マイレージはもう古い?リワードプログラムに暗号通貨が参入

マイレージを貯めているレネ・コンラッドは、ボーナスマイルを4つの航空会社から、また、購入ポイントを小売り業者とクレジットカード会社合わせて6社から得ています。しかし、コンラッドが一番気をそそられているポイントサービスが、一風変わったものを提供するようになりました。それはデジタルコインです。

いつもの朝、チューリッヒ行きの列車に飛び乗る前に、コンラッド(41歳)はカフェ・ラテッソのボトルを慌てて手に取りました。ボトルに書かれたコードを専用Webサイトに入力すれば、およそ12ラテッソコインを獲得することができるのです。このサービスが利用可能となったのは2018年の4月のことで、23か月以内には、貯まったコインが他のデジタルトークンや現金と交換可能になる予定といいます。

コンラッドは電話によるインタビューで次のように話してくれました。「期限までに使わなかったせいで、航空会社のマイルをどれだけ無駄にしたか分かりません。しかし、公に認められた通貨に交換できれば、誰も自分から取り上げることができないのです。」

実は、既に存在するデジタルトークンの種類は、実に1,600以上にのぼります。そのため、コインの発行者や発行企業は、実績と馴染みのあるポイントサービスを取り込んで、他の暗号通貨との差別化を図ろうとしているわけです。2018年の2月には、東京に拠点を置くEコマース大手の楽天が、現金と交換できる独自リワードコインの発行計画を公表しました。また、EZレンタカーは、リワードプログラムのメンバーがポイントをビットコインなどのデジタル通貨と交換できるようにしています。さらに、ヒューレット・パッカード・エンタープライズは、トークンをガソリンスタンドで使えるようにする方法を考案しつつあるという具合です。

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世代別の暗号通貨購入率 / ミレニアム世代の17%以上がデジタルコインを購入している 
ソース:ファインダー・コムによる委託調査

一方で、それらの企業は、このアイデアを実現するうえで依然として困難な道のりに直面しています。ポイントサービス全体ではユーザー数の成長率が鈍化し、2014年から2016年までの2年間で15パーセントに留まりました。その前の2年間の伸び率は26パーセントだったので、明らかな下落が見られます。これらの数字は、ブランドに対する消費者の忠誠度を調べるコロクワイ・ロイヤルティ・センサスによるものであり、2017年のアメリカおよびカナダの消費者約4,500名に対して行われた調査の結果です。アメリカ国内のポイントサービスの会員のうち半数以上が休眠状態で、およそ30パーセントの消費者が、一度もポイントやマイルを交換することなくプログラムの利用をやめていることも明らかとなりました。

そのため企業は、デジタルコインが若い消費者からの注目を集め、こうした傾向を覆すことに期待を寄せています。ファインダー・コムの委託による、2,001名のアメリカ人を対象とした調査では、ミレニアル世代のおよそ5人に1人がデジタル通貨を所有しているので、希望はあるかもしれません。

加えて、このポイントやマイルからデジタルコインへの転換によって、サービス提供企業の純利益の数字が押し上げられる可能性も出てきました。交換されていないリワードポイントは企業の貸借対照表で負債扱いになることが多いのに対し、現金と交換できるデジタルコインならば負債として扱われない可能性があるためです。しかも、コインが交換された場合には、収益として計上されることすら考えられます。

費用の削減にも寄与するデジタルコイン

ここでは、ブロックチェーンの魅力が話に関係してきます。ペイメントコンサルタント会社のクローン・コンサルティングLLCCEOであるリチャード・クローンによると、現在、ポイントサービスに加盟する商店主たちは、ファースト・データ・コーポレーションのようなサードパーティーの決済処理企業に1年あたりの総計で約350億ドルを支払っています。これはポイントに紐づけられたプリペイドおよびプライベートレーベルのクレジットカードについて、決済サービスを受けたことへの対価です。クローンによれば、デジタルトークンを発行することで、この費用を最大80パーセント削減することができるといいます。こうした取引を正確に記録するうえで役立つのが、ブロックチェーンです。

「独自のプリペイドシステムに基づく、独自のカードを作り出すことになります」と、クローンは述べています。クローンによると、今年は多くの大規模な商店がそのような試験運用を行っており、正式なサービス開始は来年を予定しているとのことです。

