共創がビジネスを変える

今こそデジタル・マッスルを鍛える時

今、様々な業界においてデジタル化が進んでいます。デジタル技術を活用し、多様なパートナーと共創してイノベーションを生み出すことは、ビジネスの成功に不可欠なだけでなく、様々な社会課題を解決する重要な鍵の1つとなります。富士通は2018年度のテーマとして「Human Centric Innovation:Co-creation for Success」を掲げています。今回の特集では、このメッセージに込めた思いや富士通が目指す未来について紹介します。

共創とは、お客様と共にビジネスの新しい「価値」を創造すること

人々や企業がつながり、社会やビジネスの新しい価値を生み出す「共創(Co-creation)」が、今あらためて注目されるようになりました。

これまで多くの企業は、お客様の要件を聞き、企業側の開発計画に沿って製品・サービスを開発し、それを提供する「プロダクトアウト」型で事業を進めてきました。しかしいつの時代にも、お客様が必要としているのは、製品・サービスそのものではなく、それらが生み出す「価値」です。「ドリルを買いに来た人が本当に必要とするものはドリルではなく、ドリルが開ける穴である」(ハーバード・ビジネススクール テッド・レヴィン教授)の言葉が示すように、ドリル本体を売るだけのビジネス、つまりプロダクトアウト型のビジネスでは、お客様が真に求めている価値に十分応えることができなくなっているのです。

今必要なのは、お客様が必要とする価値、プロダクトであれば、それを使って得られる効用やアウトカム(成果)を、お客様と一緒に考えて創造していくことです。ここに共創の本質があります。

2018年の全社テーマに「Human Centric Innovation:Co-creation for Success」を掲げたのは、私たちがこれまで追求してきた人を中心とした価値の共創から、具体的な成果(Success)を実現する年と考えているからです。

お客様中心の価値を共創するビジネスモデルへシフト

お客様と共創を進める中で富士通が最も大切にしているのは、「ヒューマンセントリック」という考え方です。ヒューマンセントリックとは、人をすべての中心に置くということ。「人」にはお客様はもちろんのこと、生活者や消費者、ものづくりやサービス提供を担う私たちも含んでいます。

これまでの企業の優位性は、いかに優れた商品を作るかということでした。しかし現在は、ビジネスを通していかに優れたカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)やカスタマーバリュー(顧客価値)を提供するかが重要になっています。つまり、商品より先に人ありきなのです。

こうした変化は富士通やIT業界だけが感じているものではありません。例えば自動車はクルマという形のモノではなく、人がA地点からB地点に最も効率よく、そして快適に移動できるモビリティという価値が重要になってきています。今、自動車産業は単に車を作って売るだけではない、新しいモビリティ・サービスをお客様やパートナーと共に構築することに取り組んでいます。

医療産業も同様です。患者に対して一律の治療のみ提供するのではなく、これからは個別化治療(テーラーメイド治療)、さらには健康・福祉の増進を重要なビジネス課題にしなければなりません。

金融サービスもまた、個人個人のライフスタイルやビジネスプロセスに合ったサービスをどのようにして提供するのかを競う時代になりました。このように、従来のプロダクトアウトのビジネスモデルから、ヒューマンセントリックなビジネスモデルへ、今あらゆる業界でドラスティックな構造転換が起ころうとしています。

デジタル革新を成功に導く「デジタル・マッスル」

■ デジタル・マッスル

こうしたビジネスモデルの転換のためには、企業自身が自らの力の源泉がどこにあるかを、再考する必要があるでしょう。これまでは、高品質で均一の商品を大量に生み出す組織能力が最も重要だと考えられてきました。しかし、これからの時代に必要なのは、人を中心において、その人にとっての真の価値は何かを考え、それをパートナーとともに大胆に創造する力です。このデジタル革新を推進するために必要な力を、富士通はアスリートになぞらえて「デジタル・マッスル」と名付けました。

