AI がスポーツエンターテイメントにもたらす破壊的変化とは?

スポーツ映像の進化が、実際のマラソンのトレーニングに励むアスリートにも、長時間にわたるテレビ番組の連続視聴に備える一般的なスポーツファンにも、恩恵をもたらす可能性が出てきました。スポーツ映像は、万人受けするために需要が高く、しかも関連データが豊富なことから、ビデオ配信分野におけるイノベーションの最有力候補となったのです。たとえば認知テクノロジーは、視聴者のエクスペリエンス向上や広告収入の最大化につながるものと目されています。さらに、AIテクノロジーは試合自体を一変させる可能性があります。映像関連の認知テクノロジーが進化することで一番得をする立場にあるのは、次の3つのスポーツ放送関係者でしょう。

スポンサー:数ではなく質の定量化にAIを活用

スリー、ツー、ワン。ホイッスルが鳴り、クォーターバックが、60ヤードの距離から逆転を賭けたロングパスを投げました。カメラはボールを追い、弧を描いて飛んだボールはレシーバーの手に収まりますが、そのすぐ向こうにはスポンサーのバナーが見えています。試合は、最終的にレシーバーがエンドゾーン内でボールを見事キャッチして同点となりましたが、メディアバイヤーにとってそれ以上に重要なのは、視線の先にスポンサーのロゴが映し出されたことでした。

試合の最もエキサイティングな瞬間にスポンサー名が映し出されることにより、広告の投資対効果が高まることは、驚くにあたりません。視聴者が注目している可能性が高いだけでなく、その場面がハイライトシーンのリプレーやソーシャルメディアの共有によって、結果的により多くの視聴者にリーチするからです。では、広告を出稿したブランドが、そうしたスポンサーシップ購入のインパクトを実際に定量化するにはどうすればよいのでしょうか? ビデオアナリティクスとAI技術があれば、それが可能になります。

まず、認知テクノロジーにより、この場合はスポンサーのロゴのように特定のオブジェクトを探すべくアルゴリズムを調整することで、映像内のブランド広告を検出し、定量化できるようになりました。これによってスポンサーは、広告が、いつ、どのくらい露出しているかを特定できます。また、AIテクノロジーを利用してソーシャルメディアフィードや解説者の口調、観客の声といった情報を分析すれば、視聴者や会場の興奮度を測ることも可能です。これらの分析結果を総合すると、スポンサーは、広告露出のインパクトを測定できます。たとえば、番組放送中に特定の試合の見せ場の70%でブランドのロゴ全体が露出していたことを測定でき、その結果から投資として成功したかどうかを判断するなどの分析が可能となるわけです。

一方で、AIテクノロジーを利用すると、そうしたエキサイティングな瞬間を予測できるほか、広告露出に最も効果的な瞬間に関し、知見に基づいて事前に助言を得ることも可能です。たとえばIBMは、AIテクノロジーを測定ツールとしてだけでなく、多くの視聴者にリーチし、収益を最大化することを目指すスポンサーの戦略的アドバイザーとしても役立つように強化しています。

番組制作チーム:名場面のリプレー

解説者が、「まるで1996年のプレーオフの第4試合のようですね」などとコメントするのをよく耳にします。解説者は、引き続きその状況を説明しますが、視聴者は映像で見直すことができません。しかし、もし視聴者を数秒以内にタイムスリップさせて歴史的なプレーを追体験させることが可能だとしたら、どうなるでしょうか。AIテクノロジーを利用すれば、関連コンテンツを効率的に検索して、現在の放送に過去の番組を統合することも可能になります。

番組制作チームが、膨大なスポーツ映像のアーカイブの中から特定のクリップを手作業で探し出すのは、とても手間がかかるはずです。AIならば、非構造化状態にある映像データの意味を理解することができ、この問題を解決してくれます。AIテクノロジーによってメタデータを抽出し、それに基づいてビデオを検索できるようにすれば、アーカイブ資産の発見・活用が実現するわけです。番組制作チームは、簡素化されたワークフローに従って関連コンテンツをほぼリアルタイムで特定し、よりダイナミックで総合的なエクスペリエンスを視聴者に提供することができるようになるでしょう。

さらに今後、AIテクノロジーは、単なるハイライト映像や歴史的比較のための関連コンテンツの検索にとどまらず、ハイライト映像自体をリアルタイムで編集できるように進化することもありえます。このアプローチは番組制作チームの時間節約につながり、結果としてその時間を、視聴者のエンゲージメント向上といった重要な活動に振り向けることも可能となるはずです。

コーチ:高度なデータと実用的な知見で負け知らず

場面は、アメリカンフットボールチームが最後のタイムアウトを取り、フィールド内で作戦会議をしているところです。選手は指示を待っています。しかし、それはコーチからの指示ではなく、自チームと相手チームの癖を理解できるよう調整されたAIからの指示です。AIテクノロジーの進歩を考えると、こうした試合途中の作戦会議が現実になるのもそう遠くないでしょう。

AIテクノロジーを利用すれば、きわめて長時間に及ぶ映像でも素早く分析することができ、膨大なデータセットの中から複雑なパターンを識別することが可能となります。たとえば、選手の長所と短所を評価するような分析はAIで対応できており、コーチが登録選手の陣容を固める際に役立っています。とすれば、選手の成績のほかにも、それらの知見を生かして戦略の立案を支援できるようになる日も近いでしょう。マシンラーニングによって、試合後の分析結果は次の試合の予測分析へと形を変え、チームの司令塔に計り知れない恩恵をもたらします。もしも、相手チームが第3クォーターにどんなパス回しをしてくるのかを予測できれば、より効果的なディフェンスプランを練ることができるからです。

さらに、認知テクノロジーの進歩と共に、より具体的でリアルタイムに近い予測が可能になるでしょう。将来的に、コーチはリアルタイムの予測分析を利用して、相手チームの各選手の次の動きをその都度見抜くことができるようになっていくはずです。

AIテクノロジーは、番組制作チーム、スポンサー、コーチがスポーツ映像を最大限に活用するうえで、主導的役割を果たしつつあります。改めてまとめると、スポーツネットワークは、競合企業に打ち勝つために、AIを利用して魅力あふれるエクスペリエンスを視聴者に提供することが可能です。また、チームの司令塔は、AI機能を利用して試合戦略を改善し、スポンサーもブランドのリーチを拡大できます。AIテクノロジーは、映像戦略の新たな領域を切り開くことにより、実際にも比喩的にも「ゲームのあり方」を変え、スポーツファンに新時代の到来を告げようとしているのです。

David Clevinger氏は、IBMクラウドビデオのプロダクトマネージメント/ストラテジー担当シニアディレクターです。

この記事はIBMとVentureBeatのDavid Clevingerが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。