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悲願のJ1制覇!選手たちを支えたフィジカルトレーニングの秘策(前編)

【未来を創るチカラ SPORTS×ICT編 Vol.2】~川崎フロンターレ中村憲剛選手×篠田洋介フィジカルコーチ対談~

第一線で活躍するトップアスリートと選手・チームを支えるスタッフとの対談を通じて、「SPORTS×ICT」の可能性を探る新シリーズ。
第2回目に取り上げるスポーツは「サッカー」。J1王者「川崎フロンターレ」の中村憲剛選手と篠田洋介フィジカルコーチに、悲願のタイトル獲得を成し遂げた強さの秘訣、ICTを活用した最新トレーニング、スポーツの未来などを伺います。

悲願の優勝から新シーズンへ突入。重圧をはねのけ、さらに強く

2017年12月2日、ホームスタジアムの等々力競技場で逆転優勝を決め、喜びを爆発させる川崎フロンターレの選手たち。

――昨シーズンはクラブ史上初のJ1制覇を成し遂げた川崎フロンターレ。優勝した時はどんなお気持ちでしたか?

中村 なんでしょうね......言葉で言い表せないような感情がありました。クラブ創設から21年、僕自身も15年ここにいて、やっと獲得できたタイトルでしたから。今まで8回準優勝で、あと一歩のところで優勝を逃してきて、一体どうしたら獲れるんだろうって考えて、考えて、でも勝てなくて......。とにかくいろんなものを背負ってやってきたので、やっと獲れたという安堵感もありましたし、もちろん嬉しさもありましたし、清々しさもありました。

篠田 最後まで諦めず、本当に選手一丸となって勝ち取ったタイトルだと思います。憲剛と同じように、僕もすごく嬉しかったですし、ほっとする気持ちもありましたね。

優勝が決まると、嬉しさのあまり涙が抑えきれず、ピッチに突っ伏す中村憲剛選手。

――タイトルを獲得してから、チームの雰囲気やご自身の気持ちなどに何か変化はありましたか?

中村 自分たちはそこまで変わってないと思うんですけど、周りの見る目はとにかく厳しくなりましたね。一回負けただけで、まぁまぁ叩かれますから(苦笑)。でも、それはやっぱり、チャンピオンならではだと思います。あとはやっぱり、対戦するチームが今まで以上に自分たちを研究し尽くしてくるようになったというか、倒すんだっていう気概をものすごく感じますね。ただ、そうしたプレッシャーをはねのけて勝つことで自分たちがまた力をつけて、さらに強くなれるんじゃないかなと思います。今年も優勝して、あの景色を見たいです。本当に最高でしたから。

新コーチとともに挑んだ、フィジカルトレーニング改革

練習場でチームメイトとともにフィジカルトレーニングに励む中村憲剛選手。

――タイトルを獲得できた要因や川崎フロンターレの強さの秘訣はどこにあるとお考えですか?

中村 昨シーズンは自分たちの哲学でもある「攻撃的サッカー」を貫けたし、守備も強化して、より隙がない戦い方ができたと思います。

篠田 フロンターレの強さの秘訣は、トレーニングに対する選手の高い意識やチームの一体感にもあると思います。僕は昨シーズンから加入したのですが、それまでフロンターレには5年ほどフィジカルコーチがいなくて、ウォーミングアップも個人個人でやっていたと聞いています。そんななか、僕のアプローチを選手たちがどう受け止めるかなという思いもあったんですが、最初のキャンプから誰一人手を抜くことなく、タイトル獲得という目標に向かって、細かな練習にも一生懸命取り組んでくれました。

対談中の中村憲剛選手。時折冗談を言うなど、ムードメーカーな一面がのぞく。

中村 久々にチーム全員でフィジカルトレーニングをするようになって、すごく新鮮でしたね。僕も年齢が年齢だし、正直、フィジカルトレーニングってあまり好きじゃないので、最初は「ものすごい鬼コーチだったらどうしよう......」と不安もあったんです(笑)。でも、篠田さんはすごく気さくだし、説明が丁寧でわかりやすい。選手の体調とか試合までの日程とかを見ながら今のチームにベストなやり方を選んでくれますし、どんなことも気軽に話せます。僕だけでなく、うちの選手はみんな篠田さんのことを信頼していると思いますね。