デジタル・マッスルの構成要素は6つあります。それは、「リーダーシップ」「人材」「俊敏性」「ビジネスとの融合」「エコシステム」「データからの価値創出」です。富士通が実施したグローバル調査でも、より強いデジタル・マッスルを持つ企業が、より大きなデジタル革新の成果を生み出していることが分かりました。 デジタル革新とは、単にデジタル技術を導入することではなく、デジタル・マッスルを鍛え、継続的にビジネスを再創造し続けることです。富士通はこのデジタル・マッスルの鍛錬に注力し、お客様のデジタル・マッスルの強化をお手伝いしていきます。

このデジタル・マッスルの1つとして挙げているエコシステムを例に紹介しましょう。これまでの垂直統合型のバリューチェーンは、分散型のエコシステムに取って替わられようとしています。エコシステムの構築で重要になるのは、公平性、透明性、個人情報の保護といった観点です。相手から利益を奪って独占するのではなく、お互いにどのようにベネフィットを与え合うのかを、慎重に設計しなければなりません。

その点では自然界におけるエコシステムに学ぶことが沢山あります。例えば、美しいサンゴ礁を形づくるサンゴは、体内に光合成を行う褐虫藻を共生させ、安全な住処を与える代わりにサンゴ自身に栄養を供給してもらっています。そしてサンゴは褐虫藻からもらった栄養を周りの海に分泌し、それが周囲の多様な生物の餌にもなって生物多様性のエコシステムを支えています。これは、一方が利益を得たなら、もう一方も利益を得る仕組み であり、共創の重要なルールとも言えるものです。

富士通もエコシステムづくりに積極的に取り組んでいます。一例ですが、米国シリコンバレーに開設した「Open Innovation Gateway」や日本ベースにしグローバルなベンチャー企業をメンバーとする「MetaArc(メタアーク)ベンチャーコミュニティ」を活用しながら、様々な企業、大学・研究機関、ベンチャーなどとの共創を行っています。

企業と人をつなぎ、産業のデジタルトランスフォーメーションをドライブ

今、世界では第4次産業革命と呼ばれる大きな変化が起きています。これを引き起こしているのが、データを駆使したデジタル革新です。デジタルビジネスの本質は、データからどのように価値を生み出せるかにあります。

境界線を越えて企業と企業、企業と人をつなぎ、異種のデータを組み合わせて価値を生み出しながら、産業のデジタル革新を共創により実現していく。さらには自律・分散型のネットワーク社会の中で、人がその創造性をいかんなく発揮し、エコシステムにおける共創を通じて、社会に最大限の成果をもたらす――これが、富士通のビジョンで あるヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティです。私たちのビジョンは、様々な社 会課題を解決するために国連が提唱している持続可能な開発目標「SDGs」とも方向性が一致しています。富士通は、ヒューマンセントリックなビジョンの達成に向けたビジネス活動を通じて、SDGsの達成に貢献していきます。

■ ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ ~豊かな社会を築き、SDGs達成に貢献~

富士通の「ビジョン」に込められたもの

企業活動においてビジョンの重要性は言うまでもありません。ビジョンは一度策定してしまえばそれで終わりではなく、手をかけて育てていかないと、決して実を結ぶことはありません。そのため、富士通では「Fujitsu Technology and Service Vision」を毎年更新して公開しています。企業として目指す方向性を明確にしつつ、毎年新しい扉を開けるようにビジョンを実現する新しい事例やテクノロジーを取り込みながら、進化し続けるストーリーになっています。今後はよりお客様の現場に近い視点に立った「Future Insights」という業種ごとの未来シナリオも制作・公開していきます。AIなどのデジタル技術はますます進歩しますが、そうであるゆえに、人の幸せや創造性に原点を置いた、ヒューマン・セントリックなビジョンが求められていると確信しています。

高重 吉邦
富士通株式会社
マーケティング戦略本部 VP
Fujitsu Technology and Service Vision
主にビジネスリーダーの方々に、富士通のビジョンとデジタル革新をどのように実現するかについてお伝えしています。
詳しくはこちら