金融系の調査会社であるオートノモス・リサーチLLCでフィンテック戦略のグローバルディレクターを務めるレックス・ソコリンによると、510年以内に、アメリカ国内の成人のうち5パーセントが暗号技術によるポイントサービスを利用するようになり、関連するトークンの発行額は1年あたり36億ドルに達するとされています。また、ソコリンは、今後1020年以内に、アメリカ人の15パーセントがデジタルのポイントサービスを利用するだろうと見ています。

こうした状況の中で、楽天は、ブロックチェーンベースのポイントサービス向けコイン供給業者における最大手になる可能性が出てきました。楽天CEOの三木谷浩史氏は、今年になって独自のデジタルコインの発行計画を発表しており、このコインは楽天のECサイトで使うことができることはもちろん、現金とも交換可能とされています。ネットショッピング業者である楽天は、過去15年で既に90億ドル分のポイントを発行していると、三木谷氏は述べました。

モバイルアプリとの連携

しかし、他の企業も決して大きな遅れを取っているわけではありません。たとえば、モバイルアプリに関してサブウェイやバーガーキングを含む約900ブランドとの提携実績を持つスタートアップ企業のキービーは、現在、ラテッソなどの顧客企業を対象にブロックチェーンの導入を進めています。そして、それに基づいて年内に、20のブランドがポイント代わりのデジタルコインを発行することになりそうです。

キービーのCEOであるガブリエレ・ギアンコラは次のように述べています。「単純にマイルがデジタルコインに取って代わられるということではありません。置き換わるのは、その背後にあるテクノロジー全体です。そして付与されるものも、もはやポイントではありません。トークンなのです。」

別のスタートアップ企業であるデジタルビッツ・プロジェクトによると、カナダのペプシコやマーズなどの企業からリベートの還元を受けられるキャドルアプリにおいて使えるトークンは、いずれイーサーやビットコインの暗号通貨に交換できるかもしれないとされています。

さらには、ブロックチェーンベースのトークン付与サービスが、交換可能なデジタルコインという範疇を越えて発展するのではないかと予想する人たちさえ出てきました。ヒューレットパッカードはストリーマーという企業と共同で、ブロックチェーンを使って自動車ユーザーにリワードを提供するというテストを行っています。将来的には、加速に関するデータ、燃料の使用量、位置情報などを自動車自身が収集し、それに基づいてガソリンスタンドがモバイルクーポンやポイントを発行することで、近くを通るドライバーに給油や整備のサービス利用を積極的に促すようになるかもしれません。

マーケティング上の仕掛けを超えて

交換可能なトークンには、発行元の企業の店舗やWebサイトにとって多少の不利益をもたらす可能性もあります。ユーザーが、トークンをどこか別の場所で使ってしまうかもしれないからです。

その意味で、ブロックチェーンベースのトークン付与サービスのうち、初期の例のいくつかは、実のところ実のある取引というよりは、むしろ消費者の気を惹くためのマーケティング上の仕掛けでした。たとえば、アドバンテージ・レンタカーが5月に開始した、新たなデジタルコイン付与サービスなどは、それにあたります。

「このサービスのメリットは、顧客の求めるものを提供すれば、顧客がリピーターとなって再度レンタルしてくれるという点です」と、同社のCEOであるスコット・ダヴィドは述べていますが、果たしてそうでしょうか?

アドバンテージ・レンタカーのEZマネー会員は、25ドル分のビットコインを得るために、5,000リワードポイントを獲得するか、レンタカーに5,000ドルを費やす必要があります。これは、誰が見ても過大なレートであり、交換比率を調整しなければ現実的とはいえません。新しい試みには乗り越えるべき課題も付き物ですが、このようなサービスが企業と消費者の双方にとってメリットとなるように根付かせていくためにも、ベストなバランスを見つけ出していく努力が必要といえるでしょう。

執筆者: ポートランド在住のオルガ・カリフ<okharif@bloomberg.net>

担当編集者:ニック・ターナー<nturner7@bloomberg.net>、ジェレミー・ヘロン<jherron8@bloomberg.net>、

デイヴ・リトカ、アンドリュー・ダン ©2018 ブルームバーグ L.P.

この記事はBloomberg向けにOlga Kharifが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。