「森ビル×富士通」の共創が生み出す"場"のチカラとは

森ビル様と富士通は、共創のための場として2014年、六本木・アークヒルズ サウスタワーに「HAB-YU(ハブユー)platform(以下HAB-YU)」を開設。以来、新規ビジネスの機会創出や、未来の街づくりにつながるアイデア創造の場として地域住民の新たなコミュニティづくりに貢献しています。【Fujitsu Insight 2017「AI/IoT活用」セミナーレポート】(文中敬称略)

人と地域と企業を結ぶ「HAB-YU」

森ビル株式会社 タウンマネジメント事業部 アークヒルズエリア運営グループ 運営部 田中 巌 氏

田中 森ビルが理想とする都市は、緑に覆われた超高層都市「Vertical Garden City」―オフィス、住宅、商業施設、文化施設などの都市機能が徒歩圏内で高度に複合した、豊かで効率的なコンパクトシティです。そして、都市はつくるだけでなく、手塩にかけて育てていくことが重要です。住民同士の交流を育み、街全体を活性化する。「開発」から「街の運営」までを「ひとつの街づくり」として考えています。

例えば、アークヒルズでは毎週土曜日に「つくり手に会える」をコンセプトに、ヒルズマルシェという地域の人々の交流を図るイベントを開催し、街の活性化に取り組んでいます。富士通さんから初めて、何か新しいことを生み出そうという未来思考のフューチャーセンターを作りたい、と聞いた時、大きな期待を抱きました。それが形になったのが今の「HAB-YU」です。

森ビルの理想とする街「Vertical Garden City」森ビルはこのような都市をつくるだけでなく、「育む」ことを大切にする。
富士通株式会社 マーケティング戦略本部
ブランド・デザイン戦略統括部 平野 隆

平野 「HAB-YU」は、人(Human)と地域(Area)と企業(Business)を多様な方法で結ぶ(YU)ことによって新たなビジネスや価値の創出を目指す、共創のためのフィールドです。イノベーティブな街づくりを実践されてきた森ビル様と、ここを起点にイノベーションの創出に挑戦する人々のコミュニティを生み出していこうとする富士通とで2014年に当初2年間の研究活動としてスタートしました。企業、文化事業、地域活動とのコラボレーションイベントやワークショップを実施している他、共創を加速させるための空間やツール、最先端テクノロジーサービスの開発と提供を行っています。これまでに約1200回ものソーシャルイベントやアイディアソンなどワークショップを開催し、お客様との共創や企業内の共創、都市と地域をつなぐ共創の場という位置づけで活動してきました。

アイデア創造の場 HAB-YU

事例:デザイン思考で未来のありたい働き方を描く 「トヨタ自動車サービス事業部様」

平野 破壊的な技術革新や価値観の多様化が進み、社会やビジネス構造が劇的に変化しています。その中で、創造的な価値を生み出すために重要なことは「未来のありたい姿」をビジョンとして描き、実現に向けた具体的な施策、変革へのテーマへ落とし込んでいくことです。このアプローチを「デザインアプローチ」といい、具体的に取り組んだ例として、トヨタ自動車サービス技術部様での「働き方改革」があります。

トヨタ自動車サービス技術部様では、サービスエンジニアの人材育成やサービス情報提供、サービス技術開発、修理支援を行っています。サービスエンジニアの働き方の未来、社員のモチベーション向上や、女性社員の活性化を目的として、サービスエンジニアの未来の働き方についてビジョンを描きたい、というお話をいただきました。そこでアークヒルズにお越しいただき、この先サービスエンジニアとしてありたい姿を描くためのワークショップを岐阜県多治見市に展開する拠点も含め複数回実施。森ビル様にもご協力いただき、「街のモビリティの未来」をテーマにしたインプットセッションを含むイベントを開催。これらを通じて、サービスエンジニアにもデザイン思考を取り入れた未来を描く力が必要であると感じていただき、翌年度から教育プログラムを作成、人材育成でも活用いただいています。

