画像データの解析時間が10分の1に!ディープラーニング活用事例

AI(人工知能)と共に話題になることの多いディープラーニング(深層学習)。技術を指すキーワードであるがゆえ、それが実際にどのように私たちの社会の課題を解決してくれるのかイメージができない方も多いのではないでしょうか。ディープラーニングの基礎知識と、川崎地質様の活用事例をご紹介します。
【Fujitsu Insight 2017「AI・IoTの最先端活用」特別講演レポート】

(左)川崎地質株式会社 理事 首都圏事業本部 保全部長 探査グループ 探査開発室長 山田 茂治氏
(右)富士通株式会社 AI基盤事業本部 AIフロンティア事業部 部長 永井 浩史

ディープラーニングとは何か?

「機械学習」と「ディープラーニング」の違い

富士通株式会社
AI基盤事業本部 AIフロンティア事業部 部長 永井 浩史

AIに学習させる手法には、機械学習やディープラーニングがあります。
機械学習では、人間がアルゴリズムを設定し、機械に学習させます。例えば、人の画像を認識させる場合、機械学習では人間が「頭」や「目の位置」といった特徴を抽出・設計し、機械に人かどうかを判断させます。それに対しディープラーニングでは、機械自らが特徴を自動で抽出・設計し自動的に判断します。

これが、人間が特徴を定義する機械学習と、機械自らが特徴を抽出するディープラーニングの大きな違いです。

ディープラーニング最大のメリットとは

ディープラーニングのメリットは処理速度の早さです。イノシシの鳥獣被害対策として導入された、画像解析技術を活用したシステム構築を例に比較しましょう。

従来の画像処理の場合、檻に入った動物がイノシシなのかそれ以外の動物なのかを機械が学習するのに半年〜1年かかります。それに対し、ディープラーニングでは、3日間学習しただけで、同じ結果を得ることができます。従来型の機械学習でかかっていた人や時間などのコストを、ディープラーニングを用いることで大幅に削減することができる。これがディープラーニングの強みです。

ディープラーニング活用事例 ―― インフラの高齢化をAIで解決

膨大な画像データ処理の省力化

川崎地質株式会社
理事 首都圏事業本部 保全部長 探査グループ 探査開発室長
山田 茂治 氏

川崎地質では、富士通のディープラーニングを使ったAIシステム「Zinraiディープラーニング」を導入しています。

日本国内では年間3,300件の道路の陥没事故が起きており、「インフラの高齢化」と言える状況です。私たちは現在、2016年11月に起きた博多駅前の道路陥没のような事故を未然に防ぐため、エコーを使った路面間の空洞を可視化する調査技術に力を入れています。

未然の道路陥没防止

調査では、地中にエコーを送信する探査レーダーを搭載した車で道路を走り、跳ね返ってくるエコーを連続的に捉えます。今までは、その画像データの処理を専門とする複数の技術者がクロスチェックして判読をしていました。

地中レーダーによる空洞調査

画像データは膨大で、これらを1人の人間の力だけで判読しようとすると、およそ16時間以上かかります。さらに、通常は5、6人でクロスチェックを行うため、約100時間を要する作業。これでは技術者が疲弊してしまいます。そこで、何とか人間の作業負担を減らして時間短縮を行いたいと考え、富士通の力を借りて画像データを自動判読できるAIシステムを確立しました。

画像データの解析時間は今までの10分の1に

富士通の「Zinraiディープラーニング」を使った空洞調査では、驚きの結果が出ました。技術者とAIが同じ路面を調査したところ、AIが抽出した空洞と思われる異常信号は技術者が指摘した箇所と一致。さらに、AIが指摘した異常信号の中には、技術者が「空洞ではない」と判断する画像も含まれていました。

実は、人間による画像での空洞判断は100%の精度ではありません。AIではその隠れた異常信号も様々な観点から見つけ出してくれてます。人間の力だけでは見つけられない異常信号をAIが抽出し、それを私たち人間が改めて空洞を示すものかどうか判読していくことによって、より精度の高い調査が可能になります。

「Zinraiディープラーニング」のおかげで、画像解析の作業時間は今までの10分の1になりました。人間の作業量を減らすことができるので事業費用の削減ができ、より広範囲の調査や定期的な調査を実施することも可能です。

さらに、こうして得た結果をAIに学習させていくことで、より信頼できる空洞判定システムになっていくのではないでしょうか。
富士通ではディープラーニングをはじめ、スーパーコンピュータ、量子コンピューティング技術、この3つの先端テクノロジーでAIの可能性を広げています。様々な企業の課題と向き合いながらAIの実用化について考えていく中で、社会の本質的な課題を解決したいと考えています。

登壇者
  • 川崎地質株式会社
    理事 首都圏事業本部 保全部長
    探査グループ 探査開発室長
    山田 茂治 氏
  • 富士通株式会社
    AI基盤事業本部
    AIフロンティア事業部 部長
    永井 浩史