AR、VRから、時代はMRへ。UIはどう進化するのか

過去数十年にわたり、コンピューティングとインターネットは、ノートPCやタブレット、スマートフォンといったフラットな2次元画面の制約を受けてきました。しかし、MRこと複合現実が台頭し、社会が2D画面のその先へと進むのも時間の問題となっています。ユーザーインターフェースはフラットなガラス画面ではなくなり、私たちが生活の場として動き回っている、物理的な3次元空間となるでしょう。

そうなれば、現実世界に重ね合わせて表示されるMRスタイルのインターネットに対応するため、ユーザーインターフェースのデザインを劇的に変える必要がでてきます。筆者は、ARVRのデザイナー4人にインタビューを行い、その進化がUIのデザインにどのような変化をもたらすのか、それぞれの見解や予想を伺いました。

複合現実のUIには2Dインターフェースの要素が残る

人間とコンピューター間のインタラクションは、当初からハードウェアの機能や制約によって定義されてきました。ハードウェアには、キーボードやマウス、スマートフォン、タブレットのほか、それらのデバイスと関連付けられたあらゆるジェスチャが含まれます。3D空間のインターフェースはテクノロジーと対話するためのまったく新しい手段となることが考えられますが、それは2Dインターフェースの最良の側面を完全に捨てさることを意味するのでしょうか。

アドビのUXイノベーション担当デザインエバンジェリストであるヴァル・ヘッド氏は、MRでは、2Dと3D両方のインターフェースの長所を生かすことができると考えています。同氏の説明は次のとおりです。「未来のMRスタイルのユーザーインターフェースでは、新旧両方の手法から得られる効果を利用するようになるでしょう。たとえば、『チルト・ブラッシュ』のようなVRアプリケーションでは、ユーザーは3Dパレットを片手で握り、ジョイスティックのスワイプでパレットを切り替えることができます。各パレットのメニューは基本的に2Dなので、その点では、現在私たちが使い慣れているメニュー操作と変わりません。一方、パレットからこれらの2D画面をなくして空間に貼り付けることで、ユーザーの目の前に浮かせ、アクセスしやすくすることも可能です。これは、人間とコンピューター間のインタラクションにおける2D要素を3D環境に移植しつつ、ユーザーには直観的で使いやすいものとするにはどうすべきかという1つの見本といえます。」

ヘッド氏は、この考えをMR環境のインターフェースアニメーションに採用しています。「3D空間のキャンバスで使用されるアニメーションは2D画面におけるものとは異なりますが、ユーザーにフィードバックを示し、ユーザーがどこに向かうべきか把握できるようにするという目的は一緒です。ところが、移動する物体については、物性、重量、間隔、タイミングの精度を高めて表示したり動かす必要があります。というのは、インタラクションが実際の空間内でリアルタイムに行われるため、より現実に即したものにしないと違和感が生まれてしまうのです。」

MRでロケーションベースのストーリーテリングや娯楽が可能に

MRは現実世界での生活に架空のコンテンツをもたらし、大きな社会的影響を及ぼすでしょう。このことは『ポケモンGo』の成功からもよく分かります。『ポケモンGo』では、何百万人もの人々が1日何キロも街中を歩き回り、デジタルモンスターを見つけようとしました。このことから、ロケーションベースのまったく新しいタイプのストーリーテリングや娯楽が日常生活で可能になると考えられます。

没入型エンターテイメントを制作するILMxLABのコンテンツ&プラットフォーム戦略担当ディレクターであるモエン・レオ氏の意見は次のようなものです。「MRは、私たちがスマートフォンでコンテンツを利用するのと同じように、人々が1日を通して気軽に利用するものになると考えられます。しかし、それらの体験は、地下鉄の椅子に座っているときや、スーパーに行くときなど、キャラクターが現実の世界に飛び込んできて、ユーザーや環境とインタラクションするような、より生活に密着した没入型の物語として感じられるでしょう。」

