「Co-creation(共創)」が実現する新しいデジタル革新で、ビジネスを成功に導く(後編)

デジタル革新を成功させる6つの要素とは?

富士通株式会社
グローバルマーケティンググループ長
執行役員 山田 厳英

田中に引き続き、キーノートスピーチ後半に登壇した富士通執行役員の山田厳英は、まず富士通がグローバルで実施した企業の経営者を対象にした調査の概要を紹介。デジタル革新を実行・トライアル・検討中と回答した企業が全体の67%にも上り、その内の24%が既に成果を上げているという結果に触れ、「デジタル革新に取り組むことは、もう当たり前の時代。いかに成果を出すかが重要になっています」と説明しました。

続けて、ショッピングで顧客体験価値を向上させた海外事例と、これまで取り組んできたCo-creation活動から見えてきた「デジタル革新を成功に導くためのポイント」について、具体的なお客様との取り組みを交えて紹介しました。

ショッピングの顧客体験価値を向上させた、LOTTE CARD様

LOTTE CARD
デジタルペイメントチーム マネージャー
アン・ビョンイル 氏

韓国のLOTTE CARD様では、手のひら静脈認証を利用した「HandPay決済サービス」を韓国のセブンイレブンをはじめとする30店舗以上の小売店に設置・展開中です。キーノートスピーチでは、デジタルペイメントを担当するアン・ビョンイル氏が登壇し、サービスの導入経緯などを語りました。

LOTTE CARD様は、韓国のモバイル金融サービス市場をリードしているクレジットカード会社です。同社は、未来の決済手段を考えた際、カードやスマートデバイスを用いない方法が一番便利だと判断して生体認証方式の導入を決定。顔や虹彩(こうさい)、指紋認証も検討しましたが、偽造が困難で認証精度に優れ、利用が簡単な手のひら静脈認証を採用した「PalmSecure」(パームセキュア)を採用しています。

富士通をビジネスパートナーとして選んだ理由について、アン氏は韓国特有の規制や環境を理解した上での高い技術力の提供があったことを挙げました。また、既存のカード決済プロセスと富士通のPalmSecureを連携する方式を採用した結果、80日で決済システムを構築できたことに満足している、と評価しています。同社は今後、ロッテグループのデパートやスーパーマーケットへの拡大を予定しています。

PalmSecureは、グローバル60カ国、7,000万名に利用されています。金融・公共をはじめとした社会システムや様々な企業・団体におけるデジタル革新のキーデバイスとして活用されています。

デジタル革新成功の6つの共通ポイント

次に山田は、デジタル革新を成功に導くためのポイントとして、以下の6要素を挙げました。

  1. (1)経営層の「リーダーシップ」
  2. (2)課題解決に向けた「俊敏性」
  3. (3)デジタルテクノロジーと既存「ビジネスとの融合」
  4. (4)企業が保有する大量な「データからの価値創出」
  5. (5)デジタルスキルを持つ「人材」
  6. (6)価値を拡大させていく「エコシステム」

富士通では、これらの要素を人間の体に例えて「デジタル・マッスル」と呼んでいます。デジタル革新を目指す企業も同様に、企業体質を強い意志を持って鍛え続ける必要があると考えています。山田は、デジタル・マッスルがどのように成功につながっているか、その具体例を挙げて紹介しました。

デザイン思考による「カイカク」で新たな価値を創出(トヨタ自動車サービス技術部様)

1つ目が、トヨタ自動車サービス技術部様の取り組みです。日本全国約4万人のサービスエンジニアを支えるトヨタ自動車サービス技術部様は、サービスエンジニア育成の強化と車両修理技術の研究開発を加速させるため、多治見サービスセンターを開設。サービスエンジニアの未来のありたい姿を描き出すため、オープンイノベーションを起こしていく場として「サービス技術開発ラボラトリー」を立ち上げました。

この活動からワークスタイルが変化し、新しいアイデアを積極的に育てていく風土も醸成。「カイゼン」と「デザイン思考」によるイノベーション(カイカク)で新たな価値を創出し、クルマとサービスの未来を切り拓いています。

「デジタル革新は多くの場合、未知の領域への挑戦となります。デザイン思考アプローチはデジタル革新を実現する上で、リスクを最小限に抑えつつ、結果を得るための一番の方法だと考えています」(山田)。富士通では、このデザイン思考アプローチを実践する場として、グローバルで「デジタル・トランスフォーメーション・センター」を展開しています。

