物流拠点を「組み合わせ最適化」で見直し、車両台数を11%削減

物流業界では、何カ所もの拠点をいかに効率的に回るかが課題となっています。これは「組み合わせ最適化問題」と言われ、これをいかに迅速に解くかがビジネスのスピードに繋がっています。ここでは、「物流拠点立地の見直し」に組み合わせ最適化技術を活用した意思決定支援コンサルティングについて紹介します。(富士通総研が発行している情報誌「知創の杜」より)

執筆者プロフィール
太田 崇(おおた たかし)
株式会社富士通総研 ビジネスアナリティクスグループ チーフシニアコンサルタント
2001年 富士通株式会社入社、株式会社富士通総研へ出向。主に、物流分野や環境分野おいて、最適化技術を活用したコンサルティング、システム化支援、技術教授などに従事。

管理費の大きな割合を占める「物流コスト」、定量的に評価するためには?

物流コストは販売費や一般管理費の大きな割合を占めており、その削減は企業の最重要課題の1つとなっています。中でも輸配送にかかるコストは物流コストの50~60%を占めており、その注目度は高いと言えます。また、企業の合併や買収が増加する昨今、合併や買収後の物流網の見直しは非常に大きな課題であり、輸配送全体を俯瞰したドラスティックな改善が必要となります。しかし、輸配送全体を俯瞰する大規模な施策については、その効果を定量的に評価できず、実施を判断しきれないのが現実です。

富士通総研では、物流分野において「組み合わせ最適化技術」を活用した意思決定支援コンサルティングを数多く実施しています。高度な最適化技術を活用して算出された定量的評価は、輸配送における意思決定の絶対的な根拠となるものです。また、定量的な評価により、施策の効果や複数の施策の優劣が明確になるため、意思決定にかかる時間を大幅に短縮することが可能となります。

「物流拠点見直し」を支援するコンサルティングで、より厳密な評価を

輸配送全体を俯瞰し、戦略的に解決するための施策として、物流拠点の立地の見直しが挙げられます。例えば、倉庫の利用率や車両の積載率の改善には、倉庫や物流センターの統廃合が有効です。ただし、物流拠点の統廃合にも様々な施策があり、図1のように物流拠点を2か所から1か所にする場合でも、どちらかの拠点を廃止するべきか、両方の拠点を廃止して新たに拠点を建設すべきか、最も効果的な施策を判断する必要があります。

(図1)物流拠点の統廃合の施策

物流拠点の立地を見直して物流拠点を適切な位置に建設することにより、物流の効率化が図れ、輸配送コストや輸配送にかかる距離を削減できます。そのため、物流拠点の見直しは多くの企業にとって重要な経営課題となっていますが、定量的に分析・評価する方法は確立されておらず、大半は定量的な根拠を持った意思決定がなされていないのが現実です。

例えば、複数の物流拠点を統合して新規に物流拠点を建設する場合は、まず候補地(地域)を列挙し、その中から適切な建設場所を決定します。そして、輸配送や現場オペレーションに関する実地検証を行うのが一般的な手順です。物流拠点の建設場所の選定には、輸配送コスト、必要在庫量、キャパシティ、オペレーションの実行性などを考慮する必要があります。しかし、実際にはこれらの厳密な試算ができず、無駄に広い敷地の確保や、必要以上に都心に近く地価の高い場所の選定が行われています。物流拠点の見直し施策を評価する際に最も重要なことが、輸配送に関する評価です。在庫量やキャパシティなどは輸配送ネットワークが決定することで初めて試算が可能となるものであり、輸配送ネットワークの設計が疎漏であれば、その後の試算はすべて不正確なものになってしまうからです。しかし、輸配送に関する評価は様々なパターンを比較評価する必要があり、厳密な評価が困難です。

このような現状を踏まえて、富士通総研が提供する「物流拠点見直しに関する意思決定支援コンサルティング」では、特に輸配送に関する評価に注力しており、複数の拠点候補地、多数の輸配送ネットワークシナリオに対して組み合わせ最適化技術を活用し、より厳密な数値評価を行っています。

人間の力では答えを出すことが難しい問題を、数値シミュレーションで支援

物流拠点の立地見直しにおける数値シミュレーションは、「物流拠点の立地シミュレーション」と「配送ルートシミュレーション」を組み合わせることで、さらに具体的なシミュレーション結果を提供しています。

