AIでアルツハイマー病やパーキンソン病などの新薬開発に挑戦

新薬の開発に困難はつきものです。たとえば、店頭に並べられるまでに平均27億ドルものコストが製薬会社にかかることが、タフツ大学医薬品開発研究センターの調査でわかっています。また、後期試験段階の治療薬の実に90%が、市販される前に効果や安全性の問題からお蔵入りとなっているほどです。

しかし、起業家養成スクールのYコンビネータが輩出したバージゲノミクス社のように、AIの力を借りれば創薬プロセスを大幅に加速できると確信する企業も現れています。シリコンバレーを拠点とする同社は、先ごろ、DFJ、ウーシーアップテックの企業ベンチャーファンド、ALS投資ファンド、エージェントキャピタル、OSファンドが主導する3,200万ドル規模の新たな資金調達を行うことを発表して注目を集めました。2015年に創業したバージゲノミクスは、これまですでに3,600万ドルの資金調達に成功しています。

米IT系メディアのVentureBeatによる電話インタビューで、バージゲノミクスの創業者であるアリス・チャン氏は「当社は、新薬開発が推測に頼らずに行えることを目指している」と答えています。「今回調達される資金は、自社で所有するデータセットや治療ポートフォリオの拡大と、最も見込みのある候補薬の臨床への応用のために利用していく予定です。」

バージゲノミクスの研究対象は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALSこと筋萎縮性側索硬化症など、これまで製薬研究者が扱うには荷が重かった神経変性疾患が大半を占めています。アルツハイマー病を例にとれば、約400件の臨床試験を通じて実験的な治療方法が試されてきましたが、投与された薬の中で薬効が認められたものはパーキンソン病向けの承認薬だけでした。しかし、薬効があるといっても、病状の進行を食い止めることはできていないのが実情です。

バージゲノミクスは、患者データや検査データを基にトレーニングを行った機械学習モデルを使って疾患に関連する遺伝子を特定し、病気の進行を遅らせる化合物を予測しています。そして、同社の研究グループは、動物モデルと幹細胞から成長した神経を用いてそれらの化合物の試験を行い、その結果をさらなるモデルの改良に活かすのです。

このようなプロセスを経て、研究の成果を示す医薬品が生み出されるまでには、1年半ほどかかるとチャン氏は説明します。

トレーニングデータの多くは、バージゲノミクス社内の創薬研究所や動物施設で生成・取得された独自のものです。そして、多くの学術機関や政府機関の協力のおかげで、業界屈指の規模と網羅性を誇るALSとパーキンソン病のゲノムデータベースを保有できるようになったとチャン氏は語りました。

2018年の5月に同社は、カリフォルニア大学サンディエゴ校、および、ベルリンを拠点とする研究機関のVIBと、パーキンソン病患者の脳内に見られる遺伝子の配列を明らかにすることを目的とした提携を結びました。また昨年には、マサチューセッツ総合病院の神経変性疾患研究所、コロンビア大学の運動ニューロンセンター、南カリフォルニア大学のケック医学校、およびミシガン大学の医学部とも提携して、ALSの研究を進めることを発表しています。

バージゲノミクスの創薬プロセスの特徴について、チャン氏は次のように明かしました。「製薬会社では、一度に1つの遺伝子を調べます。そのやり方は特定の疾患には有効ですが、より複雑なものは何百という遺伝子が原因となって起こる可能性があります。また、通常は、治験段階に進むまで人間のデータは使われませんが、当社では研究の初日から利用することにしました。AIの利用に加えて、こうした工夫も、創薬プロジェクトの失敗率を下げるうえで貢献しているのです。」

この記事はVentureBeat向けにKyle Wiggersが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。