【落合陽一×富士通】「均質化された自分」から脱皮せよ

筑波大学の落合陽一氏は、先月開催された富士通主催イベント「富士通フォーラム 2018」に登壇した。大ヒット著書『日本再興戦略』になぞらえて「企業再興戦略」をテーマに、富士通の中山五輪男・常務理事首席エバンジェリストと語り合った。今後の日本企業に必要なこととはーー。約1400人の聴衆を集め、同イベントで開かれた約120セッションの中でダントツNo.1の人気を誇ったセッションの中身を紹介する。

約60分のセッションは3部構成で進行した。1部では、企業再興に必要なことを落合氏が語り、2部では同様のテーマで中山氏が講演。3部では中山氏が落合氏に質問を投げかけるかたちでのクロストークとなった。

日本はマスコミュニケーションと近代教育が最も効果的に作用した国家だと思います。人が自然に増えていくことを前提として国をつくることを考えると、「群衆」を「均質化」するほうが効率的だったわけです。多種多様な国民性だったら統率は取りにくいですからね。
だから、マスコミや近代教育の力で同じ情報、同じ教育を施し、可能な限り人を均質化していったんです。経済が伸びているときには効果的ですから。

しかし、これからは違います。人は減っていく。そうなれば、政策、経済計画、教育、社会インフラと、ありとあらゆることを変えていかなければならない。

均質化から解き放たれなければならない。これはいろいろな側面で出てきます。たとえば地方と都市圏。これまでも人口の差はありましたけど、これからはもっと差が出る。だとしたら、都市圏では通用するビジネスが、地方ではこれまで以上に成り立たない。そして、その逆もあるわけです。

人口が減れば、さまざまな問題が起きてくるんです。首都圏と地方では進めるべき施策がもっと変わってくる。たとえば、昔は数百人の集落のために維持していた社会インフラがおじいちゃん1人になってしまったとする。でも、1人になったからといってそのインフラをなくすことはないですよね。

では、そのインフラを維持するために電気を売るとかこれまでとは違う、しかも首都圏とは違う施策が必要になる。中央集権的な統治から、より一層独立分散的な考え方が重要になってくるんです。

加えて受け止めなければならないのが高齢化。体が不自由な人が、人口減とは反比例するように増えていく。高齢化という大きな課題を、私たちは数十年かけてテクノロジーの力で解決していかなければならないんです。

目が見えない、耳が聞こえない、手足が思うように動かないなど、人によって抱える不自由をテクノロジーが解決できることは今でもあるし、これからももっと増え続けるでしょう。
たとえば、私も協力している、富士通が開発した髪の毛で音を感じるインターフェイス「Ontenna」もその一つだと思います。

私はこうした社会課題にも貢献するようなテクノロジーを研究開発し、それを社会実装するようなことをやっているんです。大学で約45人の学生を教え共同研究しながら、時には企業とも連携しながら、テクノロジーを社会実装する。それが私の仕事です。

そして、企業が今後の成長戦略を考えるうえでも、こうした人口減少や少子高齢化は念頭に入れなければなりません。

別の観点からも均質化からの脱皮は必要です。テクノロジー的に、過去はテレビや雑誌、新聞から得られる情報しかなかったわけですけど、今はパーソナルデバイスを片手に、さまざまな情報が手に入る。全員で1つの画面を見て同じ情報を得ていた時とは違います。これからはシンプルで「個」に最適化されたプロダクトやサービスがより一層求められるのです。

「ダメなオープンイノベーション」からの脱皮

私からは、「企業再興」をサポートする富士通の取り組みについて説明させていただきます。
今、そしてこれから企業が直面するデジタルトランスフォーメーション(DX)。それを実現するための6つの要素を抽出しました。富士通はこれを「デジタル・マッスル」と呼んでいます。

この中でも今回は、「エコシステム」「人材」「俊敏性」の3つについて少し話をさせてください。

まず、エコシステム。富士通は一般的には大企業で、多くの社員がいますし事業領域も広い。ですが、落合さんの言う通り、社会全体が大きく変化し、お客様のご要望も多様化している中、1社単独でこのさき生き残っていけるとは思っていません。

複数の企業とのエコシステムを形成し、「共創」する重要性を十分に感じています。とくに斬新なアイデアをスピーディにビジネス化するベンチャー企業とのコラボを重視しています。

ベンチャーとのコラボは、20年くらい前からやっているんですね。でも、全然ダメだった。「目的が不明確」「上から目線」「意思決定の遅さ」「首都圏中心」といった大企業のオープンイノベーションにありがちなダメなパターンに陥っていました。

これを改善すべく、本気でベンチャーとのコラボに動き出したのが2015年。スピードを速め、エコシステム形成に対するコミットメントレベルを上げたことで徐々に成果が出て、この3年間でベンチャーとの協業を検討した数は77件、そのうちコラボレーションビジネスは40件ほど出ています。

意外かもしれませんが、本年3月に日経電子版に掲載された「スタートアップ連携に本気な大企業ランキング」で、富士通はKDDI、トヨタ、ソフトバンクに次ぐ4位。少しずつかもしれませんが、富士通は変わろうとしています。

「デジタルイノベーター」という新職種

2つ目は人材。富士通は最近、デジタルイノベーターという新職種を作ったんです。

富士通自身もカテゴライズされる「システムインテグレータ(SIer)」のビジネスは、お客様の要望を聞いて仕様をまとめ、それに合わせてシステムを開発し運用するモデルでした。ある意味、受け身だったんです。

でも、これからは、これまでの受託型ではなく提案型でなければならない。お客様と共創関係を築かなければならないんです。当たり前のように思えるかもしれませんが、そう簡単には変われないんです。

だから、富士通はこうした動きを専門的に担う新職種を作ったんです。それがデジタルイノベーターで、「デザイナー」「プロデューサー」「デベロッパー」の3つに細分化しています。このデジタルイノベーターを2020年の春までに1200人育成しようとしています。こうした人材が先陣を切って、お客様の課題解決に挑もうとしています。

俊敏性=デザイン思考

最後は俊敏性。言葉からイメージしにくいかもしれませんが、「デザイン思考」のことを指しています。

企業再興を考えた時、新しい試みは必須になります。しかし、アイデアが浮かばない、具現化できないという壁があるでしょう。普段の業務とは違う思考もしますので、脳の使い方も変えないといけません。

富士通は、デザイン思考のお手伝いをしていて、以下の5つのポイントをお客様に話しています。

具体的にはお客様に2日間ほどのお時間をご用意していただき、缶詰め状態とでもいえるかもしれませんが(笑)、徹底的にディスカッションしていただきます。私たちは、そのためのワークショップ専門の施設を持っていて、そこで私たちのプログラムに沿ってワークショップを進めていただく。お客様からは良いプログラムと施設によって普段とは違うアイデアが浮かんだというご意見をいただいており、高い評価を得ています。

デジタルトランスフォーメーションセンターでは、ワークショップ専門の設備、ツールとデザイン思考を用いて普段とは異なる思考をサポートしている。