テクノロジーが製造業や食品サービス、農業の雇用に与える影響とは

米国のレジ係の数は、およそ350万人。その雇用が保証されているという幻想は、米国初のレジなしスーパー「アマゾン・ゴー」がシアトルで開店したことによって打ち砕かれました。このスーパーは非常に実用的だというのが、おおかたの見方です。アマゾン・ゴーで採用されているテクノロジーについて、アマゾンは「最先端のコンピュータービジョンと機械学習ソフトウェア」を採用したとしかけ説明していません。しかし、客がどの商品をバッグに入れたのかが正確に識別されるため、万引きが難しくなったことは確かです。スーパーの無人レジに対する従来の取り組みには、逆に時間がかかってイライラするセルフレジ式の売店のようなものが多いのに対し、この試みは成功しそうに見えます。

このテクノロジーが今後どこに向かうのか、まだはっきりしないところもあります。しかし、その存在自体が、自動化の進むスーパーマーケット業界の未来を示しているとはいえるでしょう。マシンへの依存によって人間の雇用に対する考え方が変わった業界は、農業や金融業を含めて数多くありますが、スーパーマーケット業界もそこに仲間入りしたわけです。こうした自動化の流れは、とどまるところを知りません。

次は御社がこうしたテクノロジーを採り入れる可能性もある中、ここでは、米国の雇用において、米国人約3,000万人分に相当する19.5%を相当する3つの巨大産業を取り上げ、自動化がもたらし得る影響をご紹介します。

・製造業

2017106日、ドナルド・トランプ米大統領はこの日を「全米製造業の日」と定めました。この動きは、自動車生産増から石炭製品の復活まで、米国の製造業を救うためにトランプ大統領が始動した数多くの計画の1つです。実際に、雇用者数の観点からも、この業界はまさに復活を必要としているように見えます。1980年には1,900万人を超える米国人が製造に従事していましたが、現在ではその数1,200万人にまで減少しているのです。

一方、2016年に北米の自動車メーカー各社がロボットに対して行った投資は、2億8,200万ドルを超えています。その結果、製造業の生産高は、2017年第3四半期に過去最高を記録しました。また、生産性の向上によって、こうした生産高を27年前と比較すると47%も増加したことになります。製造における自動化の出現によって、業界はより少ない人員でより多く生産できるようになりました。この結果は、従業員にとってはともかく、企業と経済の両方の観点からは好ましいものといえます。

しかし、ロボットの目的は製造の雇用を奪うことではありません。この点では、少なくとも、これまで以上の雇用が奪われることはないといえます。米労働省労働統計局の数字を見ても、製造業における雇用が増加傾向にあり、1998年に製造業における雇用が急激に落ち込んだ後、2010年には史上最低を記録したものの、それ以降は雇用が堅調に伸びているのです。では、こうした雇用者数が、1950年代から1990年代後半にかけての黄金時代と同じ水準まで戻ることはあるでしょうか? 答えは「ノー」です。とはいえ、人間とロボットの共同作業によって生産性が向上した結果、製造業は拡大し、各社は従業員とロボットの双方をより多く採用できるようになってきました。たとえば、現在、アマゾンでは、15,000体のロボット50,0000人の従業員と肩を並べて働いています。

・食品サービス業・小売業

「アマゾン・ゴー」は、小売環境でいかに自動化が利用者の体験を効率化できるかを示す好例です。これは、スーパーのエコシステムにおいては初の試みですが、レストラン業界に目を向けると、すでに、こうしたシームレスなセルフサービスモデルが成功を収めてた歴史があります。たとえば、イーツァは、2015年に創業された初の無人レストランの1つです。その後、このチェーン店は2店舗を残してすべて閉店してしまいましたが、同種のシステムは空港のテナントをはじめ、その他多くのレストランに採用されました。

いうまでもなく、このようなファストフードのビジネスモデルは目新しいものではありません。1991年まで、人々が外出先で食べ物を探すといえば、「オートマット」と呼ばれる自動販売機のようなセルフサービス形式のレストランに向かったものです。とはいえ、当時のセルフサービスを実現したテクノロジーは、スーパーでのセルフサービス式の売店とよく似てはいても、本当にシームレスな体験を実現できるほど高度なものではありませんでした。しかし、アマゾン・ゴーで実証されたように、次世代の無人体験が、旧来の無人レジにありがちな利用者との摩擦を強めるものではなく、新たな価値をもたらすことが明確になれば、人々は利用し始めるようになるでしょう。

そうなったとき、高級料理店とセルフサービス式のファストフード店の序列化はさらに進むことが予想されます。人間による給仕は当たり前ではなく贅沢なサービスとなり、人間とのコミュニケーションが楽しめることが価値を持つはずです。反対に、食事体験の提供という業務の中で最小限の役割しか果たしていないファストフード店の従業員は、こうした流れの影響を最も大きく受けるものと思われます。

・農業

自動搾乳からロボットによる温室レタスの収穫まで、農業はテクノロジーによって変革されてきました。また、そのほとんどが、農業向けIoT製品のセンサーから情報を得るようになっています。

ところが、このように自動化を大規模に進めていているにもかかわらず、この業界の雇用は過去10年間で急増しました。雇用者数は20万人を超え、2026年までにさらに数千人の増加が見込まれています。カリフォルニア州では、1996年から農作業者の賃金が50%以上上昇したほどです。また、生産需要が高まり続けている農業は、今後も大きな雇用源になるとみられ、特に自動化テクノロジーの開発、管理、分析の領域でその傾向が顕著になるでしょう。事実、米農務省による2015年の報告書では、農業課程の学位を持つ大卒者に対する需要が高いことがわかっています。さらに、同報告書では、米国で5年間に年間6万人近くの高技能農業従事者の求人が見込まれると予測していているのです。

一方、米国人は農作業に従事したくないと考えていることが多くのレポートで明らになりました。同時に、収穫作業の自動化が進むという傾向からは、人材が求められるのは肉体労働ではなく、高技能労働になることが予想されます。これは、大半の米国人にとっては朗報ですが、多くの移民や地方に住む低所得層の米国人にとっては就職難を意味するかもしれません。

・自動化よって失われる雇用と生まれる雇用

自動化の影響に関するこれまでの経済的解釈は、それが労働力の交代につながるというものでした。これは、業界間または職務間において、特定のスキルを持つ労働者の移動が進むことを意味します。一例として、銀行業でATMが窓口業務を引き継いだにもかかわらず、銀行における全体的な雇用は増えたことが挙げられるでしょう。アマゾンも、アマゾン・ゴーのような店舗が、従業員の存在を不要にするのではなく、その役割を変えるという理論を主張してきました。

しかし、このような楽観的な見方ばかりではありません。イーロン・マスク氏やビル・ゲイツ氏をはじめとする未来志向の人たちは、生産性が向上すれば雇用が減少する可能性があるという考えを持っています。その上で、この問題への抜本的な解決策の提唱も行なっていることは、注目してよいでしょう。そうした解決策には、UBIことユニバーサル・ベーシックインカムの考え方を導入して、個人が就労中か否かに関わらず世帯所得を保障する施策の実現や、ロボットへの課税などが含まれます。そして最終的に、労働の未来の大勢は、ロボット労働者よりも人間労働者を選ぶよう促すための政策や、企業に提供される何らかのインセンティブによって決まっていくものと考えられるでしょう。

ジャーメイン・チャステルは、AIを利用した世界初の知識市場であるニュートンXのCEO兼創業者です

この記事はVentureBeat向けにニュートンXジャーメイン・チャステルが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。