「物流拠点の立地シミュレーション」は、配送先の分布状況と需要量などから効率的な物流拠点の建設数とその位置、さらに各拠点の担当エリアを求めるものです。現場担当者の経験や勘、または条件や情報量を絞った簡易的な計算によるものとは違い、厳密なシミュレーションを行うことにより信頼性の高い数値結果を提供できます。「配送ルートシミュレーション」とは、物流拠点から複数の車両が複数の配送先を巡回して荷物の配送などを行う際に、どの車両がどの配送先をどういう順番で巡回すれば効率的かを求めるものです。これらのシミュレーションを組み合わせることで、物流拠点の立地シナリオに対する配送車両の必要台数などを算出することができ、日々の運用までを含めた、より具体的なシミュレーション結果を得られます。また、これらのシミュレーション結果は数値だけでなく、地図上に表現することも可能であり、「見える化」による視覚的理解も容易なため、お客様の意思決定に貢献できます。

物流拠点の立地シミュレーションと配送ルートシミュレーションの結果を図2、図3に示します。物流拠点の立地シミュレーションでは、物流センターや物流ハブなどの拠点の効率的な建設位置のシミュレーションを行います。

単純に物流センターから配送先に荷物を配送する場合の物流センターの立地や、工場から物流ハブを経由して配送先に荷物を運ぶ場合における物流ハブの立地など、様々な物流形態のシミュレーションを行うことが可能です。この問題を解決するためには、物流拠点の固定費、物流拠点のキャパシティ、配送先の需要量、物流拠点と配送先間の道なり移動距離、輸送にかかる変動費などを考慮する必要があります。これらすべての条件を考慮して膨大な量のパターンを評価することは、人間の手計算では非常に困難です。

(図2)物流拠点の立地シミュレーションの結果イメージ
(図3)配送ルートシミュレーションの結果イメージ

配送ルートに関しては地域内の効率的な配送ルートのシミュレーションを行います(図4)。配送だけでなく集荷(ミルクラン)や集荷先から配送先への移送といったモデルのシミュレーションも可能です。この問題では、車両の最大積載量、荷量、指定配送時間、配送先間の道なり移動距離・移動時間、荷物の積降作業の時間などを考慮する必要があります。車両数や配送先数が増えると、その組み合わせ数は爆発的に増加し、こちらも人間の力では答えを算出することは非常に困難です。

(図4)拠点の効率的な建設位置をシミュレーション

富士通総研では、このような組み合わせ最適化問題に対して「メタヒューリスティック解法」という最適化技術を用いることで効率的に問題を解決しています。メタヒューリスティック解法とは、膨大な量の組み合わせパターンから効果的な組み合わせを効率よく見つけ出すための代表的な手法です。

車両台数を11%削減するなど、施策の効果が明確に

あるお客様の事例では、企業の合併後、それぞれの物流拠点から配送を行う担当エリアの見直しシミュレーションを行った結果、車両台数を11%削減できることが分かりました。また、別のお客様の事例では、仕分け作業を行うための物流ハブを外部に設けるべきかどうかの経営課題に取り組んだ際に、既存の物流拠点を活用し、さらに新規に物流ハブを設けた方が現状に比べて輸配送コストが6%削減でき、新規に設けた物流ハブの維持費を差し引いても十分コストの削減が図れることが分かりました。その他、当初有力と考えられていた施策は想定よりコスト削減量が低いことが分かり、逆に有力視されていなかった別の施策の効果が大きかったために、その施策に対する実証実験や導入検討が進められた例もあります。

このように、実施を躊躇していた施策の効果が明確になり、意思決定に貢献することはもちろん、想定とは異なる現実が明らかになることも多々あります。

「人間が導き出す答え」に近いシミュレーション結果に向けて

今回では、組み合わせ最適化技術による拠点立地シミュレーションと配送ルートシミュレーションを活用した物流分野の意思決定支援コンサルティングについて述べました。組み合わせ最適化技術を活用することにより、物流分野だけでなく、SCM全体、生産計画や日々のスケジューリング、勤務シフト表の作成など、様々な分野の問題を解決することができます。

また、ビッグデータ、IoT、AIといったキーワードを背景にハードウエア、ソフトウェアともに新たな技術の開発が進んでいますが、富士通総研ではこれらの技術を最適化技術と組み合わせる取り組みを行っています。この取り組みにより、単純に数値的に最適な結果ではなく、より人間が導き出す答えに近いシミュレーション結果を求めるニーズにも対応できることを目指しています。

知創の杜
ケーススタディ
「最適化技術を活用した物流戦略における意思決定支援」

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