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共働き世帯に必須の「保育所入所」をAIが公平・瞬時にマッチング

各家庭の希望を最大限に・・・膨大な手間と時間がかかる「保育所入所選考」

子どもを保育所に預けたくても預けられない、いわゆる「待機児童問題」は、ニュースでも取り上げられ、昨今の社会問題となっています。厚生労働省によると、専業主婦の世帯と共働き世帯の数は1992年に逆転し、その後共働き世帯が年々増加(注1)。共働きをするにあたって、子どもの預け先として一般的な「保育所」が、どこも満員状態なのが原因です。

待機児童問題と並んで大変なのが「保育所入所選考」です。保育所の入所に関しては、各家庭により様々な希望が出てきます。「きょうだいを同じ保育所にしてほしい」「上の子が入れなければ下の子優先で」「きょうだいが一緒に入れなければ辞退する」――このような各家庭の希望を最大限に叶えるために、自治体では毎回、膨大な手間と時間をかけて試行錯誤を繰り返しています。例えばさいたま市では、7,959名の児童を311施設に割り当てるために、20~30名の職員が多くの日数をかけて選考しています。

子どもを保育所に預けるのは、共働き世帯にとって切実な問題です。限られた入所枠を、いかに公平に、迅速に、きめ細かに割り振るか。九州大学と富士通では、この問題をAI(人工知能)の力で解決する技術を考えました。

「ゲーム理論」を使ってわずか数秒で解決

今回開発したのは、人間が試行錯誤することにより判断している複雑なルールについて、各家庭の優先順位に沿って「全員の希望を可能な限り叶える」割り当て方を、AIが自動で判断するマッチング技術です。この技術には、社会における利害が必ずしも一致しない人々の関係を合理的に解決する「ゲーム理論」という数理手法を用います。

例えば、定員2名の保育所2つの保育所(A、B)に、2組のきょうだい(合計4人)を割り当てるとします。保育所の入所割り当てパターンは6通りあります(図1)。子どもは「全員保育所Aへの入所を希望」していますが、「きょうだいが別々の保育所に入るよりは2人同時に保育所Bに入ることを希望」しているとします。この時、子どもの優先順位を守りながら、この希望を最大限満たすことが入所判定のルールとなります。

図1 「ゲーム理論」を用いた入所判定(割り当て3が最適解)

"子ども②"にとっては、優先順位の高い子ども①によって自身の希望が叶わない場合は諦めるしかありませんが、優先順位の低い"子ども③"により希望が叶わない場合はルール違反となります。このように、優先順位と希望を同時に考えて、ルールの違反がないかをチェックします。また、きょうだいの優先順位が離れているケースでは、ルールを満たす"割り当て3"、"割り当て4"のうち、優先順位の最も高い"子ども①"の希望が叶えられる"割り当て3"が最適であると考えます。

今回は定員2名、保育所2つでの判定例ですが、実際には数千名の入所申し込みに対し同様の選考を行うのですから容易ではありません。

このたび、さいたま市の申請者約8,000人の匿名化データを用いて技術の検証を行った結果、さいたま市の独自ルールに基づく複雑かつきめ細かい割り当てについて、従来20~30名の職員が非常に多くの日数をかけて行っていた作業を、数秒で算出することができました。これは、今まで人により多くの手間をかけていた入所選考と同等の結果であり、完璧に近いものと考えられます。

組織内の人材配置や、作業員のスケジュール策定など、様々なマッチングへ

本技術が実用化し、AIにより数秒で選考結果を導き出すことができれば、保育所入所の割り当てについて、自治体職員の負担が大幅に軽減されるでしょう。また、申込者へ結果を早期に通知など、住民サービスの向上も期待できます。一方、保育所の入所希望者は、早めに入所の可否を知ることができ、職場復帰などに向けて余裕を持った計画が立てられます。

当技術は、富士通の提供する自治体向け保育業務支援システム「MICJET MISALIO(ミックジェット・ミサリオ)子育てソリューション」のオプションとして製品化されています。さらに、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」の1つとして、保育所入所選考業務のみならず、組織内の均質な人材配置を行うマッチング、作業員のスケジュールマッチングなど、様々なマッチングへの適用を目指します。