過熱するフィンテック: 誇大広告?それとも現実?6つの主要セクターを分析

筆者はフィンテック分野の投資の専門家ですが、再び、彼が間違っていたことが証明されてしまったようです。

筆者は、8年連続で、フィンテックへの投資が停滞期に入ると予測してきました。ところが、2018年になっても、その兆しは見られません。事実、2018年第1四半期のフィンテック分野への投資額は54億ドルを超え、その勢いはとどまる気配がないのです。参考までに、2014年の同分野への投資額は通年で40億ドルをわずかに下回っていたので、上記の四半期の勢いが年末まで続いた場合、この4年間で実に「5倍」も成長したことになります。さらに、調査会社のベンチャー・スキャナーのデータによると、2001年の投資額は3億ドル程度に過ぎませんでした。

とはいえ、このフィンテックと呼ばれる現象は、表面的なものともいえます。フィンテックビジネスに分類されている企業の中には、フィンテック事業を行っていない会社もそれなりに含まれているからです。実のところ、彼らが行っているのは、たとえば決済事業や融資事業だったり、投資関連技術の開発だったり、銀行や保険会社、不動産会社への販売事業だったりします。

ベンチャーキャピタルが自らのパートナーに対して何と説明しようと、あるいは、メディアがこの業界をどのように報道しようと、これらの事業とフィンテックの間には必ずしも深い相互関係はありません。ただし、お金があちこちに動いていることは確かです。つまり、全体として投資額が増えているは事実ですが、各サブセクターに目を向ければ、別の状況も見えてくるといえます。では、「本当は」何が起こっているのでしょうか? それを知るために、さらに分析してみましょう。

決済分野 : 過去の栄光

10年前、「フィンテック」といえば「決済」と同義でした。シリコンバレーで、ツイッターの共同創設者のジャック・ドーシー氏が、決済をスタイリッシュに見せようとしてスクエアというサービスを開始したことが始まりだからです。しかし、今では状況がまったく変わりました。決済関連ビジネスは、最近のフィンテックスタートアップの中で明らかに少数派となり、早期の資金調達額もここ数年落ち込んでいます。筆者の計算では、2012年に創設された決済企業の割合は約90%だったのに対し、2017年には10%を切るまでに減少しました。ビルトラストアビッドエクスチェンジなどの商用決済企業にはまだ多少の勢いがあり、実は筆者のチームもこれらの企業への投資を行っています。それでも昨今のトレンドからすると、今年はもとよりこの先も、決済専門のスタートアップ企業が多数誕生することはないでしょう。

では、あの勢いはどこへ行ったのでしょうか。答えは「暗号通貨」です。たとえば、今日、面会予定の暗号通貨ビジネスの創始者が、数年前には決済ビジネスの創始者だったとしても驚くにはあたりません。なぜなら、それら2つの事業領域は、同じビジネスのDNAを共有し、同種のエンジニアリング能力を必要とするだけでなく、最終市場の一部も重複しているからです。

・このセクションに関する参考情報

決済分野へのベンチャー投資: 2016年は16億ドル (ソース: CB Insights)
スタートアップ企業の勢い: ほとんどなく、すべて末期の段階

融資分野 : テクノロジーよりも金融寄りのフィンテック

昨今、融資セクターのビジネスは厳しい状況にあります。2017年の投資額はわずか40億ドルにとどまり、急速に減少しているからです。とりわけ、初期段階の投資額の縮小は顕著で、状況を難しくしている要因は、融資ビジネスが常に取引に関わり、商品としてコモディティ化している点にあります。その結果、投資コミュニティは、この分野のスタートアップの位置付けを、先端的なテクノロジー企業から単なる融資企業へと変更したほどです。その典型的な事例としては、レンディング・クラブとオンデックが挙げられるでしょう。一方では、融資分野の新興フィンテック企業のグリーンスカイが株式公開を成功させ、同じくファンディング・サークルも株式公開を控えていることから、これらの企業が、投資家の考えを変える可能性も残されています。

