ブロックチェーンが電力会社のビジネスモデルを根本から変える

「屋根に設置されたソーラーパネルと蓄電池が、自らのビジネスに不利益をもたらす」と公共電力事業者が考えているなら、おそらくブロックチェーンは、それどころではないほど恐ろしい存在となるでしょう。

これからは、単に屋根の上にソーラーパネルを敷き詰める人の増加で、電力販売の機会が失われたり、発電網に打撃を受ける、というだけでは済まなくなるためです。ブロックチェーンという、あらゆる業界にわたって広がっている分散型のデジタル台帳は、電力取引にも利用されるようになり、しかも、公共事業者はそれに気づくことすらありません。その結果として、ソーラーパネルを設置している近所の住民からの安い電力の直接販売が進み、テスラの電気自動車に充電できる世界を想像してみてください。

もちろん、公共事業者の中にも、未来を見据えてブロックチェーンを上手に利用しようと試みているところは存在します。しかし、これに目を向けない他の事業者は、近い将来、新たな超地域密着型のエネルギー供給者に、ビジネスで敗北する可能性があります。このような新しい電力供給者は、無数のデータポイントをより安価に、かつ、より高速に管理できる強力なツール、すなわちブロックチェーンを活用するのです。

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進む公共電力サービスからの離脱
競争の激しい電力市場を持つカリフォルニア州の消費者は、プライベートセクターからの電力供給を好む傾向が強まっている。非公共サービスの提供プランと合致する電力需要の増加が加速しているのだ。

ナビガント・コサルティングのエネルギー事業部門責任者であるジャン・ブリンズ氏は、次のように述べています。「ブロックチェーンにより、インフラストラクチャ全体が変化を遂げています。公共事業者がこれを採り入れて、一定の効果を上げないない限り、彼らのビジネスは徐々に落ち込んでいくでしょう。」

ブロックチェーンは、ニューヨークで開催されるBNEFことブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスサミットなどでも、主要な話題の1つになっています。このサミットでは、エネルギー業界に属する何百もの会社が一堂に会し、その未来について話し合います。BNEFは、2040年までにゼロカーボン発電関連の投資が9兆ドルに上ると推定しています。この分野におけるブロックチェーンテクノロジーの台頭は、こういった投資に後押しされているというのが、ブリンズ氏の考えです。

ここでは、ブロックチェーンに関わる早期の取り組みの中から、知っておきたいものをいくつかご紹介しておきましょう。また、それらの取り組みによって、公共事業モデルがなぜ破壊される可能性があるのかも、見ていくことにします。

送電網の管理

バーモント州バーリントン市は今年中に、ブロックチェーンを利用して発電用資産を送電網全体で連携させる、最初の地方公共事業体になる可能性があります。同市は、電力の需要と供給のリアルタイム管理にブロックチェーンを応用する予定です。このように語ったのは、P2Pのエネルギー・プラットフォームを推進するオメガ・グリッドのCEO、キリアン・トービン氏です。同社はブロックチェーンソフトウェアのプロバイダであり、バーリントン市におけるシステム構築も支援しています。風力発電に余剰があるときには蓄電池への充電が行われ、電力価格が高いときには企業が自動的に電力需要を引き下げる、というような状況を想像してみてください。

このような取り組みは、公共事業者のエンジニアが行なっている電力の管理統制の職務を奪い、電力会社の重要な収益源の1つである設備更新の必要性の減少を招く可能性を秘めています。

トービン氏は、次のようにも述べています。「今は、小規模な公共事業者と、一部のマイクログリッドを使ってブロックチェーンの運用を始めているところです。しかし、今後は、送電網全体にわたって展開したいと考えています」

送電線が不要に?

ドイツの送電系統運用会社であるテネットTSOは、蓄電池メーカーのゾネン社およびIBMとの協業により、仮想の送電線を作り上げました。これはブロックチェーンを利用して、風力発電所からの余剰電力を、国内北部における数千もの家庭用蓄電池に蓄えることにより、これまで使い道が限られていた南部の電力を有効活用するというものです。

こちらの取り組みは、公共事業者の収益源の1つである、新しい送電線の必要性をなくしてしまう可能性があります。

近隣住民との取引

ブロックチェーンの試験プロジェクトの中には、取引に主眼を置いたものも数多くあります。エネルギー関連のコンサルティングファームであるLO3エナジーのCEO、ローレンス・オルシニ氏は、2016年、ニューヨーク市ブルックリンのマイクログリッドにおいて、初の太陽光による電力のP2P取引の推進に携わった人物です。その後は、同様のプラットフォームをヒューストンでも利用し、企業グループが公共事業者に頼らずに自身のリソースを使って、電力価格の振れ幅に対する「マイクロヘッジ」、つまりエネルギーコストの局所的な安定化を図れるようする計画を推進しています。

ブロックチェーンへの正しい理解

一方では、公共事業者にとっても、ブロックチェーンを役立てる方法があります。たとえば、東京電力はブロックチェーンを利用することで改めて消費者の心を掴み、顧客ベースで15パーセント近くもの落ち込みを回復させたいと考えています。この落ち込みは、日本政府が電力産業を小売競争の場として開放したことに端を発するものです。日本最大の電力供給者である同社は、トレンディという団体を設立しました。トレンディは、太陽光パネルと蓄電池のセットパッケージを用意し、その購入者によるP2Pの電力販売をブロックチェーンで管理するという戦略で、顧客獲得競争に名乗りを上げています。

しかし、勘違いしてはいけないのは、ブロックチェーンに飛びつきさえすれば、何でも解決するというわけではない点です。オルシニ氏ですら、「ブロックチェーンへの取り組みはまだ試験段階であり、この技術の最終的な利用形態は、初期の試みと異なったものになる可能性がある」と警告しています。

次のような同氏の見方は、この分野におけるブロックチェーンの捉え方について、的確といえるでしょう。「これは、革命でも破壊でもありません。しかし、重要な進化なのです。」

この記事は、ブライアン・エクハウスとデイブ・メリルの協力によって制作されました。

この記事の執筆者:クリストファー・マーティン(cmartin11@bloomberg.net)、ニューヨーク在住

この記事の担当編集者:リン・ドアン(ldoan6@bloomberg.net)、マイケル・ハイサ

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この記事はBloomberg向けにChristopher Martinが執筆し、News Credパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。