サンスターグループと先進予防歯科サービスを提供

もう1つの事例が、サンスター様との取り組みです。富士通はサンスター様と共同で、IoTスマートハブラシ「G・U・M PLAY(ガム・プレイ)」と、富士通の歯科医院向けクラウドサービスを連携させた先進予防歯科サービスを提供しています。G・U・M PLAYを歯ブラシに装着して歯を磨くと、ゲームを楽しみながら歯みがきができたり、正しく磨けているかを採点することなどができます。

サンスター株式会社 オーラルケアカンパニー
アジア/日本エリア マーケティング統括部長 兼 日本ブロックマーケティング部長
淡島 史浩 氏

サンスターの淡島史浩氏は、「単なる歯みがきガイドとしての価値提供だけでなく、歯科医療のトータルソリューションの一つとして提供していきたい」と説明しました。今後の展開について、淡島氏は「社内外の様々なデータと連携したヘルスケアサービスを創出し、一人ひとりがより健康になっていただける仕組みを構築していきたい」との方針を明らかにしました。

スマートメータ―のデータを活用した見守りサービス(関西電力様)

デジタル革新を成功させるには、大量データが蓄積された既存システムに、最新のデジタルテクノロジーを組み込んでビジネスと融合させるかが重要となります。山田は「ビジネスとの融合」という観点で、関西電力様の事例を紹介。関西電力様では、現在普及が進んでいるスマートメータ―からのデータを分析することで、生活リズムの変化を察知して通知する「見守りサービス」を開始しています。この分析には、富士通のAI技術が活用されており、生活実態とずれのない高精度の分析を可能にしています。

デジタル人材育成に役立つ「富士通デジタルビジネスカレッジ」

これまで紹介してきた事例は、最新テクノロジーを組み合わせるだけでは実現できません。デジタル革新を成功させるには、従来とは異なるスキル・ノウハウを持つ「デジタル人材」が必要となります。富士通では、デジタルビジネスの最前線として組織したデジタルフロント事業本部を中心に、イノベーションのマインドセットを養うため、「50%ルール」「他流試合」などの仕組みを導入しています。また、開発スキルとして必須となるアジャイル手法の習得に向けて、アジャイル開発のノウハウの世界標準であるPivotalと協業しています。

さらに、お客様のデジタル人材育成に向け、必要なスキル・ノウハウを学ぶことができる「富士通デジタルビジネスカレッジ」を2017年7月に開講しました。デジタル人材が身に付けるべきスキルを体系化し、従業員・職員のデジタル人材化を支援しています。

富士通デジタルビジネスカレッジでは、より実践的な内容となるように実ビジネスの課題を持ち込んだディスカッションや実機を用いた演習も実施しています。既に70人以上が受講しており、2018年7月からアジャイル手法も組み込み開講します。

デパートを「再び人が集まる場所」に(そごう・西武様)

富士通デジタルビジネスカレッジの受講後、自社課題に基づいた新たなビジネスについて具体的に取り組む企業が現れています。そごう・西武様では、受講企業同士のつながりをきっかけに、センサーを取り付けた「IoTメジャー」によるオーダーメイドを開始します。IoTメジャーを活用することで、採寸の時間を短縮し、測り間違いを減少。お客様満足度の向上を図ります。また、データを店舗間で共有し、売り場の魅力を高めることで、デパートを「再び人が集まる場所」に進化させることを目指します。

産学連携で新たなビジネスにチャレンジ(三菱地所様/ソフトバンク様/東京大学様)

東京・丸の内エリアで新しい街づくりを目指す取り組みが、三菱地所様を中心とした産学連携で始まっています。三菱地所様が保有する商業店舗などの情報に加え、オープンデータや外部企業の情報など、様々なデータを共有し活用するという試みです。これには最新のテクノロジー、ブロックチェーンを用いた富士通のプラットフォームを活用しています。企業や業種の垣根を超え、データを利活用し合うことにより、新たな事業・サービスを創出することを目指します。

お客様と共にデジタル革新加速

富士通では、お客様のデジタル革新を加速するデジタルビジネス・プラットフォーム「MetaArc」(メタアーク)と、デジタル人材の知見・ノウハウによるインテグレーションで実現しています。さらに、MetaArcを強化すべく、グローバルのパートナーやベンチャーとの連携を拡大しています。

最後に山田は「富士通は、新しいチャレンジを通じてCo-creationにより成功を分かち合いたいと考えています。そのためにつながるサービスを強化し、常により良いパートナーであるよう努力し続けていきます」と述べ、講演を締めくくりました。

なお、講演の内容をグラレコとしてまとめてあります。