モビリティ社会の未来をパートナーとともに創る

第二部 パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、三名の講演者に加えて日経BP総研の林氏がモデレーターとなり、モビリティ社会で生まれるものや自社のポイントと協業相手に求めること、富士通との協業、新しいことに挑戦する際の心構えについて討論されました。

【講演者写真】(左から)
日経BP総研 クリーンテック研究所 主席研究員 林 哲史氏(モデレーター)
株式会社FOMM 代表取締役CEO 鶴巻 日出夫氏
HERE Technologies 副社長 日本/ 韓国地域総責任者 ムーン・J・リー氏
富士通株式会社 執行役員 菊田 志向

今後、モビリティ社会ではどんな変化が生まれるか?

鶴巻氏 日本でも若者の車離れと言われていて、EV化が加速するのと同時に、「持つ」より「シェアして利用する」に変わっていきます。その時には我々の車のような小さな乗り物が良いと思っています。車の利用は増えますが、トータルの台数は地球環境のことを考えると減らしたほうがいい。ものづくりから始まって廃車になるまでのLCA(ライフサイクルアセスメント)が地球環境に良い、コンパクトモビリティを考えていきたいです。

菊田 今まで車メーカーが内部で車データの利活用を行っていましたが、このビジネスがクルマ業界を超えて「業際」というか地域小売店舗のマーケティングとか自治体の道路インフラに広がるのではないかと思います。
個人的には両親が地方にいるので、移動難民や通院とかコンパクトカーによるシェアリングや自動運転に期待しています。

自社の得意なところと協業したいポイント

鶴巻氏 我々の会社は2013年に創業しましたが、元々私はスズキでバイクの設計を行っており、その後トヨタグループに移って、電気自動車のコムスを旧型から開発しiシリーズの開発に関わりました。FOMMのベースとなっているのは「小さい乗り物の電動化」です。

ムーン氏 HEREの基本的な強みはマップを広範囲にカバーしているところです。今は高精度マップにシフトを進めています。これは自動運転を安全に行うためには必要なものです。一方、高精度マップを実現するためにはセンチメーター級の精度と継続的なアップデートが不可欠で、更新は毎日、場合によっては一時間ごとに行う必要があります。データを集めて保存し、分析することは非常に複雑で、そこに富士通の専門技術が必要となります。全体的なデータのやりとり、軽量化についても、富士通をはじめとし、コラボレーションしてきたいと考えています。

林氏 HEREは高度で複雑なプラットフォームのために、パートナーとの関係が必要ですが、タダで協力することはできないので、どういう形でビジネスを作ってフィーを分け合うのか気になります。

ムーン氏 ここはOpen Location Platformの中でも重要なところで「Give and Get」のモデルになっています。データを渡してロケーションインテリジェンスという形に落とし込みます。データには価値のあるものや消費の一環として価値のあるものがあり、明確にプラットフォーム上で合意をして、正しい量のデータを貰う形にしており、どういう風に使うかを指示しています。参加者全員で将来的な消費モデルやバリエーションモデルも決めておく必要があります。
Open Location Platformは、プロバイダーが持っている情報を組み合わせて相互に利用し合うことで、より多様で革新的なサービスの開発を実現するものと考えています。プロバイダーが開発したサービスやOpen Location Platformへのデータ提供により、位置情報を中心とした技術革新(レベニューの共有等)とマネタイゼーションを加速させるワンストップショップを目指しています。

菊田 富士通は自動車そのものを作るわけではないし部品も作りません。私たちの強みはソフトウェアとプラットフォームの先進テクノロジーを部品メーカー、車体メーカー、ITベンダー、サービサーと組んで、お互いの強いところで新しい事業モデルを作っていくところにあるでしょう。パートナーが富士通のテクノロジーを使う事によって競争力のあるビジネスモデルが作れるのではないかと思います。

本当に成功するのは大変だが、新しいことを推進するのに注意することは?

鶴巻氏 あきらめないことに尽きると思います。3.11の地震の時、車で逃げられなくて渋滞して津波が来て、亡くなった方がたくさんいたそうです。足が悪い方もいらっしゃるから、水に浮く電気自動車があれば役に立つのかなと思って創業しました。でも、思いだけではなかなか成功にはつながらなくて、苦しい思いをすることもあります。でも、あきらめない。世に出すまでは絶対にやる。「もし成功しなかったらどうしますか?」と聞かれることがありますが、「成功しないということは考えない」と答えるんです。うまくいくためにはどうするかと考える。そうすれば道が見えてくると思います。