・このセクションに関する参考情報

融資分野へのベンチャー投資: 2017年は40億ドル (ソース: CB Insights)
スタートアップ企業の勢い: 急速に低下し、IPOの活性化待ち

資産管理/投資分野 : 銀行になるための競争

資産管理テクノロジー企業への投資額は、毎年着実にフィンテック投資の10%を占めてきました。これらの企業が、破壊的な改革をもたらす現実的な可能性を示しているとの根強い見方もあります。現時点でより興味深いトレンドの1つは、ソーファイやエイコーンズ、ウェルスフロントなどの大きな成長を遂げた資産管理会社や投資会社のすべてが、当座預金口座を追加するという同じ動きをとっているということであり、実は、エイコーンズには筆者のチームも投資しました。大まかにいって、それらの企業はどれも銀行的な存在になろうとしているように思えます。しかし、それは必ずしも認可銀行というわけではなく、むしろサードパーティや最新技術を利用して消費者向けの主要金融パートナーを目指しているようです。

この現象は非常に興味をそそり、「消費者は従来型の銀行を見捨てるのか?」、「社員が雇用主のところへ新しい口座振り込みの申請用紙を持ってきて、『給料の振込先を、銀行からフィンテック企業のベターメントかエイコーンズ、またはソーファイへ変更してください』というだろうか?」というような、この業界と社会にとって重要な疑問を投げかけています。これは今までなかったことです。そして、それが現実のものとなれば、フィンテックにとってまったく新しい時代が到来するでしょう。その結果、銀行は現状のフィンテック企業との協調段階の先に進むことになり、また新たに気をもむことになりそうです。また、仮にそれらフィンテック企業の銀行化が実現しなかったとしても、資産管理テクノロジー自体が駆逐されるということではありません。注目すべきは、これらの企業が同時に同じビジネス展開を考えているという点であり、そこに時代の必然があるのでは、ということなのです。

・このセクションに関する参考情報

資産管理/投資分野へのベンチャー投資: 2017 年は12億ドル (ソース: CB Insights)
スタートアップ企業の勢い: 着実かつ慎重

保険分野 : 急速な成長で目指すフルスタック化

保険を手掛けるスタートアップは、今、大きな転換点に立っています。オスカーやゾンアンといったフィンテック企業は、たった1年で資金をゼロから数十億ドルにまで増やしましたが、その過程で各社が決断したのは、複数の技術分野に精通する「フルスタック」ビジネスを目指すことでした。保険業務全般を手掛けるスタートアップのインシュアオンやゼネフィッツも、設立当初は単なる保険ブローカーや保険管理の総代理店だったわけですが、今や「スタートアップならば保険会社になるべき」という考え方がますます広がっています。確かに、それも一理あるでしょう。自分で保険という商品自体を管理できなければ、他の誰かに資本を操られてしまうからです。そこは、わかります。しかし、多くの保険会社の株主資本利益率は9%前後に過ぎず、ベンチャーキャピタルにとって投資する意味がありません。まったくないのです。

将来を見据えるならば、保険分野のフィンテック企業は、次の点を理解する必要があるでしょう。保険が本当の意味で変化を遂げることと、意匠を凝らしたアプリを持つブローカーを多く抱えることとは、まったく違います。後者では、多くの株主価値を生み出すことなどできないのです。

・このセクションに関する参考情報

保険分野へのベンチャー投資: 2017年は14億ドル (ソース: CB Insights)
スタートアップ企業の勢い : 十代のように厄介な時期

不動産分野 : 現在進行中の破壊的改革

不動産と暗号通貨の2分野は、きわめて大きな成長が見られる領域です。フィンテック業界で、評価額10億ドル以上の未上場スタートアップ企業を意味するユニコーン企業を10社リストアップしてみると、その中の、コンパス、オープンドア、ウィーワーク、エアビーアンドビー、ユーコミューンの5社のビジネスは、不動産会社そのものです。たとえばオープンドアは、真の「不動産」仲介業務を考案しました。販売を6%の手数料で仲介するのではなく、実際に不動産を購入して、別の買い手を探し、その差額で利益を出します。今のところ、ジロウが同様のビジネスを展開していると述べていますが、他にも多くの追従企業を生み出しました。数百年間変わらなかった、信じられないほど古くさいこの業界が、今や生まれ変わろうとしているのです。

