日本一連覇!アメフトの魅力を切り拓く、頭脳とテクノロジーの融合(前編)

【未来を創るチカラ SPORTS×ICT編 Vol.1】富士通フロンティアーズ 中村輝晃クラーク選手×藤田智ヘッドコーチ

第一線で活躍するトップアスリートと選手・チームを支えるスタッフとの対談を通じて、「SPORTS×ICT」の可能性を探る新シリーズ。
第1回目に取り上げるスポーツは「アメリカンフットボール」(以下アメフト)。日本一の強豪チーム「富士通フロンティアーズ」の中村輝晃クラーク選手と藤田智ヘッドコーチに、アメフトの魅力、チームの強さの秘訣、データを活用した戦術づくり、ICT活用とスポーツの未来などを伺います。

格闘技のようなダイナミックプレーと戦術の駆け引き

©FUJITSU SPORTS/NANO Association

――本場アメリカでは絶大な人気を誇る国民的スポーツ、アメフト。日本での人気も年々高まり、今年1月に行われた日本選手権「第71回ライスボウル」も熱狂的な盛り上がりをみせました。「一度観るとその面白さにはまる」という声も多いアメフトですが、おふたりはどんな点に魅力を感じますか?

藤田 アメフトは、格闘技と球技の要素を併せ持ったスポーツで、ダイナミックなプレーと、戦術の駆け引きが魅力だと思っています。ルールが複雑で難しいというイメージがありますが、まずは一度試合を観てほしいですね。ごひいきのチームや選手を見つけて、「オフェンスがボールを進めて点を取れるか」というところに注目すると、ちょっとずつルールも分かってくると思います。

藤田智ヘッドコーチ。京都大学時代はオフェンスの司令塔であるQB(クォータバック)として活躍した。

中村 全く違う体格や能力を持った選手が一つのチームをつくっていて、それぞれの役割がきっちりと決められているところも、アメフトの特徴だと思います。他のスポーツから転向してくる選手も結構いますね。僕自身、中学までひとつのスポーツを本気でやったことはなかったんですけど、高校でアメフトと出会って、のめりこみました。格闘技っぽい激しいプレーもあるし、複雑なルールや戦術なんかもすごく新鮮で。あんなに飽き性だった自分がまさかここまで続くとは......という感じです(笑)。プレーする側にとってもすごく面白いスポーツですね。

中村輝晃クラーク選手。パスキャッチをメインに行うオフェンスのWR(ワイドレシーバー)として活躍中。

藤田 アメフトチームは、いわゆる"スペシャリスト"の集まり。一人がオールマイティーである必要はないんです。身体が大きい、足が速い、キックがうまいなど、ある一つの能力が優れていれば、はまるポジションが必ず見つかる。他のスポーツから転向してきても活躍できる可能性が十分にありますし、適材適所の配置で未開発の才能が開花することもあるので、コーチとしてもそこは面白いですね。

戦術だけでは勝てない。プレーを成功させる選手の意識合わせ

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パスを正確にキャッチする中村輝晃クラーク選手。WRは相手チームのディフェンスを振り切るスピードとステップワーク、競り勝つための高さが要求されるポジション。

――藤田コーチはチームの現場責任者であるヘッドコーチを、中村選手はオフェンスのWR(ワイドレシーバー)というポジンションを務めていますが、それぞれの役割、やりがいを教えてください。

藤田 ヘッドコーチは、試合の戦術を立てて、練習のメニューを決めて、チーム全体を取りまとめるのが仕事です。といっても、アメフトは選手、スタッフ合わせて総勢100人以上が一緒に活動するスポーツ。オフェンスチーム、ディフェンスチーム、それと、キックなどを専門とするスペシャルチームに分かれているので、細かな判断はそれぞれのユニットごとに任せています。やりがいとしては、やはり戦術が大きなウエイトを占めるということでしょうか。ただ、いくら優れた戦術を立てても、試合で選手のスキルやチームワークが十分に発揮されなければ勝てません。ヘッドコーチとしては、頭脳とフィジカルの両面からアプローチして目の前の課題をクリアしていくことが求められるわけですが、これがなかなか難しくて......。面白いというより、しんどいなと感じることの方が正直多いんですけどね(笑)。でも、やはり試合に勝って選手や周りの方が喜んでくれるのは非常に嬉しいですし、それは大きなモチベーションになっています。

中村 WRは、敵陣に切りこんでいって、相手のブロックをかわしながら確実にパスをキャッチするのが役割です。ロングパスをキャッチできれば大きく前進して点に結びつく可能性が高まるので、試合の流れを変えることができます。オフェンスに貢献していることが目に見えて分かるので、それがやりがいですね。

――第71回ライスボウルでは学生チャンピオンの日本大学フェニックスを大差で破り、見事日本一に輝きました。QB(クォーターバック)のコービー・キャメロン選手から中村選手へのロングパスが決まるなど、ビッグプレーも炸裂しましたが、試合を改めて振り返ってみて、勝因はどこにあったと思われますか?

