【落合陽一×富士通】「均質化された自分」から脱皮せよ

中山:さて、ここからは落合さんに3つの質問を投げかけたいと思います。落合さん、じゃあ、どれからいきましょうか。

落合:じゃあ、まずはテーマ1。これは協業する両側にちゃんと意思決定できるキーパーソンがいないと厳しいですね。企業でも学校でも自治体でも、通常業務の意思決定プロセスに乗るとどうしてもスピードが遅い。だから、プロジェクトを自らの意思だけで判断し進められる人が両側にいるかどうかがとても重要です。

中山:両側がポイントですね。

落合:そう。どちらかがスピーディに進めていても、相手側が遅ければ意味がありませんから。

中山:落合さんの研究室は多くの企業とコラボしていますが、何件くらいやってきたんですか?

落合:数えたことはないですが、40プロジェクトくらいだと思います。

中山:その中でうまくいったプロジェクトは全体の何%くらいですか。

落合:ほぼうまくいってますよ。

中山:ほぼ? そんなにうまくいってるんですか。

落合:ですね。

中山:それは、どんなプロジェクトも落合さんがうまく仕切っているから?

落合:いや、僕は相手側にキーパーソンがいないところとは組まないからだと思います。

中山:なるほど。キーパーソンに必要な要素は何ですか?

落合:いくつかあります。まず社内に顔が利くというか自社の仕組みをよく知っている人。それと同じような専門性があるというか共通言語で話せることですね。それとビジョンが共有できて、人の意見を聞き入れる柔軟な脳みそも必要ですね。あ、あと若すぎないことですね。

中山:何歳くらいがちょうどいいんですか。

落合:30歳後半から40歳半ばぐらい。

中山:結構、年輩な層ですね、意外でした。

落合:日本企業って、それくらいの層じゃないと全然動かないんですよね。若い人は、すごく優秀で元気があっても、うまくいった例が全くなくて。かといって、40代後半以上だと、偉すぎてみんなが萎縮しちゃう。だからコラボプロジェクトのキーパーソンは、意思決定もできて、かつメンバーものびのびと動けるこの層くらいがちょうどいいんです。

中山:なるほど。では、テーマ2にいきます。少しディテールの話になりますが、データの有効活用が今後さらに競争力の源になる時代、私はデータをどこの国よりも自由に効果的に使える国にしていきたいと思っていますが、どのようにしたらいいと思いますか。

落合:データ活用だけの話ではないですけど、日本政府は縦割りの全然違う官僚組織があるので、このさきもうまくいかないと思います。僕は内閣府のプロジェクトの委員なども務めているんですけど、やっぱり、過去のエコシステムをデザインしたがるんですよね、官僚組織って。

中山:過去のエコシステム?

落合:過去がそうだったから、同じ方法でやりたがるんですよ。正しいんです。彼らの習性として正しいんだけど、ただ、冒頭、僕の講演で話したように、過去とは全く違う政策を進める必要がある。だから、政府も大きく変わらないといけないと思うんです。

中山:なるほど。では最後、3番目のテーマにいきましょうか。「働き方改革」ブームですが、どう思いますか?

落合:労働時間を短くしろってやつですか。

中山:いや、そうではないと思うんですけど、今はなんとなくそうなってしまっていますよね。労働時間の削減が焦点になってしまっているような......。どこか違和感があるんです。

落合:「若いやつほど、働け」と言うじゃないですか。あれは間違いで。若いやつは、半分働いて、半分遊んでいるようなものでいいわけなんです。

イノベーティブなアイデアは何も働いている時にだけ出てくるわけではない。むしろ遊んでいる時にビジネスの新たなアイデアが生まれたりする。組織に多様性が大事だって言いますけど、個人にとっても多様性は重要。

だから、さまざまな経験、多様な時間を過ごしていたほうがいいんです。だからある意味、働き方改革で時間を確保するのはいいことなんだけど、削減した時間の使い方がみんなわかってない。そこが問題です。

中山:同感。働き方を変え、効率化した後、新しい価値を生むために何をするのか。そんな本質的な検討がまだできてない。企業再興のカギはここにもありますね。

落合氏と中山氏のセッション中、その内容をビジュアルでまとめるグラフィックレコーディングを富士通デザインのタムラカイ氏が実施した。2人の講演をリアルタイムで記録。講演後に、グラフィックレコードを見ながら振り返る場面も。「講演を聞いた直後、すぐに内容をおさらいし理解を深めてもらえる。記憶に残すための一助になれれば」とタムラ氏。講演直後、グラフィックレコードを多くの来場者が撮影する場面が見られた。聴衆からは「刺激的だった」という声も多く聞かれ、日本や企業の今後についての「気づき」を与えるセッションとなった。

(取材・構成・編集:木村剛士、撮影:北山宏一)