LPWA対応で電池交換が不要な世界最小IoTデバイス誕生!

すでに世界人口の2倍以上存在するIoTデバイス

モノのインターネットとも言われるIoT(Internet of Things)、その要となるのがデータを収集してサーバ上に送るIoTデバイスです。総務省がまとめた「平成29年版 情報通信白書」によると、すでに世界中に200億個近くのIoTデバイスが存在し、様々なデータを収集してインターネットを通じてサーバにデータを送っています。

近年のIoTデバイスには、低消費電力のBluetooth技術であるBLE(Bluetooth Low Energy)がよく利用されています。IoTデバイスは利便性やコストの面から、基本的に長期間動作する事が要求されるので、少ない電力で動作するBLEが広く採用されていたのです。
ところが、このBLEには、通信距離が短いという弱点があります。例えば、屋外や広い工場にIoTデバイスを配置して、温度や湿度などをセンシングしてデータを収集するといったケースでは、10m程度しか届かないBLEは通信距離が短すぎます。
長い距離での無線通信が可能な技術としては、携帯電話やスマートフォンで使われているセルラー無線(現在は3GやLTE)がありますが、多数のIoTデバイスの無線通信に用いるには通信料金が高額になってしまいます。

低電力で遠くまで届く「LPWA」通信規格

そこでIoT向けの通信技術として脚光を浴びているのがLPWAです。LPWAとは「Low Power Wide Area」の略で、低消費電力で長距離通信を可能にする無線技術です。富士通研究所では、太陽電池のみの電力で動作する電池交換不要な世界最小のセンサーデバイスの試作を行い、実証実験では基地局から約7km離れたデバイスから温度や湿度のデータを取得することに成功しました。LPWAの技術を活用すれば、広い範囲に配置したデバイスのデータを、多額のネットワーク構築費用をかけずに容易に取得することができます。

LPWAの弱点を克服した2つの技術

ただし、このLPWAにも弱点があります。低消費電力でありながら、ゆっくり送信するのがLPWAの特徴ゆえに、「同じ量のデータを送信するために必要な電力」で考えると、じつはBLEの約1500倍となってしまいます。このためBLEで利用可能な従来の電源制御技術では、LPWAの送信に必要な電力を太陽電池だけで確保できません。そこで、富士通研究所は太陽電池のみで動作させるための2つの技術を開発することでこの問題を解決しました。

一つは太陽電池の特性を考慮した送信タイミングの決定です。温度によって送信のタイミングを変えることで、途中でLPWAが必要とする電圧を下回らないようにしています。

もう一つは電圧の監視技術です。温度センサーの動作に必要な電圧が確保できたかを太陽電池の発電電力よりも小さい電力で監視しているため、確実に温度センサーを動かすことが出来ます。

この二つの技術を組み合わせ、温度による太陽電池発電のバラツキを吸収し、電力を効率よく利用することで、電気を蓄える蓄電素子を半減させることに成功。LPWAの規格の一つであるSigfoxで通信を行う小型モジュール(82x24x6mm)を試作しました。実証実験では10分間に一度の温湿度計測7日分のデータを照度4000ルクス(曇りの日の屋外程度の明るさ)で約7km先の基地局に送信。このデータを富士通のIoTデータ活用基盤サービス「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」を経由して、データを可視化する事が出来ました。

SigfoxはLPWAの中でもすでに世界36か国で商用サービスが始まっており、日本でも京セラコミュニケーションシステム株式会社がサービスを提供。2020年3月までにサービスエリアを全国に展開する事を発表しています。

今回の富士通研究所の開発によって電源の確保が難しい屋外環境でもセンサーデバイスを設置するだけで測定データの取得が行えます。もちろん、電池交換が不要な構造なので長期間メンテナンスフリーで運用が可能となります。

今後は実用化に向けた実証実験を進め「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」や富士通フロンテック株式会社のセンサーソリューションデバイスとして2018年度の製品化を目指しています。また、さらに小型化した機器の技術開発も行っていきます。