ムーン氏 この市場や現在HEREが手掛けている自動運転、高精度マップ、EVの市場や環境の変化は非常に速く、大きなアナウンスメントが毎日のように発表されています。協業はどの会社も当然行っている状態で、共創と競合が同時に起こっているのです。重要なのは賢くパートナーを選ぶことで、そのためには3つの要素があると思います。それは「強い信頼を互いに持つ」、「詳細かつ現実的な目標を共有すること」、「緊急性を共有(市場の変化は激しく、目的をすぐに達成できない場合は他のパートナーと組むなど)」です。

林氏 相手を信用する、目的を共有する。ただ、状況が変わって目的が達成できないなら、パートナーを組み直すという事ですね。

ムーン氏 そうです。目的と言うのは一度設定しても、市場が変化するので調整をかけなければいけない場合もあります。市場が非常に急速に変化するならば、頑張っていても効果がないかもしれません。柔軟性が必要です。

菊田 私どもも協業をたくさんトライしていますが、うまく進んでいるのは2割ぐらいではないかと思います。なぜかと言うと、いろんなキッカケで一緒にやってみるかと言う話になって、PoC(試作・実証実験)ですべて効果が出るわけではありません。重要なのは、互いの強みを組み合わせてシナジーを出す。そのうえでビジネス設計をし、マーケットで受け入れられること。お客様がいないとビジネスにはなりませんから。強みを発揮すること、ビジネスプランの共有、お客様のニーズにマッチしていること、この3点をきちんと握れることがプロセスとしては最低限かなと思います。そして、鶴巻さんがおっしゃったように、ビジョンと強い思いを持ちながらリードしていく関係があれば、実業に進むのではと考えます。

「富士通とこういうビジネスを共有していく」と言うお話をお願いします

鶴巻氏 EVの課題はバッテリー関連が多く、鉛バッテリーは重いので外したりできないのですが、リチウムイオンで交換もしやすくなりました。EVを使う側の人の不安を解消できるのがバッテリー交換式です。
単に交換式で終わらせるのではなく、Battery Cloud® Serviceでいろんな情報を吸い上げても、大本になるビッグデータの解析は我々単独ではできないので、富士通が持っているSPATIOWL、バッテリーの劣化予測を一緒に使うことで、お客様に提供できる情報が格段に良くなってくるだろうと思っています。お客様がより良いEVライフを送れるようにということで、今回富士通との協業を決めました。

ムーン氏 HEREのコラボレーションの中心にあるのがOpen Location Platformですが、非常に構築が難しい。富士通と協力することで、確実に大量のデータを取得し、圧縮、アルゴリズムが含まれたAIの活用ができるようになります。プラットフォームの構築においてはSPATIOWLとZinraiの二つが大規模なプラットフォームの構築に非常に有用です。また、通信に関しても車とクラウドの間の通信も安全で効率よくなくてはいけません。OTAの通信も重要で、富士通はOTAの技術を持っていらっしゃいます。一緒に取り組むことで、最終的に多業種のユーザーを開拓することも出来ると思っています。

最後に一言ずつ皆様にメッセージを

鶴巻氏 自動運転が身近に実現されると思いますが、私としては自分で運転したいんです。でも自動運転は便利になって社会を変えていくと思います。その時には安価で自動運転を体験したいので、そのためにコンパクトモビリティが最適だと思っていて、その時に最先端に行けるように今からやっています。ですので、FOMMの事を頭の片隅に入れていただけると嬉しいです。

ムーン氏 自動運転とAutonomous Worldというのは私たちの将来に重要で大きな影響を与えます。私たちは高精度マップこそが自動運転の中心にあると信じています。センサーデータだけで自動運転が可能という会社もありますが、我々は違うと思います。先月も事故がありましたが、自動運転には危険も伴います。安全な自動運転を実現にするためにはすべての要素が備わっている必要があります。私たちは最新のテクノロジーとともに、最高の高精度マップを持っています。自動運転には、多くのコラボレーションが必要になってきます。ともに実現していきましょう。

菊田 お二方から非常に富士通の技術を評価していただいて嬉しいのですが、技術の進展も激しいので、富士通も継続的に技術とアルゴリズムを磨き上げて、他社をリードできるテクノロジーカンパニーになりたいと思っています。お集まりの方々ともモビリティでCo-creationができたらと思っています。ぜひご検討をよろしくお願いします。

林氏 皆様、ありがとうございました。

登壇者
  • HERE Technologies 副社長
    日本/ 韓国地域総責任者
    ムーン・J・リー 氏
  • 株式会社FOMM
    代表取締役CEO
    鶴巻 日出夫 氏
  • 日経BP総研 クリーンテック研究所
    主席研究員
    林 哲史 氏
  • 富士通株式会社
    執行役員
    菊田 志向