レオ氏は、本物の没入型MRをコンテンツを作る過程で、クリエーターはこれまでにない課題に直面するだろうと指摘します。「MR体験においては、特に音声操作が重要になるでしょう。画面上でのタップ操作やスワイプ操作ができなくなるため、コミュニケーションやユーザー入力の手段として音声認識の重要性がますまる高まるはずです。たとえば、AR環境においてスター・ウォーズのダース・ベイダーと会話する場合、AIがこちらの言うことを理解できなければ、ユーザーはあっという間に完全な没入感から引き離されてしまいます。いずれにせよ、ダース・ベイダーは、同じ質問を2度するようなことは許してくれないでしょうけれど。それはさておき、これまでの動画ならユーザー自身が画面上で展開される物語への違和感を無視して現実だと思い込むことも普通にできましたが、現実空間で起こるARの没入体験では少しのミスも許されないのです。」

企業による採用が普及の糸口に

人間は、3D空間を処理して、脳内にそのモデルを構築できるまでに進化しました。MRはこうした流れの自然な延長として、個人生活と企業内の両方で、テクノロジーをより直感的に利用するための手段となることが期待されます。

IBMのデザインリーダーであるアルフレッド・ルイズ氏は、ARデータの視覚化と探査を可能にするユーザー体験の実現に取り組んでいます。そして、MRを消費者にとって日常的な存在とする上で企業が果たす重要な役割について、次のように解説します。「フラットな画面でもデータを表示することは可能ですが、3次元の拡張空間でデータを操作できれば、固有のパターンをより簡単かつ効率的に見つけられるようになります。当社のテクノロジーを利用すれば、データサイエンティストは文字通りデータの中に入り込んだり周囲を歩き回るようにして様々な角度から検討し、調べることができるのです。特に膨大なデータを扱って洞察を得るようなときには、大きな違いが生まれるでしょう。」

ルイス氏は、この点についてさらに次のように続けます。「当社が直面する1つの課題は、ARに対応した企業向けアプリケーションが現時点ではまだ少ないことです。その原因としては、このテクノロジーがまだ発展途上にあることや、ARがいかにシームレスに企業のワークフローと調和するかについての理解が得られていないことが挙げられます。しかし、テクノロジーの成熟度が高まれば、最終的に自然で直感的なユーザー体験が実現し、マスマーケットへの普及が進むはずです。」

倫理的デザインの重要性の高まり

ネットフリックスの人気番組『ブラック・ミラー』では、ユビキタステクノロジー時代におけるプライバシーやセキュリティ、そして倫理観が、現代のきわめて大きな懸念事項として描かれています。テクノロジー関連の深刻な倫理的問題はいくつも残されており、それらは2018年を迎えた今もまだ解消されていません。こうした状況の中で、人々が顔にカメラを着けて歩き回り、常に環境をスキャンする社会が実現した場合の、私たちの暮らしはどのようなものになるのでしょうか。

VRとARに対応したハードウェアの開発を手掛けるルメノラのCEOであるローズ・アン・ハフト氏は、この点について次のように説明します。「2012年にメガネ型のARデバイスであるグーグルグラスが発表された頃には、人間の生活、そしてそのプライバシーへの欲求に対する影響は考慮されていませんでした。これらのヘッドセットは、人の能力を補完してくれる一方で、人のあらゆる行動を善悪問わず捉えることができてしまいます。しかし、この潜在的な力は、個人の医療情報に関するプライバシーを守るためのHIPAA法や、犯罪が行われたと信じるに足る十分な理由だけで令状なしに捜査や逮捕が行える推定原因の観点から、多くのマイナス要素も生み出しました。そのため、これらのデバイスを装着することに対して、人々の間に無意識の抵抗感が生じても無理はなかったのです。」

画像: ルメノラ

そして、ハフト氏は次のように続けました。「ルメノラでは、社会の妨げではなく支援となれるように、AR / VRデバイスにおける倫理的デザインを重視しています。そこには、早期疾患を予防する機能や、聴覚・視覚障害者向けの支援機能、ロボットに匹敵する能力を人に提供する機能なども含まれます。長期的に見れば、ARとAIを組み合わせたテクノロジーが、人々の仕事を奪うのではなく、職場で従業員を支援できるようになるでしょう。社会全体に恩恵をもたらすARの未来を考えるとき、倫理的デザインこそが重要な違いを生むと考えています。」

マイケル・パークは、ARテクノロジーの構築、探索、共有を可能にするため永続的なSDKを手掛けるスペーシャル・キャンバスCEO兼共同創設者です。この記事は、UXデザイナーのケリー・リャンと共同で執筆されました。

この記事はVentureBeatのMicheal Parkが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。