AIやロボットが公共サービスで働く未来は実現できるのか

AIやマシンラーニングという言葉を、ほとんど毎日のようにニュースの見出しで目にします。また、自動運転車は2018年中にイギリスの公道を走り始める見込みです。そして、皮膚がんのような病気の診断においては、医師よりもAIが優れていると判明しました。さらに、IBMは、テーマに合わせた事前準備なしに、人間との議論を問題なくこなせるマシンを発表しています

そんな状況の中で、イギリス国内における公共サービスの立案や提供方法も、このテクノロジーによって劇的な変化を遂げる――そう考えざるを得ないと認めたのは、ガーディアン紙のイベントに登壇した有識者たちでした。このイベントは、「ロボットがいつから公共サービスを運営するようになるか?」というテーマの下、公共サービス関連のマネジメント・コンサルティング会社である2020デリバリーの後援によって開催されたものです。ガーディアン紙の公共事業関連ニュース部門のエディターであり、有識者パネルの議長も務めたジェーン・ダッドマンは、実際には、そうした動きが既に始まっていると指摘しています。自動化ツールやチャットボット、音声認識システムは、イギリスの政府機関や地方自治体の多くで利用されているからです。たとえば、同国のDWPこと労働年金省では、福祉制度に対する大規模な不正行為を専用アルゴリズムを用いて特定し、防止しています。

関連記事:家庭用ゲームマシンのXboxが自宅における高齢者の安全を確保(英文)

しかし、AIが、いつの時点でイギリスの公共サービス部門の核となるような役割を担うようになるかを予測するのは、簡単な話ではありません。AIに関する超党派の議員グループに2012年から参加し、同グループの議長も務めるスティーヴン・メトカーフは次のように指摘します。すなわち、テクノロジーの未来を予測するのは「明日の天気がどうなるかを予測するのと同じくらい難しい」のです。

上記の有識者パネルは、ロボットやAIによって失業がもたらされる可能性や、自動化された世の中で生じかねない歪み、アルゴリズムの偏り、公務員がAIへの理解を深めることの必要性、情報共有の現実的側面などの問題について話し合いました。また、これらの話題と並行して、AIがもたらし得る利益や、その可能性を見極めるうえで公共部門が果たす役割などについても、真摯な議論が交わされたことも付記しておきます。パネラーの1人で、企業や公共事業者のオープンイノベーションを支援するビッグ・イノベーション・センターの最高責任者兼共同創立者のバージット・アンダーソンは、「公共部門は、未来に大きな希望を抱かせるこの革命を牽引しなくてはなりません」と述べました。

しかし、この状況を意義あるものとするためには、それなりの知恵も必要であるとアンダーソンは付け加えます。イギリスの公共部門においては、スマートシティ、情報収集、組織間の情報共有といった概念が十分に活用されていません。「企業登記局も、国家統計局も、イングランド銀行も、自分たちの情報をバラバラに使っているという状態です。サービスをもっと効率化できるよう、市民とビジネスに関わる情報は、絶対に開放する必要があります」というのが、アンダーソンの主張です。

それは「政府が国民との間に信頼関係を築き上げて初めて可能になることだ」と、メトカーフも、プロスペクト労働組合の書記長であるマイク・クランシーも、共に認めています。NHSこと国民保健サービスを通じて健康情報を共有するという2013年の実証実験は、結果的に不評でした。政府から国民に対して、そのメリットについての的確な説明がなかったことが大きな敗因です。「人々は、個人の生活に国が押し入ってくるように感じられたのです」と、メトカーフはいいます。

「信頼に関して、この国には多くの問題が存在します」とクランシーは付け加えました。この議論を前に進め、労働の性質の変化と失業の可能性に対する不安を和らげるには、中央政府、地方自治体、国民、その他の利害関係者との間で十分なコミュニケーションがあることが大前提となるからです。ある報告書によれば、今から15年以内に、公共部門の労働者25万人がロボットに仕事を奪われる可能性があるとされています。クランシーによれば、「この変化に上手く対処し、こうしたテクノロジーが必要だと人々に信じさせられるか否かは、公共サービスのリーダーにかかってくる」とのことです。「公共部門と民間部門へのロボットやAIテクノロジーの導入について期待が持てそうな例は多くありますが、それらの実現も確実というわけではありません。」

