ジーンズ製造へのタブレットとレーザー導入でデニム業界の常識を覆す。リーバイス®のイノベーション

サンフランシスコ、テレグラフ・ヒル地区の外れの静かな通りに建つ赤れんが造りのビルは「ブルー」であふれ返っています。88年の歴史ある建物の外側にはいかなる看板も掲げられてはいませんが、「リーバイス®ジーンズ」を手がける創業165年のブルージーンズの生みの親、リーバイ・ストラウス社はそのビルを「ユーレカ・イノベーション・ラボ」と名付けました。内部はデニムで埋め尽くされ、壁際に並ぶフックに吊り下げられたジーンズもあれば、コンクリートの床に整然と並べられたものや、金属製のレールや木製のテーブルに掛けられたものもあります。その「ザ・アメリカン」ともいえる発明品を踏まずには、3メートル歩くこともできないほどです。調査会社のユーロモニターは、世界市場において同社のジーンズが果たす来年の貢献額を、およそ1,430億ドルと予測しています。

2017年に49億ドルの収益を上げてジーンズ販売で世界をリードするリーバイ・ストラウス社のユーレカ・ラボは、株式非公開企業である同社にとって、文字通りの研究・開発拠点です。ラボに展示されているデニムの大半が市場にまだ投入されていないモデルの試作品であるとはいえ、この施設から生まれる最新のイノベーションを形や色だけで判断するのは賢明とはいえません。ファッション通ならばご存知のように、たとえ幅広パンツが再び流行っていることが注目に値してもです。実は、その最新のイノベーションは、これまで手作業に頼っていた多くの技法から離れ、デニムを着る人が好む色落ち加工やダメージ加工を施すのに必要な化学薬品の数を大幅に減らすことで、ジーンズの製造工程の自動化を進めるという、まったく新しい経営モデルにあります。その工程の鍵を握るツールは「ソフトウェア」と「レーザー」。結果的に同社は、その代表的な製品のデザインや製造、販売にいたる流れを徹底して見直すことになりました。

「これは、当社の経営モデルの全面的改革といえます」と、リーバイ・ストラウス社の最高サプライチェーン責任者であるリズ・オニール氏はいいます。「つまり、製造から在庫管理、持続可能性、ひいては当社の販売方法にまで大きな影響を及ぼすような、エンドツーエンドのデジタル環境の構築です。」

サンフランシスコにあるリーバイ・ストラウス社のユーレカ・イノベーションラボで、デザイナーが描いたジーンズのデジタルスケッチ

同社が将来を見据えて、「未来によって導びかれた計画実行」の頭文字から命名された「プロジェクトFLX」と呼ぶこの新たな取り組みは、3つの要素から成ります。1つ目は、高解像度タブレットコンピュータと社内開発のソフトを使って、同社のデザイナーが新しい完成モデルのイメージをスケッチできる「完全なデジタルデザイン工程」です。これまでのソフトは扱いにくく、デニムに求められるきめ細かなデザインを作成できなかったため、実際の印象を確かめるには試作品を作る必要がありました。一方で、新たに開発されたソフトは、デジタル的に完結した試作イメージを確認できる高い性能と、そのデジタルファイルを製造会社に送信して量産できる高い精度を備えています。これにより、ジーンズの製造において、かつては数か月かかっていた仕上げ加工のデザインと開発の工程を数週間から数日にまで短縮できたといいます。

「デザイナーはタブレットを使用してデザインを作成し、まだ存在していない製品を、写真のようにリアルなイメージで確認できます」とオニール氏。「そして、デザインを変更することも好きなだけできるのです。穴の位置を移動したり、汚れ加工を増やしたり、減らしたり、「ヒゲ」と呼ばれる前ポケット周辺のシワ状の色落ち加工を数センチ上下に動かすことも簡単に行えます。」

2つ目の要素は「レーザー」です。店舗で買ったジーンズのダメージ加工やエイジング加工が海外の職人の手作業によるものかもしれない、といわれたら驚かれるでしょうか。しかし、それはまぎれもない事実です。21世紀の今でも、多くの工場で、染められたばかりの真新しいデニムを男女の職人が力任せにブラシをかけたりこすったりして、使い込まれた風合いを出す作業を行っています。また、特定の仕上げ加工のために調合された数千種類の化学薬品のいずれかを使って、さらなる効果が加えられたりもするのです。

