共創でビジネスを変革 オープン・イノベーションの最前線

デジタル革新の成功要因と共創

チェスブロウ教授とフルスマン氏の特別講演に続いて登壇したのは、富士通のビジョン策定と発信を担当しているマーケティング戦略本部VP高重吉邦です。高重は、富士通が各国の経営層に対して行った調査の結果を踏まえながら、企業のデジタル革新を成功に導く要因と富士通の共創への取り組みについて語りました。

高重吉邦

今年2月、富士通は世界16カ国、1,500人の経営層を対象にデジタル革新の成功要因を探る意識調査を行いました。その分析結果を示しながら高重は、「デジタル革新ですでに成果を出している企業には共通した特徴がある」と指摘します。

その特徴とは「リーダーシップ」「人材」「俊敏性」「ビジネスとの融合」「エコシステム」「データからの価値創出」における優位性です。これらの要素を高重は企業の“デジタル・マッスル”と呼び、「デジタル革新の成功のためには、これまでとは違うこれらの筋肉を鍛えなければならないのです」と強調します。

この“デジタル・マッスル”をネット企業と非ネット企業で比較してみると、ネット企業の優位性が際立ちます。なかでもとくに大きく差が開いたのは、共創に関わる「エコシステム」でした。

この点を高重はさらに掘り下げます。「エコシステムのなかでそれぞれの企業が重視するパートナーを調べてみると、お互いにテクノロジー企業を最も重視するところは同じです。しかし、ネット企業が『ベンチャー企業』、『異業種の企業』、『政府・自治体』、『学術研究機関』、『コンソーシアム』と積極的に関わっているのに比べ、非ネット企業の大半は重視していないことがわかりました。一方で、デジタル革新に大きな成果を挙げている従来型の企業は、ネット企業と同様に積極的に関わっています。やはりデジタル革新で成功するには、どのようにエコシステムをつくるのかが非常に重要だと思います」。

ここで高重は、いま産業界に起こっている大きな構造変化に目を向けます。それは垂直統合型のバリューチェーンからデータを中心とする分散型のエコシステムへの変化ではないかと問いかけます。

例えば、銀行サービスはこれまで垂直統合型の銀行が提供してきていましたが、今、分散型のモデルへの変革が起こっています。すでに数えきれないフィンテック企業がイノベーションを提供する中で、基本的な銀行機能をクラウドサービスとして提供するプラットフォーム・バンクも出てきています。さらに、顧客インターフェースも、従来の銀行に加えてアマゾンやアリババのようなデジタル・プラットフォーマーがその選択肢の一つとなってきました。これら全てがアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)でつながる分散化されたAPIエコノミーになってきています。

こうした産業構造の変化のなかでは、チェスブロウ教授の言うエコシステムを活用したオープン・サービス・イノベーションの実践がこれからの企業にとって欠かせない取り組みであると高重は強調します。そして、「富士通自身がエコシステムを活用したヒューマンセントリックな価値の共創、オープン・サービス・イノベーションに取り組んでいて、AIを活用した診療判断の支援など様々な領域でチャレンジを行っている」と話します。これに引き続き、富士通が行っているエコシステムを育てていくイニシアティブとして、チェスブロウ教授から話のあったOIGや、学術研究機関やベンチャー企業との共創について説明を行いました。

最後に、高重はエコシステムによる共創を成功させる鍵となるものとして“信頼”を挙げました。

「共創やオープン・イノベーションをうまく進めていくためには、まず“信頼の基盤”を築くことが必要ではないでしょうか。シリコンバレーもまた究極的には人と人とのつながりで動いています。そこに信頼関係があるから迅速に課題を解決し、すばやくイノベーションを起こすことができるということでしょう」。
本イベントの後半では、高重を進行役に、チェスブロウ教授、フルスマン氏、そしてラウ・フーン・チュイン教授を壇上に迎え、Q&A形式によるパネルディスカッションが行われました。
“オープン・イノベーション”そして“共創”を通じていかにビジネスを変革していくべきか?レポートの全文は、以下サイトよりご覧いただけます。

オープン・イノベーションの最前線 富士通経営者フォーラム2018 レポート全文はこちら
講演者プロフィール
  • カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス
    コーポレート・イノベーション ファカルティ・ディレクター
    ヘンリー・チェスブロウ 教授
  • 1QBit社CEO
    アンドリュー・フルスマン 氏
  • 富士通株式会社
    マーケティング戦略本部VP
    高重 吉邦