小売り業界の明暗を分けるオムニチャネル。デジタル時代を勝ち抜く戦略とは?

デジタル経済への移行により、従来のビジネスのあり方が一変しました。各企業はデジタル市場における消費者の好みを常に把握しようと奮闘しています。ゆっくりと、しかし確実に消費者習慣は変化しつつあり、顧客との接点を販売店任せにしてきたブランドが長年守ってきた牙城は、顧客と直接的なつながりを持つブランドによって揺らぎ始めました。事実、インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー(IAB)の報告書は、「顧客とダイレクトな接点のあるブランドは、アメリカ経済を140年近く支配してきた、そうでないブランドの地位をじわじわと奪いつつある」と指摘しています。

昨今のデジタル市場での競争は激しく、どのような企業であれ価格戦争に勝ち続けるのは不可能に近い状況です。この市場は参入障壁が低いため、独占できる商品はまれで、もし顧客が特定企業のサービスや品質に満足できなければ、代わりはいくらでもあります。そこで今どきの小売業者は、顧客との関係構築を強化することで、競争に勝ち抜こうとしているのです。この戦略に基づいて成功を目指す上で必要なのは、オムニチャネル型の小売システムが持つ機会の増大について理解を深めることであり、さらに、様々なチャネルの微妙な違いを考慮したうえで、流通とマーケティングに関する適切な戦略を練ることも重要となります。

顧客と小売業者に対するオムニチャネルの影響

毎年、多くの企業が消費者習慣の調査に無数のリソースを投資していますが、その目標は常に「個人が購入を決断する決め手となるもの」を把握することにあります。この問いに対する明確な答えを見つけるのはほぼ不可能ともいえますが、これまで数々の調査が、顧客がどのような経緯で購入に至ったかを示す「カスタマージャーニー」に関する洞察を小売業者に示しています。ある程度の人口統計があれば、オンライン店舗や実店舗などの特定チャネルに対する好みはわかりますが、そのような個人の大まかな好みとは無関係に1つ明らかなことは「ほぼすべての消費者が、商品や状況に応じてさまざまな小売チャネルを流動的に移動する」という事実です。

従来、複数の流通チャネルを持つ小売業者は、それぞれのチャネルを異なる事業として展開してきました。実店舗から始めた企業は、オンラインでのプレゼンスの必要性を感じ、eコマースを専門とする営業部門を新たに立ち上げたりしています。同一の商品でも、チャネルごとに独立して管理を行う「サイロ化戦略」では、オンライン店舗と実店舗における消費者のショッピング体験が異なっていました。

ところが、消費者はオンライン店舗のユーザーインターフェースやWebデザイン、あるいはストア構成にかかわらず、このような状況に問題を感じてきました。その背景には、オンライン、対面、ソーシャルメディアを問わず、すべてのやり取りが途切れずに連携することへの期待感があります。それを実現できてこそ、真のオムニチャネル体験なのです。

2018年の時点で、まだそれらのチャネルを連携できていない小売業者は、その作業を優先させています。こうしたオムニチャネルアプローチを実現しなければ、チャネル間でのシームレスな消費者体験を保証できないためです。中でも特にイノベーティブな企業は、オンラインフォーラムへの参加からソーシャルメディアでの短かいビデオクリップの共有まで、既存顧客や見込み客がどこで時間を過ごしていようと、常に強力なプレゼンスを発揮しています。より多くの情報を求めて、消費者がこれらの接点のいずれかに触れると、チャネルにかかわらず同じ体験が得られ、チャネルを切り替えながら途切れることなく企業とのやり取りができるのです。つまりオムニチャネルアプローチとは、対面、オンライン、ソーシャルメディアを問わず、消費者とのエンゲージメントやつながりを維持することを目指すものといえます。

デジタルネイティブブランドにとってのオムニチャネル

過去20年間の消費者動向における目覚しい変化の1つは、オンライン購入の劇的な台頭です。この増加は、実店舗が存在せず、オンラインでのみ運営される多様な新しい小売業者によって支えられてきました。例を挙げれば、バーチボックス、ダラー・シェイブ・クラブ、ブランク・レーベル、ワービー・パーカー、キャスパーなどです。こうしたブランドは、「デジタリーネイティブ」な企業と呼ばれています。

デジタリーネイティブなブランドは、立ち上げの時点から消費者体験と関係構築に重点を置くことが特徴です。そして、オンラインとソーシャルメディアで強力なプレゼンスを構築していきます。しかし、さらなる成長を狙うのならば、どこかの段階でオムニチャネルアプローチの必要性を検討しなければならないでしょう。ネット上での物品購入が増え、アメリカ人の51%がオンラインショッピングを好むとはいえ、残りの49%は実店舗でのショッピングを好むという調査結果もあるように、実際のチャネルの好みはほぼ二分化しているのです

こうしたオムニチャネルの問題は、デジタリーネイティブなブランドにとっての課題となっています。そうしたブランドは、実店舗型の小売業者にまつわる複雑さと費用を回避することに主眼に置くビジネスモデルを推進してきたため、それを含むオムニチャネルの構築が難しいためです。しかし幸いなことに、核となるビジネスモデルから大きく離れることなく、顧客のニーズを満たすための解決策もいくつか存在します。

一部の企業は、厳選した実店舗を開設して、オンライン体験を実体験に変えることを選択しました。それらのショップは商品を販売する一方で、それ以外にも、一般的な小売業者よりはるかに多くの価値を提供しています。その意味では、むしろ、オンラインプレゼンスを体現した場所を実店舗として生み出しているとさえいえるのです。たとえば、アロ・ヨガの実店舗体験は、ヨガのウェアや用品を購入するだけに留まりません。他のチャネルのスタイルと雰囲気を反映しつつ、ヨガ教室やコンブ茶バー、ラウンジエリアなどを併設したものになっています。その結果として、堅固なオムニチャネルプレゼンスを確立できるというわけです。

一方、デジタリーネイティブな小売業者のなかには、既存の販売店と提携して、自社の顧客向けにオムニチャネル化の機会を生み出すものや、ポップアップストアの開設など、対面販売による流通方法を立ち上げているものもあります。消費者が居る場所や、ショッピング方法の好みにかかわらず、消費者のニーズに対応することに重点を置いているのです。

小売業の本質は何年たっても変わらないとしても、消費者が購入する商品や方法、理由は絶えず変化しています。メイシーズの常勤会長兼CEOを退いたばかりのテリー・ランドグレン氏は、最近のポッドキャストで、「オンラインコマースとオフラインコマースの境界はますます曖昧になってきている」と語りました。彼は、かつて従来型の実店舗企業とオンライン専門のデジタリーネイティブな企業が、フィールドの両サイドで試合を行っていたといいます。「現在、試合はフィールド中央にずっと近いところで行われています。そこがお客様のいらっしゃる場所です。これを、小売対オンラインという見方で分けようとするのは間違っています。なぜなら、お客様はそのように考えてはいないからです。お客様は、すべてのチャネルを通じてシームレスで統合的な購入体験が得られることに期待しています。お客様は、チャネルについては考えません。どこでも商品を買える、ということだけを望んでいます。」

だからこそ、賢明なブランドは、現在のデジタル経済で生き残り、成功を収めるために、オンライン店舗、実店舗、ソーシャルメディアをつなぐ完全なオムニチャネルモデルの実現に向け動き出しているのです。

この記事は元々ザ・ピクスリー・ブログに掲載されたものです。

この記事はBusiness2CommunityのRachel Roderickが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。