「それらは、固有のレシピに基づいて行われています」と、リーバイ・ストラウス社の技術革新担当副社長であり、ユーレカ・ラボの仕上げ工程担当リーダーでもあるバート・サイツ氏は説明してくれました。「実際にこれは、製造といっても料理に近いものです。50年の歴史を持つジーンズを研究し、手作業とマシンを組み合わせた15から20もの手順に従って、ビンテージルックを再現するレシピの草案を作成できる、経験豊かなスタッフも抱えています。」

同社の新しい工程では、スペインのジーノロジア社製のレーザーを使用して、たった3つの手順でジーンズの仕上げ加工を行います。この技術は衣類に視覚効果を付けるために衣料業界で長年使われてきたものですが、その利用範囲が限られていたため、手作業による補完もずっと続けられてきたのです。しかし、同社は、この技術を徹底して利用することに成功し、ジーンズ1本の仕上げ加工に20~30分かかっていたところを90秒にまで短縮しています。

「デニム界にとってこれは大きな前進です」とサイツ氏。「さまざまな効果をすべてレーザーひとつで行うことなど、かつて誰が想像したでしょうか。」

サンフランシスコのユーレカ・イノベーションラボで仕上げ加工を施すジーンズを準備する、リーバイ・ストラウス社の技術革新担当副社長、バート・サイツ氏

サンフランシスコのラボで行われる同技術の実演は、そのメリットを明らかにするばかりか、ちょっとした見ものでもあります。同社の技術者が4つの「基調」色の1つが使われたライトブルーのジーンズを、レーザーマーキングマシンに吊り下げます。その様子は、射撃練習場のようです。そして、保護メガネを装着し、レーザーを起動すると、数回にわたってレーザーがジーンズに照射され、カモフラージュデザインやヒゲ加工が施されるほか、毎回炎を上げながらいくつかの穴が開けられていって、デニム表面の加工が終わたときには、ひとすじの煙が立ち上ります。

新たな取り組みの最後の要素は「市場投入の加速」です。これは前述の2つの要素があるからこそ実現しました。作業着として生まれたブルージーンズですが、今では流行のファッションアイテムであり、製品のデザイン・製造期間の大幅な短縮によって、同社は最終的なスタイルの決定を意図的に遅らせ、在庫の増加を最小限に抑えることができます。

「これで、売れる分だけ作る製造方式へと移行できます」とサイツ氏は説明します。「何か月、あるいは何年も前から製品を大量につくり置きしてそれを売ろうとするのではなく、売れ筋を確認してからそれに応じて生産できるようになるわけです。」

つまり、もしも地域ごとの消費者の好みが変わったことに気付けば、最寄りの工場から短期間のうちに新たなモデルを送り出して、従来のやり方よりも何か月も前に製品を棚に並べることができることになります。これまでは、6ヶ月間に渡る1シーズン向けに1,000種類を超える仕上げ加工を用いるようなサプライチェーンを滞りなく稼働させるために、同社が2年前から準備する必要がありました。

オニール氏は次のように指摘します。「業界全体における重大な課題の1つは、製品の市場投入を加速させることです。デニムはリードタイムの短縮が非常に難しい製品の1つであり、今でも基本的には変わっていないのです。」

サンフランシスコにあるリーバイ・ストラウス社のユーレカ・イノベーションラボで、レーザーによる仕上げ加工が施されるジーンズ

リーバイ・ストラウス社は厳選された製造会社と共に、新しい工程の試験運用に着手しており、2020年までの全面的な世界展開を目指しています。これは、ユーレカ・ラボで働く30人ほどの研究スタッフから見れば、このアイデア工場から生み出された名案の1つに過ぎないかもしれませんが、同社の経営陣にとっては、1世紀以上に渡って守られてきたジーンズの製法に対する初めての本質的な変更となるはずです。

「全社一体となって取り組むために、大きなマネジメントの変更が必要でした」と、藍色に染まった両手をこすり合わせながらサイツ氏は言います。「鍵となった要素は、大胆さとリーダーシップだったのです。」

この記事はFORTUNEのAndrew Nuscaが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。