英国上院のAI特別委員会は、イギリスのAI技術受け入れ体制に関する報告書を2017年4月に公開しました。同委員会の一員であるオリー・グレンダーは、行政内でこの技術に対する理解を深める必要があることを認めています。グレンダーはまた、ガブテック・カタリスト・チャレンジについても触れました。この試みは、テクノロジー企業による公共部門の課題解決を奨励するため、3年にわたって計2,000万ポンドを投資するというものです。「こうした動きを理解するには、政治家はもちろん公務員にとっても、それなりの勉強が必要です」とグレンダーはいいます。しかしグレンダーの考えでは、人々、とりわけ若者は、「AIの来襲」や情報共有について、一部の人が思うほど心配していません。「私の12歳の子どもなら、マクドナルドの無料クーポンと引き替えに、自分に関するすべてのデータを喜んで差し出すでしょうね。」

関連記事:公共部門にロボット?ええ、導入しましょう | マイク・クランシー(英文)

だとしても、グレンダーも認める、ある問題については、知っておく必要があります。それは、ロボットやAIの背後にあるアルゴリズムに偏りが存在するかもしれないということです。AIが人種と性にまつわる根深い偏見を拾い上げているということは、既に研究によって明らかになっています2020デリバリーのディレクター兼デジタル・プラクティス・リーダーであるアントニオ・ワイスは、米国司法省による濫用で物議を醸したコンパスというプログラムに言及しています。このプログラムは、犯罪者が地域社会にもたらすリスクを判定するにあたり、一部の層に対して不当に高い予測率を適用していました。「こうした事態は明らかに憂慮すべきことですが、私たちは、これが問題となった理由を述べる必要性を含めて、この事件から学んでいるところです」とワイスは述べています。

ワイスの考えでは、さしあたりAIが公務員にとっての大きな助けとなれそうな分野は、日常的なタスクの効率化です。日常的なタスクとは、イギリス国内のコールセンターが対応する毎年80億件もの通話などを指しています。しかしこうした応用も、AIの導入自体を目的とするのではなく、あくまでもエンドユーザーのメリットを念頭に置いて進めることが必要です。「市民が抱える問題の解決に役立つ分野を特定し、そのために役立てることのできるテクノロジーに照準を絞る必要があるでしょう」と、ワイスは述べています。

ブラウン・ヤコブソン法律事務所の役員を務め、聴衆としてセッションに参加していたマイケル・モースデールは、「公共サービスにAIを導入する場合に、その予算がどこから捻出されるのか教えて欲しい」と問いただしました。この質問は、「特に地方議会はいまだ緊縮財政を強いられ、介護費用の捻出にも四苦八苦している」という、モースデールの認識から発せられたものです。メトカーフはこれに答え、「金銭面だけでなく、長期的な視野の有無も考慮すべき点である」と述べました。そして、「高齢者がより高額な出費を強いられる介護サービスを避けられるよう、議会が早期に介入する上でも、AIテクノロジーは役に立つ可能性を秘めている」と付け加えたのです。

最終的にクランシーは、2つの事柄に対する真剣な議論の必要性を再確認しました。1つは国の役割についてであり、もう1つはイギリスの公共サービスが抱える厄介な問題、すなわち、「優れたサービスの提供を求める一方で、それに対する支払いは避けたい」という国民性への対処についてです。「AIに関する議論はすべて、公共サービスの価値についての再考を促すものであるべきだ」というのが、クランシーの結論でした。「再考を促すことで、AIに注ぎ込まれる予算についての国民的な同意が得られる可能性も増すはずだからです。」

この記事はThe Guardian向けにEmma Sheppardが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。