ロボットによる運転代行で憂鬱な雪道を過去のものに

自動運転車は自動車の未来形ではありますが、自分がハンドル操作をしなくてよいという事実を受け入れるには、間違いなくある程度の慣れが必要になるでしょう。はっきりした車線のある街中の道路を流れに従ってゆっくり進むことは、確かに得意かもしれません。元々、多くの自動運転車は、そのために開発され、テストされたものだともいえるからです。しかし、その条件に冬の凍結した道路が加わるとどうなるでしょうか?

VTTフィンランド技術研究センターのチームが、私たちの不安を解消すべく総力を挙げて「マーティ」の開発を進めています。マーティは、雪に覆われた公道を安全に走行することを目的とした初の完全自律型車両で、路上の薄氷でスピンして崖下に転落したりはしないといいます。もちろん、私たちの知る限り、これまでに自律走行車の転落による死亡事故が起きたことはありませんが、このような不安は、どうしてもつきまとうものです。プレスリリースによると、フォルクスワーゲンのSUV、トゥアレグを改造したマーティは、極寒で有名なフィンランドのラップランド地方の、車線も定かに見えない雪道で、時速約40キロを達成。研究者たちは、さらにスピードを上げて走行することもできたはずだと考えています。

ほかの大半の自律走行車は、パルスレーザー光によって対象物との距離を測る技術で、「光検出と測距」を意味する英語の頭文字から名付けられた「ライダー(Lidar)」に依存していますが、このセンサーは視界の利かない状況では機能できません。しかし、マーティは違います。独自の装備により、「猛吹雪で3Dセンサの性能が低下した場合でさえ問題なく機能する」と、プロジェクトマネージャのマティ・クティラ氏はブルームバーグ宛ての電子メールで説明し、続けて「その秘密はフィルタを採用したことにある」と明かしました。「フィルタ」とは、言い換えれば「アルゴリズム」のことです。マーティは、レーダーに加えて3基の前方レーザーを持ち、そこにカメラ、アンテナ、センサーの組み合わせた上で、さらに車体後部に搭載したライダーも利用して正確な測定を実現しています。

ただし、クティラ氏はブルームバーグに対し、すぐにマーティの本格的な実用化に移る見込みはないと答えました。現状の道路マップが、完全にシームレスな走行を保証できるほど正確ではないためです。しかし、同氏は、センサーデータを処理して運転指令を与える、マーティの基盤ソフトウェア部分を自社で販売することになるだろうと考えています。そうなれば、客船会社が港周辺で乗客を輸送するために無人ワゴン車の開発を進めているように、いつの日か、このテクノロジーがスキーヤーを乗せて山を往復するバスやクルマをコントロールするようになるかもしれません。

「当社の狙いは、まさに自動車などの車両がこのテクノロジーを用いて、ホテルからゲレンデまでスキーヤーを運ぶといった役割を果たせるようにすることなのです」と、クティラ氏は語っています。

雪の中でテストを行う自律走行車メーカーはVTTだけではありませんが、マーティは雪道に特化して設計されているため、いち早く2017年の初秋から公道での試験走行をスタートさせていました。これに対して、ロシアのソフトウェア大手であるヤンデックスの製品は私道での試験にようやくこぎつけ、グーグルのウェイモにいたっては先ごろ初めて雪道を走ったばかりです。

それでもVVTとしては、まだ手を加えるべき点がたくさん残っているといいます。同センターは、今後、マーティのレーダーシステムの解像度をさらに高め、光学部品の波長を再調整してセンサーを監視するソフトウェアも強化する予定です。2018年の1月中旬までには、デジタル化された交通インフラとの通信に対応して行政機関や公共機関から提供される交通・天候情報を取得できるようになり、この春には、森林環境での走行試験も行われる見込みとなっています。

現在のところ、こうした取り組みが消費者にとってどのような意味を持つのか、完全には見えていません。たとえば、クティラ氏自身も認めるように、マーティは世界最高レベルのスムーズなハンドルさばきを実現しているわけではないのです。「これは試作車なので、人が運転するほどの上手さはありません。しかし、クルマ自身が判断を下すようになれば、少しは人間のドライバーと同じ感覚で接することができるようになり、さらには『運転、大丈夫?』とクルマに話しかけるようになるでしょう。」 その質問は、親が免許取りたての子どもに対して投げかけたり、悪天候の中で親を乗せて運転したことのある人が耳にする、おなじみのものです。

クティラ氏は、消費者向けの無人自動車が公道を走るようになるまでには、まだ数年かかるだろうと考えています。ただ、その前に、ホテルやパーキングなどで所定の場所に自動で駐車してくれるような機能は実現しそうです。また、大学や専門学校でも、シャトルバスを改造して自動運転に対応させることが考えられるため、「そのような用途の車両は2020年までに完全自動化されるはず」だとクティラ氏は予想します。

では、日常の輸送に対する全面的な見直しについてはどうでしょうか。

「交通機関をすべて自動モードに変えるにはかなりの時間が必要です。移行期間として20~30年はかかるだろうと見ています」と、同氏。

幸いなことに、冬の贅沢なドライブをあれこれ検討する時間は、まだ十分にありそうです。

本稿の執筆者の連絡先:レイチェル・テッパー・パリー(ニューヨーク)、ratepper@gmail.com

本稿の担当編集者の連絡先:ジャスティン・オーシャン、jocean1@bloomberg.net

©2017 Bloomberg L.P.

この記事はBloombergのRachel Tepper Paleyが執筆し、NewsCcredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。