ボットは人間の生産性をどう高めるのか

最近は、秘書がいるという人をあまり見かけなくなりました。そんな中で、私(筆者)の下には新しい助手がやってきて大変満足しています。彼女はエイミーという名前で、素晴らしい女性です。職歴はまだ2~3年ですが、飲み込みが早く、とても信頼できます。

エイミーが手伝ってくれる主な仕事は、会議のスケジュール調整です。電話会議の日取りを決めるやりとりは煩わしいものですが、セッティングする必要があるときは、エイミーにメールのコピーを送るだけで、後は彼女がやってくれます。スケジューリングに関する私の希望を誰よりもよく知っていますし、今はもう私の仕事のスタイルを覚えているので、彼女を信頼して同僚や顧客との連絡も任せてるようになりました。エイミーは、私の会社であるISGの他の1,300人のスタッフと同様に、大切な同僚なのです。

言い忘れましたが、エイミーは人間ではありません。彼女はエックス・ドット・エーアイという企業が開発したAIアシスタントのボットです。しかし、彼女がいない一日など想像できません。ここでエイミーを紹介したのは、業務のインテリジェントな自動化が企業においてどう活用されているかを示すよい例だからです。実際、仕事の補完や意思決定の支援のために、ボットを信頼して利用する人が増えています。

キーワードは「補完」と「支援」です。エイミーは、秘書に取って代わるわけではなく、秘書が行う仕事を補完するか、場合によっては引き受けるだけです。エイミーは、会議のセッティングという日常的な作業を引き受けることで、重役補佐である私の時間を、より重要な仕事に振り向けられるようにし、生産性向上を実現してくれます。

このようなAI活用法の有効性は、当社の調査でも裏付けされました。ISGが今年、企業幹部およびITリーダーを対象に実施した調査では、「自動化やAIに対する自社の取り組みは、役割の置き換えではなく仕事の自動化に重点が置かれている」という項目に対し、68%の回答者が「そう思う」または「非常にそう思う」と答えています。さらに、「自動化やAIのおかげで、スタッフがより重要な仕事に取り組めるようになる」という項目に対しては、4分の3近くの回答者が「そう思う」または「非常にそう思う」と回答しました。

実際にも、タスクベースの自動化は、企業のサポート業務全体で進行中です。IT部門では、仮想エンジニアが人間のシステムエンジニアに代わってウェブサーバーを再起動しています。財務部門でも、業務自動化用のボットが経理事務員に代わって顧客との契約を行っていますし、顧客サポートセンターでは、チャットボットが担当者と組むことによりヒューマンエラーに起因するミスを減らしているのです。

企業が役割の置き換えよりもタスクの自動化に重点を置いているのは、次の2つの理由によります。

まず、技術的理由です。真の汎用AIというものは未だ存在せず、その実現はずっと先の話と考えられています。つまり、現在応用されているインテリジェントな自動化のテクノロジーは、カバー範囲が絞られているということです。別の言い方をすれば、AIは「まだ」人間ではありません。そのため、現状のテクノロジーを応用しても、あるプロセスから学んだ知識を別のプロセスに応用するのは非常に困難です。これは、各ボットや仮想エンジニア、そして、それらを支えるアルゴリズムが、限られた特定の仕事を達成することに焦点を絞って開発されていることを意味します。

もう1つの理由は専門化です。ほとんどの企業では、従業員はいくつかの公式的な役割と非公式的な役割を持っており、それらの役割は多くのタスクから構成されています。一方で、大手のITプロバイダやビジネスプロセスのアウトソーシングビジネスを展開するBPOプロバイダには、そのようなタスクレベルでの専門的な業務を提供できるだけの能力があり、これが、レイオフの発表が増え始めた主たる理由の1つなのです。そうしたレイオフは通常、個人の職務遂行能力が原因とされていますが、多くの場合、インテリジェントな業務自動化の導入がきっかけであるのが現実といえます。新たなタスクがそうした自動化によって置き換えられる中で、高度な専門職は各自のスキルをさらに高めていかなければなりません。それが無理ならば、職務遂行能力の欠如を理由に解雇されるからです。

したがって、本当に短期的なコスト削減を望むのなら、外部のサービスプロバイダに依頼し、そのインテリジェントな業務自動化のインフラストラクチャを生かせば、達成できるでしょう。しかも、その効果は、業務移管のグローバル・デリバリーを主眼とする第3世代のアウトソーシングプロバイダと契約した場合であっても、実に大きなものとなる可能性があることは事実です。

しかし、レイオフを避けつつインテリジェントな業務自動化を自力で推進する場合には、直接のコスト削減を中心に投資対効果検討書を作成「しない」ことをお勧めします。そのようなコスト削減は、アウトソーシングによるものとは異なり、短期間では達成できない可能性が高いためです。それよりも、新しいデジタルの助っ人を活用して、同じ人員数でより多くの仕事をこなすことにより実現する「生産性向上」や、タスクが増えても従業員を補填せずに済むという意味での「コスト回避」、そして、通常は人間が休む時間帯にボットが働くことで生じる「仕事の効率アップ」、さらには、ボットの処理がすべてデジタル的に記録されるために可能な「コンプライアンスの徹底」といったメリットに重点を置くべきなのです。

スタントン・ジョーンズ氏は、世界的な技術調査顧問会社であるISGのディレクター兼首席アナリストです。

この記事はVentureBeatStanton JonesとISGが執筆し、NewsCred パブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。