイクリストに対して、トレーニングを支援するための情報を表示する。

ARグラスの特徴

  • 透過型のディスプレイを採用する必要はないが、多用途性を考えて透過型になることが多い
  • ユーザーが見ているアイテムや風景が、情報のオーバーレイによって視覚的に変化する
  • 実在するかのように情報が表示される
  • 製品/プロトタイプ例:グーグル・ビュジックス、マイクロソフト・ホロレンズ、エプソン・モベリオ BT-200、同 BT-300FPV ドローン・エディション、メタ2、キャストAR ヘッドセット

ARグラスの用途例:外国で現地のテキストをリアルタイムに翻訳し、看板やメニューの文字を置き換えたように表示する。ドローンの操縦者に、機体の視点からの没入感あるビューを提供する。整備士のために車のエンジンの各部に重ねて、パーツの名称などを表示する。ユーザーが誰かに出会ったときに、顔認識技術を用いてその人物の名前を特定し、提示する。

現在市販されている最高クラスのスマートグラスの中には、軽量かつ人間工学的に優れていながら、洗練された外観を持つ製品もあります。ARグラスも同様の状況ですが、現実の風景を変化させて表示できるほどの処理能力が求められ、没入感のある視界も提供しなくてはならないため、より強力なハードウェアと視野角の広い仮想スクリーンが必要になります。

こうした要素をすべて満たすことは難しいチャレンジですが、その実現に向けて様々な要素技術が登場しつつあり、これからも進化し続けるこのトレンドを引き続き注視していくことをお薦めします。

この記事は元々アップワークに掲載されたものです。

この記事はBusiness2Communityのキャリー・ウォードハウスが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。