音声認識と機械学習がチャットボットを進化させる

私たちは今、ますます高度化する業務を人からマシンに引き継ぐための技術革新の転換点にいます。多くの組織が、最新のAI、ロボティクス、自然言語技術を採り入れ、経験から「学習」して実際にユーザーと対話できる、チャットボットというプラットフォームの導入を進めているのです。このようなチャットボットの次の段階では、強化されたリアルタイムのデータ分析機能や自動化機能のほか、複数のデジタルチャネル間でインテリジェンスを統合し、音声やテキストによって顧客と自然に会話できる機能が含まれていきます。

では、このようなテクノロジーの統合は、顧客にとってどのような意味を持つのでしょうか。その答えは、顧客が製品やサービスについて問い合わせると、全社で蓄積された経験と膨大な知識を持つ、その問題の解決に最もふさわしいAIのエージェントが応答するようになるということです。

「そのまま電話を切らずにお待ちください」

たとえば今、銀行や電子商取引サイトのヘルプデスクに電話で問い合わせたとしたらどうなるか想像してみてください。たいていは録音されたメッセージが流れ、問い合わせの理由を選択させるか、場合により、通話の代わりにWebサイトにアクセスして基本的な問題を解決するよう促されるでしょう。

こうしたアプローチは、企業側にとって顧客サービスのコストを削減する効果があるかもしれませんが、私が知る限り、ほとんどの人はこのような流れにかなりの苛立ちを覚え、結局はゼロを押して人間のオペレーターを呼び出すことになります。

しかし、それでも事態は常に好転するわけではありません。なぜなら、オペレーターが出るまでに長い時間待たされることがよくあるからです。

そして、オペレーターがようやく出たと思っても、オペレーターのヘッドセットに不具合が生じてこちらの言うことがわからなかったり、他のオペレーターにつなぐために待たされたりして、再三、嫌な思いをすることも珍しくありません。

これで、要点はおわかりいただけたでしょう。

求む: 「顧客サービスのスキルを持つロボット」

では、電話で問い合わせたときに、すぐに聞き覚えのある名前や声を持つチャットボットが応答した場合はどうでしょうか。いくつかのセキュリティチェックを通じて、あるいは、そうと気づかないうちに音声認識によって、あなたの身元を確認したボットが、あなたと会社のこれまでのやりとりをすべて把握していると想定します。つまり、注文や発注ミス、Webサイトでの検索、過去の取引、過去の問い合わせはもちろん、今回の問い合わせの間にすでに話した情報などを全部覚えていて、顧客のほうで頭を悩ませたり、メールの受信箱を探しまわったり、同じことを繰り返し伝えたりしなくてもよいわけです。

ボットは、他の顧客が直面した問題や、それらの解決方法に関する完全な最新のデータなどを含む会社全体で共有された知恵を総動員し、あなたの問い合わせに対処してくれます。そして、専門の担当者の助けを求めたり、上司の承認を求めることなく、ほとんどの問題に効果的な是正措置を講じ、しかもそれをミスなく行うことができるのです。その後にボットは、すべてが問題なく解決したことを確認する追跡調査を、あなたが選択した手段を使って再びやエラーなしに行います。選択可能な手段には、電子メールやメッセージ、希望する番号への折り返し電話、Webサイト上のあなたのアカウントへの通知、あるいはこれらの組み合わせなどが考えられますが、ボットは難なくそのすべてに対応してくれるのです。

このようなプロセス全体を通して生成された情報は、次の顧客への対応の向上から、製品やサービスの改善、さらには、あなたとの将来のやりとりのパーソナライズまで、数多くの用途に利用できるでしょう。そして、このプロセスが適切に実施されることで、好循環が生まれます。

たいていの場合、問題は最初のやりとりだけで解決されるはずです。このようなマシン主導のやりとりがうまく実行されることによって顧客満足度は高まり、ブランドロイヤルティも向上します。その上、顧客は好きなコミュニケーション手段を選ぶことができ、受けるサービスも一貫性があって迅速かつ効果的で、生身の担当者の良い面だけをボットが持つならば、顧客は実際にその体験が人間とのやりとりよりも快適だと感じるに違いありません。このことは、特にスマートフォンやソーシャルメディア、チャットなどを自分自身の一部のように感じて育った、若い世代のユーザーに当てはまるでしょう。

身近なコールセンターが変身中

すでに、小売業者に人気の顧客エンゲージメントプラットフォームとして、フェイスブックメッセンジャーのチャットボットが台頭してきました。また、たとえばオンラインオークションサービスのイーベイにも、商品の検索や比較、購入をより速く円滑に行えるショップボットが用意されています。後者のボットは機械学習機能を備えており、利用者それぞれの購入履歴や検索履歴を基にして、より的確な商品を提案することが可能です。さらに、その高級版ともいえるものがバーバリーの試みです。ファッション業界におけるデジタル化の草分けとして有名なこのブランドのチャットボットは、同社の最新コレクションのデータや画像、リンクを豊富に提供し、それらの組み合わせによって顧客が好きなコーディネートを作る手伝いをしてくれます。

顧客サービスでチャットボットが普及するにつれ、特定の業務をマシンが代行できるようになり、人間はより複雑な、あるいは機密性の高い業務を、迅速に行えることになるでしょう。こうした変化によって、人間が最も重要な顧客に合わせてサービスを拡張したり強化することが可能となり、さらには、機械学習に対応したテクノロジーがさらに人を支援するようなハイブリッド型のサービスモデルへの扉も開かれるはずです。実は、このようなハイブリッドモデルはすでに導入されつつあり、チャットボットの普及は人々の予想よりも速く進むかもしれません。こうした変化に伴う従業員の再教育やスキルの再習得に長い時間がかかる可能性を考えると、移行計画には今すぐ取り掛かることが不可欠といえます。

チャットボット技術の進歩は、人間の労働者にとって大きな影響を与えるでしょう。人間とマシンの競争が激化すると、当然ながら勝者と敗者が生まれます。そして、これらの最新デジタル技術を利用して自らの優位性を高める方法を最も積極的に検討していく個人や組織が、この競争の勝者となるのです。

Peter Quinlan氏は、電気通信ソリューションおよびサービスのグローバルプロバイダであるTata Communicationsの統合コミュニケーションズ&コラボレーション製品の管理を担当するバイスプレジデントです。

この記事はTata Communications のPeter Quinlanによって執筆されたVentureBeatの記事であり、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。