うつ病リスクの特定や洋服のコーディネート・・AIの活躍が進む意外な分野

テクノロジー分野で、AIの導入ほど大きな注目と議論を呼ぶ話題はなかなかありません。私たち人間はテクノロジーが好きで、これによってさまざまなことを実現してきましたが、その一方で、テクノロジーが人間のことを学び、独自に意思決定を行えるという考えには、ある種の不気味さも感じます。このような感想を持つのは、映画『ターミネーター』のせいかもしれませんが、実際のところは、単に、企業がAIを使って何をしようとしているのか、またそれが私たちの生活にどのような影響を及ぼすかを十分に理解できていないためでしょう。

現実よりファンタジーのほうが誇張されがちなのは、世の常です。イーロン・マスク氏は「AIロボットは人間を破壊する存在になり得る」と警告しましたが、それでも私たちに危険は及んでいません。また、マーク・ザッカーバーグ氏は自分用のAIパーソナルアシスタントを開発しましたが、私たちの大半はこのようなロボット執事など所有していないわけです。

AIは、多数のプログラマーがオープンソースコードを使って開発している中立的な技術であり、次世代のコンピューティングテクノロジーの基盤となっています。しかし、AIが今すでに、エキサイティングでありながらも目立たない方法で、社会にとてつもない影響を与えていることも事実です。たとえば、次のように意外な分野で、企業はAIを市場投入しています。

1. Facebook:うつ病に苦しむユーザーを特定

Facebook上では膨大な量の個人情報が共有されていますが、同社は、これを良い目的のために利用することを決めました。Facebookが展開しているAIは、ユーザーの投稿をモニタリングすることで、うつ病の兆候や自殺願望がないかチェックできるのです。Facebookは、リスクのあるユーザーを特定する具体的な基準を発表していませんが、そのアルゴリズムは、心の不安を表現したコメントやサポートを求めるコメントを検索しているとされています。

Facebookは、異常に高い注目を集めている動画や、心配するようなコメントが寄せられている動画のライブフィードもモニタリングしています。専用のアルゴリズムによって問題がありそうだと判断されたコンテンツは人間のモデレータへと伝えられ、そのモデレータが、解決に役に立つ情報をユーザーに送るか、場合によっては、緊急通報を行う仕組みです。ザ・バージ誌によると、「Facebookは、このソフトウェアを使用して、過去1カ月だけで100件以上のケースを特定し、緊急サービスへの通報を行った」そうです。このサービスは、厳しいプライバシー保護法が定められているEUでは実現できず、米国でもまだテスト段階にありますが、AIの明るい可能性を示す具体的な例であるといえるでしょう。

2. ウーバー:ダイナミックな料金モデルを生成

ウーバーの料金は、いつどこで車に乗るかによって異なります。配車産業では、時刻、場所、乗車時間などの要因によって料金が変わることが知られていますが、ウーバーは、AIの導入によって、さらに進化した課金体系を作り上げました。

ウーバーのAIは、リアルタイムの物理的・社会的条件に基づき、ダイナミックな料金モデルを生成します。その結果、ジーディーネット誌は「経路が裕福な地域間になる顧客は、移動距離、マイレージ、所要時間などの要因にかかわらず、そうでない地域間の顧客よりも高い料金を請求される場合がある」と報じました。

ただし、ウーバーはすでに長期的な大スキャンダルに見舞われており、またこの仕組みによって増額されたり膨れ上がってしまう料金もドライバに還元されるわけではないことから、ウーバーのイメージダウンは避けられないでしょう。

ただし、ウーバーは、そのAIプログラミング言語をオープンソース化しているため、幅広い専門家やエンジニアがコードにアクセスし、利便性を高められるようになっています。ウーバーによるAIの導入例は、気前の良い結果をもたらすことはなさそうですが、今まで固定されていた環境をダイナミックに動かす可能性がありそうです。

3. アマゾン:服のコーディネートをお手伝い

アマゾンは、人気商品「アマゾン・エコー」のカメラ版とも言える「アマゾン・エコー・ルック」により、AIをベッドルームに持ち込みます。エコー・ルックは、ファッションの専門家がトレーニングしたコンピュータアルゴリズムを用いることで、ユーザーが持っている服の写真をクラウドに送って分析し、そのデータに基づいたコーディネートを提案するデバイスです。

当然ですが、アマゾンはエコー・ルックをチャリティで提供しているわけではありません。エコー・ルックは、コーディネートのアドバイスとともに、デバイスに映し出されている完ぺきな組み合わせの服やアクセサリの直接購入も提案するのです。オンラインショッピングは広く普及しましたが、すべての服をオンラインで購入することへの抵抗感はまだまだ残っています。消費者は、服のフィット感やフィーリングのような目に見えない側面も重視していますが、これらをオンラインだけで評価するのは非常に困難です。しかし、フォーブス誌の寄稿者であるジョン・マークマン氏は、エコー・ルックを使用すれば、「自分について、特に自分のサイズや好みについて、すべてを知る」ことができると書いています。

4. マイクロソフト:顧客サービス体験を向上

直感的かつ自然で、よりダイナミックな顧客サービス体験を創造するため、マイクロソフトのAIは、人気のオフィススイートをサポートしています。たとえば、同社のスカイプサービスでも、顧客体験に関する質問や、天気・交通状況などの一般的な質問に答えるチャットボットが提供されており、また、同社の検索エンジンであるビングも、AIを利用してユーザーの閲覧習慣を学ぶことによって、各ユーザーに最適な検索結果を出せるように継続的な改善が行われているのです。

これらの例はかなり基本的なものですが、もちろん、マイクロソフトにはAIに関する、もっと大きな野心があります。AI開発を加速させるため、同社とフェイスブック、そしてアマゾンは、共通のオープンソースのプログラミング言語プロジェクトに参画しました。その「ONNX-MXNet」プログラミングパッケージを利用することで、3社の専門家や外部の開発コミュニティは可能な限り迅速にAI関連の開発を進められるようになります。多くの人は「AI対応デバイスが我々の代わりに仕事をしてくれるはず」と誤解していますが、実際にそのようなプロジェクトを実現するには、膨大な人間の知恵と生データが必要です。そのため、オープンソースのアプローチを利用することが、高機能AIを最も速く開発できる方法だといえます。

まとめると、AIの具体的な機能の一部は、すでに私たちの日常世界に統合されており、さまざまな形で、我々の生活をより良いものにしているのです。いうなれば、今日のAIは「すでに存在しているものの、真の底力はまだ見え始めたばかり」という段階と考えてよいでしょう。

カレル・ストリーゲルは、リナックスの認定システムエンジニアで、開発担当者と運用担当者が連携して協力するソフトウェア開発手法の一つであるDevOpsに精通しています。最近では、オープンソースプロジェクトの資金調達、請求、リワード提供を支援する新しいブロックチェーンプラットフォーム「FundRequest」を共同設立しました。

この記事はVentureBeatのKarel StriegelとFundRequestが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。