ケガをしないことでコンディションを高め、勝利を引き寄せる

選手たちとウォーミングアップを行う篠田洋介フィジカルコーチ。和やかなムードが印象的。

――篠田コーチが加入された背景には「ケガ人を減らす」というチームの課題があったそうですね。

中村 はい。それまでうちは毎年ケガ人に悩まされていましたし、僕自身もケガで試合に出られないということがありました。試合中は激しいボディコンタクトもあるし、それで起こるケガはしょうがないんですけど、うちは肉離れなど、筋肉系のケガが多かったので、篠田さんが来てそこにアプローチしてくれたことは、チームにとってすごくプラスになりました。シーズン後半はケガ人も減りましたし、フィジカルトレーニングの効果が出たんじゃないかと思います。

ケガをしない身体づくりの重要性について語る、篠田洋介フィジカルコーチ。

篠田 フィジカルコーチとして、僕が大事にしているのは「ケガをしない身体づくり」です。ケガをしなければしっかりと練習ができるから、自然とコンディションがアップする。そうすれば試合でのパフォーマンスも上がって、チームの勝利を引き寄せることができると考えています。あとは、選手が楽しく、笑顔でトレーニングすることも、一つのケガ予防だと思っているので、くだらない話をしながら、やることはしっかりやるというのを心がけていますね。

中村 練習中の篠田さんはいつもニコニコしながら指示を出すんですけど、内容はかなりキツいんです。うちら選手は篠田さんに完全に騙されてますね(笑)。でも、楽しみながらキツい練習がやれるというのは、すごくありがたいことだと思っています。

第一線で活躍しつづけるためには、自分の身体との対話が不可欠

チーム最年長となった今もなお、ゲームメーカーとして試合で活躍しつづける中村憲剛選手。

――中村選手は現在37歳ですが、歴代最年長(36歳)でJリーグ年間最優秀選手賞を獲得したり、J1通算400試合出場も達成するなど、今も第一線で活躍しつづけています。常に高いコンディションをキープするために、何か心がけていることはありますか?

中村 いや、特にないです。その時その時でベストだと思うことをやっているだけで......

篠田 本人はこう言ってますけど、憲剛は自分の身体と対話ができる選手です。自分の身体を客観視して、今どんなコンディション管理が必要かを考え、それをきちんと実践している。だからフィジカルが強いんです。これは現役を長くつづけている選手に共通して言えることでもありますね。憲剛の場合、見た目がゴツいわけではないし、試合を見ていてもフィジカルが強いイメージはあまりないかもしれないですけど、それは経験を積んで状況に応じてパワーをコントロールできるようになったということ。今、チームで瞬発力やジャンプ力などを測定する体力テストをやっても若手を抑えて上位にきますよ。僕は密かに憲剛のことを「隠れフィジカルプレーヤー」って名付けています。

中村 隠れフィジカルプレーヤー! その表現、いいですね。

撮影中に談笑する篠田洋介フィジカルコーチ(左)と中村憲剛選手(右)。どんなことも気軽に話せるのは信頼関係があるからこそ。

篠田 年齢を重ねても持久力というのはある程度キープできるんです。でも、サッカーに必要不可欠な瞬発力や筋力というのは、トレーニングで常に身体に叩き込んでおかないと衰えてしまう。若い時はちょっと休んでもすぐに回復できるけど、年齢を重ねると回復までの期間が長くなる傾向にあるので、自分の身体としっかりと対話をして、必要なケアを毎日少しずつ継続してやっていくことが第一線で活躍しつづけるために、とても重要なことだと思います。

後編では、フィジカルトレーニングやコンディション管理におけるICTの活用、理想とするサッカーの未来像について語り合います。

後編へ続く)

中村憲剛
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。
2003年、中央大学から川崎フロンターレに入団以来、クラブひと筋16年目を迎えるベテラン。日本代表でも活躍し、2016シーズンにはJリーグ最優秀選手賞を受賞。日本を代表するサッカー選手。試合の流れのなかで対戦相手の穴を見つけ、卓越したテクニックと戦術眼でその急所を突く名手。今年、37歳を迎えるが、勝負どころで発揮される老獪なプレーは衰え知らず。昨シーズン、念願だったJリーグの初タイトルを手に入れた。クラブを支えてきた人々の思いを背負い、新シーズンもプレーする。
篠田洋介
1971年9月19日生まれ、栃木県宇都宮市出身。
アメリカの大学、大学院で医学、運動生理学やスポーツ心理学などの基礎を学び、指導者としてのキャリアをスタート。2004年から横浜F・マリノスでフィジカルコーチを務める。長年の実務で培った経験を生かし、昨シーズンから川崎フロンターレのフィジカルコーチに就任。選手からの絶大なる信頼を受け、チームと選手のコンディションをサポートしている。