・このセクションに関する参考情報

不動産分野へのベンチャー投資: 2017年は12億ドル (ソース: PitchBook)
スタートアップ企業の勢い : 先行企業の動きが速い

暗号通貨/ブロックチェーン分野 : 本気になるべき時

暗号通貨については何がいえるでしょうか? 筆者は、昨年のフィンテックCEOサミットで、ICOこと新規仮想通貨公開が違法とみなされる危険性について示唆しました。まだ刑務所行きになった人はいませんが、油断は禁物です。ICOの資金調達額は未だに実質を伴わず、3月に41億ドルの最大調達額を記録したほかは、1か月あたり15億ドル程度で推移しています。そして、この資金調達手法にはルールを守ったとしても違法になる可能性があるとする政府の主張も、ますます声高、かつ明瞭に聞こえてくるようになりました。

ICOを除くと、暗号通貨の領域としては3つの分野が考えられます。まず、暗号通貨投資エコシステム、次に、企業向けブロックチェーン、そして、分散アプリケーションです。

1つ目については、「暗号通貨は、株式、債券、マネーマーケット、代替投資と並ぶ投資対象資産なのか?」という点が重要ですが、筆者は暫定的に「イエス」と考えています。現在、暗号通貨の投資エコシステムはうまく成熟が進んでおり、また、ベイシスコンパウンドなど、いくつかの先駆的企業が市場構造の重要な要素を占めつつあるからです。これらの企業は筆者のチームの投資先でもあり、人々は、将来的に大規模な暗号通貨の取引を増やそうとしていると考えられます。

次に企業向けブロックチェーンについては、「これは実際に独立したビジネスか?」という点に着目すべきです。プレスリリースの数だけを見れば、この市場は繁栄していることになりますが、概念の実証実験的な意味合いを除いて収益に注目すると、今はまだそうでもありません。そのため、当初、筆者たちは先の疑問に対して暫定的に「ノー」と答えていましたが、最近では優れた起業家がこの問題に取り組むようになったことから、早晩、筆者たちが間違っていたと証明されることになるでしょう。

最後に、分散アプリケーションは大当たりです。まだ初期段階にあることは明白ですが、優れた人材が集まってきています。この分野では、「未来のエアビーアンドビーやウーバー、そしてアマゾン・ウェブ・サービスが、単純にトークンを利用したオープンソースプロトコルとなり、ファイルの保管、旅館の予約、旅行の予約、交通手段の管理のあり方を一変させるか否か?」という点が重要でしょう。正確なタイミングはわかりませんが、筆者はいつかその状態に到達することを確信しています。

・このセクションに関する参考情報

暗号通貨/ブロックチェーン分野へのベンチャー投資: 2017年は7億1,600万ドル (ソース: CB Insights)
スタートアップ企業の勢い : 西部開拓時代並みで、かつ東部、北部、南部も開拓中

特別トレンド情報 : 主流派と反対勢力が手を組むか?

筆者がフィンテック分野へ足を踏み入れた頃、この業界は主に銀行への技術販売を専門とするベンダーで構成されていました。しかし、投資を始めた筆者たちの多くはそれとは対立する立場を取り、フィンテックは現行の金融企業よりも優れた仕事をする起業家を生み出せると主張したものです。そして今、大手銀行は、仲間に引き入れるべきフィンテック分野の新規参入ベンダーについての知識を得ることに夢中になりつつあります。つまり、銀行がベンダーと提携して、その技術を活用することで、より現代的な企業に変貌しようとしているのです。

それらの銀行は現在、反体勢力の獲得にも乗り出しています。昨年の時点では筆者にも予測できませんでしたが、JPモルガン・チェースゴールドマン・サックス、キャピタル・ワン、BBVAがその途上にあり、各行とも「フィンテック企業の買収はタブーではない」ということにしたようです。これは、意味のあるプラスの変化といえ、この先どのような展開を見せるのか、状況を見守りたいと考えています。

筆者のマット・ハリスは、ベイン・キャピタル・ベンチャーズのマネージングディレクターです。フィンテック分野には2000年から携わっており、この分野でトップクラスの投資家の1人として評価され続けています。

この記事はFORTUNE向けにマット・ハリスが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。