AIは人間にとっての脅威ではない、AIと共存する企業の未来

原子力関連のテクノロジーは、都市全体に電力を供給することもできれば、それを壊滅させることもできます。その意味では、AIにも似たところがあるといえるでしょう。社会全体に役立つツールとして使用することもできれば、害悪をもたらすツールにもなるためです。たとえば、AIが大量の失業者を生み出すというような憂鬱なレポートを誰もが読んだことがあると思います。それらのレポートでは、AIがを導入した業務で完全に人の雇用が奪われたり、AIの急速な進歩によって完全自律型の企業が実現するようなことが想定されていますが、それはまったくの誤りです。

実際には、自動化できる可能性の高い仕事でさえ、AIがその業務のすべてを担うことなどできません。ほとんどの仕事では、依然として一定の人間の知能が求められ、経営者はそれをできる限り活かしたいと考えるでしょう。ビジネス上の本当の課題は、人間をマシンに対抗させることではなく、職場と融合した「ソフトウェアロボット」が、生産性の低下や、従業員がより重要な業務に集中できない原因となる、極めて退屈な仕事をなくすことにあります。その意味で、AIは雇用を奪うというよりも、むしろ世界中のすべての労働者に仮想アシスタントを提供する存在であるといえるでしょう。それでは、仮想アシスタントを使って人間の生産性を高める方法をご紹介していくことにします。

・時間ばかりかかる仕事をRPAツールに任せる

データをコピーしては貼り付け、クリックしてドラッグ、分類して抽出‥‥そんな、回転椅子で左右に動くだけで、頭を使わずにクルーズコントロールでできるような作業に、いったいどれだけの時間が費やされているか想像してみてください。しかし、そんな現場に、疲れを知らない秘書のような「仮想」アシスタントがいれば、より戦略的でクリエイティブな業務に人々は専念できるようになるでしょう。つまり、仕事に対する満足度とパフォーマンスを高め、顧客満足度を向上させ、売上を増加させるための本来の能力を使えるのです。

人と同様に、仮想アシスタントの能力はさまざまです。完全なルーティン作業のほとんどは、最もシンプルなボットにできるタスクであり、その機能は本格的なAIというよりも、RPAこと「ロボティック・プロセス・オートメーション」と呼ばれるルールベースのプログラミングに基づいています。ビジネス現場におけるRPAは、容易に構成できる、軽量かつ柔軟な業務自動化ツールとしての利用が考えられるでしょう。RPAが適しているのは、一定の規則に従って構造化データを扱うような作業です。この場合の構造化データとは、たとえばWord形式ではなくExcel形式のファイルなどを指します。AIベースのソフトウェアボットが、大量のデータ処理やトランザクションを必要とする、銀行、保険、医療といった業界に特に適しているのに対して、RPAは、回転椅子でこなせるような作業をデジタル化し、ほぼあらゆる業界の単純な業務プロセスの質を高め、スピードアップするのに適しているといえるでしょう。

・多大な損失につながるミスを防ぐ

1つのミスが、評判を落としたり、顧客を失ったり、あるいは数十億ドル規模の損失をする事態を招くこともあります。もし、そのような多大な損失につながるミスを防ぐことができたとしたらどうでしょうか。ミスの発生につながりやすい大量のトランザクションの自動化や、ミスが付き物の人間をデジタル的なチェック機能と組み合わせて失敗が起こらないようにすることで、それは可能です。

たとえば、AIを利用した、よりスマートな仮想アシスタントならば、人々の仕事の妥当性を検証し、保険金請求や請求書を処理したりする多くのケースで、無数のドキュメントから特定のデータを抽出するような業務を自動化できます。これこそが、マシンラーニングを原動力とするAIの実用分野の1つであるコグニティブボット、つまり認知機能を備えたボットに適した仕事なのです。コグニティブボットは、ナレッジワーカーの実質的な仮想アシスタントとなり、判断業務のパターンを学習して担当者をサポートすることができます。

人間のアシスタントと同様に、コグニティブボットは、過去の業務内容の分析や、人々のさまざまな作業のやり方をリアルタイムで観察することによって学習し、処理の自動化を行います。たとえば、請求書から住所を抽出したり、電子メールメッセージから送信者の感情を読み取ったり、顧客サービスのチャットで質問の意図を見極めたりといった作業です。人々がいつもどおりの業務を行う間にも、コグニティブボットは人々から学習しつつサポートも行います。このサイクルは、ばらつきは見られてもパターンに従った業務である限り、それを引き継げるようになるまで続くのです。

・チャットボットで実現する、24時間体制でパーソナライズされた顧客サービスの提供

分野を問わずサービスを受ける顧客は、そのプロバイダに対して、いつでも、好きな手段で、数秒以上待つことなく連絡が取れ、説明しなくても理解してもらえることを期待しています。しかしこれは、顧客とサービスプロバイダの両者にとって儚い夢で終わることがほとんどです。迅速かつ正確で、パーソナライズされた対応を毎回実現するために十分な数の顧客サービス担当者を企業で用意するには、コストがかかりすぎます。そこで出番となるのが、VCAこと「仮想会話エージェント」、つまりチャットボットです。

チャットボットは、顧客サービス担当者と顧客のこれまでの大量の会話を読み込まれることで、テキストで顧客と会話し、質問をやりとりして、意図を見極めるためのトレーニングを行います。たとえば、請求書の状態を確認したり、住宅ローンの申し込みのために過去の銀行取引明細書を送信するといったことです。チャットボットを業務の一部に採用した企業は、6ヶ月以内に最大25%の能力向上が見込まれます。その結果、顧客サービス担当者は、人間の知能が本当に重視される場面において、より適切な、よりパーソナライズされたサービスを提供し、顧客に驚きと喜びを提供することに専念できるようになるでしょう。

・より少ない労力でより多くをこなす

現代の企業にとってのAIの存在は、いわば1900年代の企業にとっての電気のようなものです。企業が成功する上で、業務へのAIの導入が不可欠となるのは、時間の問題といえます。また、AIのせいで生産性や人間らしさが減ると考えるような人も早々にいなくなることでしょう。このインテリジェントなオートメーションの新たな波は、これまでに企業と人の両方の成長を妨げてきたような制約を取り払うものです。それは、人間がより高みを目指せるよう後押しする仮想アシスタントを、社内の一人ひとりと結び付けることによって実現されます。そして、退屈な仕事はなくなり、作業の精度は上がり、人間が行うには煩雑なだけの業務が自動化されていくのです。このような仮想アシスタントのサポートのおかげで、地球上の誰もが一夜のうちに2倍、あるいは3倍の生産性を手に入れる日のことを想像してみてください。実のところ、そんな想像はすぐに必要なくなり、現実にそうなった世界を目の当たりにすることでしょう。

アダム・デバインはワークフュージョンのマーケティング担当責任者であり、市場開発、製品およびブランドマーケティング、戦略的提携を指揮しています。

この記事はVentureBeat向けにAdam Devineが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。