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第71回ライスボウル優勝時の集合ショット。総勢100人以上が活動する大規模なスポーツであることが伺える。

藤田 最初はちょっとモタモタしましたが、徐々に調子を上げて、ビックプレーがきっちり決められたのがよかったと思います。僕らが想定していた以上に日大が素晴らしいチームで、なかなか思うようにいかない場面もありましたが、いい勝ち方でシーズンを終えることができて、ほっとしました。

中村 キャメロンとはもう4年もやっているので、どこにどんなタイミングで走りこんでほしいか、わかるようになってきています。アメフトは「戦術のスポーツ」って言われていますけど、選手同士の意識合わせができていないとプレーは成功しないので、そこは日頃の練習でも大事にしているところですね。

外国人選手の加入でチームの"スタンダード"が上がった

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第71回ライスボウルで日大を破り、見事日本一に。試合後、選手たちに胴上げされる藤田智ヘッドコーチ。

――第71回ライスボウルを制し、2年連続3度目の日本一に輝いた富士通フロンティアーズ。その強さの秘訣はどこにあるのでしょうか?

中村 日頃から藤田ヘッドコーチに言われているのは「スタンダードを上げる」ということですが、特に大きいのは、キャメロンをはじめ、外国人選手が加入したこと。本場の高いレベルを持った選手と日々練習をすることで、自然とその"スタンダード"が上がった気がします。

藤田 外国人選手の加入で、特定のポジションだけでなく、チーム全体のレベルが一気に上がったというのはあります。外国人選手は生活習慣や文化の違いもあり、チームに馴染むのに時間がかかるのですが、うちは実業団チームで、選手もスタッフも同じ会社に勤めているので、普段からしっかりとコミュニケーションが取れている。そこが団結力につながっていると感じますね。土日だけじゃなく水曜昼にも全体練習ができたり、専用グラウンドがあったりと、練習環境にも恵まれています。

今に集中し着実に積み重ねていく。それが進化へとつながる

練習グラウンドでトレーニングを行う中村輝晃クラーク選手。基礎をつくるための細かな練習も欠かさない。

――高みを目指して進化しつづけるために、いつも心がけていることはありますか?

中村 当たり前のことですが、基礎をおろそかにしないことです。あとは、自分自身で気持ちをきちんとコントロールしてモチベーションを維持すること。正直、調子の悪い時もあるんですけど、そういう時にどれだけ前向きに取り組めるかで練習の質が変わってくるので......。藤田ヘッドコーチは選手のメンタルもケアしてくれているというか、言葉で伝えるのがとても上手で、一言一言が心に響くんです。関西の方なので冗談も面白いですし(笑)、その時の状況に合わせて、ビシッと引き締めたり、リラックスさせたり、チームのいい雰囲気をつくってくれます。

中村輝晃クラーク選手(左)と藤田智ヘッドコーチ(右)。こうした対談は初めてながら、話は大いに盛り上がった。

藤田 面と向かって言われると照れますね(笑)。僕から見た中村選手は闘争心のある選手。もともとスピードにも恵まれていますし、本人は嫌いでしょうけど、基礎をつくる細かい練習もちゃんとやれているので、最近はすごく安定した力がでるようになったと感じます。

中村 ありがとうございます!

藤田 基礎が大事なのは、コーチ陣も同じです。私もオフには必ずアメリカに行って最新のトレーニングや戦術を学ぶようにしていますし、他のスタッフもそれぞれスキル向上のために勉強しています。大事なことはシンプルで、いかにチーム全員が"今"に集中し、自分のできることを着実に積み重ねていくか。それが進化につながっていくと考えています。

後編では、アメフトの戦術やICT・AIの活用、今後の目標や夢などをお聞きします。
後編へ続く)

富士通フロンティアーズ ワイドレシーバー(WR)
中村輝晃クラーク
1988年9月4日生まれ、神奈川県出身。
幼少期はフランスで育ち、中学から日本に在住。
駒場高校からアメリカンフットボールを始め、高校時代はワイドレシーバー(WR)とディフェンスバック(DB)を兼任。
日本大学へ進学し、ワイドレシーバー(WR)に専念。
大学時代には学生オールジャパンにも選抜される。
卒業後2011年富士通フロンティアーズに入部。
2014年の初優勝、2016年、2017年の2連覇に大きく貢献。
また、2017年日本社会人選手権(JXB)ではMVPを獲得。
日本を代表するワイドレシーバー(WR)として活躍中。
富士通フロンティアーズ ヘッドコーチ
藤田智
1967年9月2日生まれ、愛知県出身。
東海高校から京都大学へ進学し、アメリカンフットボールを始める。
学生時代はクォーターバック(QB)として活躍。
卒業後は京都大学コーチに就任し、1995年に日本一を経験。
その後、アサヒ飲料チャレンジャーズヘッドコーチに就任し、2000年にチームを日本一へ導く。
富士通フロンティアーズ創部20周年を迎えた2005年からヘッドコーチとなり、2014年、10年目にして念願の日本選手権を制覇。
また、2016年、2017年と2連覇を達成。2018年は3連覇に挑む。