体験をデザインする未来創造アプローチが地域の元気を生み出す

平野 イノベーションにつながるアイデアを導き出すためには、単にユーザーだけでなく、企業や組織、最終的なカスタマーなど様々な関係者を視野に入れ、共感を生むビジョンをつくることも大事です。そこで、富士通では、このデザインアプローチの手法を独自に進化させた「Human Centric Experience Design」を提唱しています。これは、お客様とビジョンをつくり、コンセプトを検証し、関係者の納得性を得られるのかを確認しながら、具体的なビジネスに展開するための進め方であり方法論です。ヤマハ様との共創では"音"の体験を基軸にした新たなビジネスコンセプト「Sound Intelligence」がうまれ、ビジネスフェーズへと展開しています。

事例:麻布地区を「みんな」で「よく」するコミュニティデザイン活動 「ミナヨク」

田中 東京都港区麻布地区の活性化に向け、港区様との共創を通じ実現したのが、地域活性化事業「ミナヨク」です。「ミナヨク」は、近年ますます希薄になる「都市のご近所づきあい」の現状から、「このままでは町会・自治会が崩壊してしまうのではないか」という危機感を持った港区の麻布地区総合支所が、森ビルにご相談を持ちかけたことをきっかけに、プロジェクトがスタートし、富士通さんが「"みんな"で"よく"する、ミナヨク」という座組みを作ってくださいました。

HAB-YUで培った地域のコミュニティ
ミナヨク
(写真はヒルズマルシェでの発表風景)

目的は、麻布で地域づくりを行う若い人材を発掘・育成すること。地域を良くしたいと考える若者各ターム30名ほどが「HAB-YU」に集結し、人と地域の関係をデザインするためのアイデアを出し合い実行しています。

先日第3期が終了したところですが、「ミナヨク」では「発表されたアイデアを必ず1つ以上は実現しよう」と麻布支所や事務局で密かに目標を掲げています。例えば人と地域を繋げることを目的に、第1期生のアイデア「ヒルズマルシェではじめてのおつかい」をすぐに実現。アークヒルズのヒルズマルシェを子どもたちがひとりで歩き、買い物を体験するという企画で、すでに複数回開催されました。集まった参加者たちの「とにかくやるんだ」という非常に強い思いと、「HAB-YU」との相性がマッチして、さらに地域にも根ざした良いプロジェクトだと思います。

共創にテクノロジーが加わり、可能性が広がっていく

田中 オープンイノベーションと至る所で言われていますが、それが本当にオープンかと言われると、疑問符が付くものも少なくありません。しかし、富士通さんとお付き合いをしていて「こんな所まで出していいのですか?」と感じるほど、オープンなスタンスだったのが印象的でした。

また「HAB-YU」に取り組んで感じたのは、やはり「場所」の持っている力はすごいということです。企業は、外と接点を持たないと、自社だけで閉じこもって終わってしまいます。「HAB-YU」のように、外と繋がり、未来志向で新しいものを生み出そうという場所があることで、良いスパイラルが生まれるのだと思います。結果、我々森ビルが目指す豊かなライフスタイル、豊かな生活ができる魅力ある都市づくりにも繋がります。
それぞれがWin-Win-Winの関係で共創するうちに次が見えてきて、そこにITやIoT、AIといったテクノロジーが加わることで、プロジェクトがさらに広がっていく。ここで富士通さんのテクノロジーやエンジニアが活きてくるわけですよね。

平野 そうですね。富士通には様々な開発技術を持ったエンジニアが在籍しており、連携しながらデジタル革新に取り組んでいます。「HAB-YU」のような共創の場を企業に活用していただきながら、それぞれが活性化して前に進めるような仕組みを作っていきたいと考えています。

登壇者
  • 森ビル株式会社
    タウンマネジメント事業部
    アークヒルズエリア運営グループ 運営部
    田中 巌 氏
  • 富士通株式会社
    マーケティング戦略本部
    ブランド・デザイン戦略統括部
    平野 隆