AI、RPA導入で進む、新しい「働き方改革」とは?

多くの企業が「働き方改革」に取り組み始めていますが、効果が実感できる施策の実現に苦労されているケースも少なくないようです。最新テクノロジーのAIやRPA(Robotic Process Automation)を活用することで、今後の働き方は大きく変わり、改革を後押ししてくれることでしょう。テクノロジーを駆使した働き方改革について、具体的にご紹介します。
【Fujitsu Insight 2017「働き方改革」基調講演レポート】

シンギュラリティの到来で、働き方はどう変わるのか?

富士通株式会社 常務理事
グローバルマーケティング部門 首席エバンジェリスト
中山 五輪男

人類は、これまでにいくつもの産業革命を経験してきました。第一次産業革命は蒸気機関の発明が牽引したとされます。第二次産業革命では電気の発明、第三次産業革命ではコンピュータの発明、そして第四次産業革命ではコンピュータをフル活用するAI(人工知能)が牽引すると言われています。

ではこの先、どのような未来がやってくるのでしょうか。これから数十年に渡って、世の中がどのように変わっていくのでしょうか。我々人類が経験したこともないような人類最大のパラダイムシフトを経験することになると思います。この人類最大のパラダイムシフトは、「シンギュラリティ」と呼ばれています。

シンギュラリティとは、コンピュータやAIが進化して、人間の知能を超える時点のことで、2045年とも言われています。具体的には、「テクノロジーが急速に進化し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまう未来のこと」とされています。こうしたシンギュラリティの世界を作る重要な要素は、紛れもなくAI、そしてビッグデータです。

ビッグデータの活用がAIの成功を左右する

ビッグデータは大きく2種類に分けられます。1つは活用されているデータ、もう1つは活用されていないデータです。この活用されているデータをAIで処理し、取り出したデータは、ビジネスに変革をもたらす価値あるデータと言えます。

実はAIのディープラーニングという手法は、ビッグデータがなければ何かを為すことができません。今、AIの活用を検討されている方も多いと思いますが、その際に大事なことは「将来のために自分の会社の中にきちんと様々な種類のデータを貯めておく」ことです。今は無駄だと思えるデータが、もしかしたら将来大きなデータになって会社を成長させてくれるかもしれないからです。このデータの利用は、企業の成長を大きく左右し、今話題の「働き方改革」にも大きく関わってきます。

「ビッグデータ」から「データ」へ

AIを活用した「働き方改革」事例

それでは、今後私たちの「働き方」はどのように変わっていくのでしょうか。ここでは、富士通のAI「Zinrai(ジンライ)」を活用した「働き方改革」の事例をいくつか紹介します。

CT画像からAIで類似症例を検索、判断時間を6分の1に

まずはヘルスケア分野の事例をご紹介します。広島大学様では、AIを使った検索技術を活用し、病院でのCT検査画像から類似症例を検索しています。Zinraiを活用したことで、その患者がどういった病気にかかっているのかを約85%の正解率で検索することができました。同時に、医師の判断時間を最大約6分の1にまで短縮することも可能になります。

コールセンターの24時間対応をAIで実現

コールセンターでは、膨大なデータベースの中から、問い合わせ内容に適した回答を探しています。この作業にAIを使うと、24時間365日、お客様の質問に対して即時回答をすることが可能できます。こうしたコールセンターで働く人たちの業務負荷を軽減し、働き方改革を実現しています。

AIの需要予測で発注業務を効率化、無駄を削減

近年、消費者ニーズの多様化に伴い、流通サービスの現場では「多品種小ロット」の品揃えが求められています。しかし、例えば在庫の管理単位が175万件ある某企業では、既存システムでは商品ごとの需要予測ができなかったそうです。ところがZinraiを使うようになってからは、膨大なビッグデータをもとに適切な需要予測をした上で、無駄のない発注が可能になりました。

「働き方改革」を後押しする「RPA」とは?

最近、AIと並んで「RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)」も、「働き方改革」の実現に利用されています。RPAとは、人間が行った作業を機械に覚えさせ、同じ作業を自動化するというものです。

バックオフィス業務でのRPA活用事例

先日、私は富士通コミュニケーションサービス(CSL)を訪問し、RPAの活用法について話を聞いてきました。CSLではコンタクトセンター、セールスマーケティング、ヘルプデスク業務、バックオフィス業務を手がけています。このバックオフィス業務で RPAを活用し、検収や解約の業務に利用したところ、作業にミスが生じた場合もRPAで発見できるようになったそうです。

現場の方からも「RPA によるミスの発見で、日々のプレッシャーから解放された」という声が聞かれました。また繁盛期には、通常の5倍、6倍の作業が生じていますが、そのために人員を多く確保するのは容易ではありません。しかし、RPAによって作業を自動化することで、増員をしなくて済んだということです。

バックオフィス業務で RPAを活用し、検収や解約情報をチェック

大切なのは「人とRPAのハイブリッド」

CSLでの話の中で興味深かったのは、「人とRPAのハイブリッドでの利用」です。RPAを使ったからといって、全てコンピュータに任せる訳ではありません。重要なのは「必ず人間を介在させる」こと。何故かといえば、トラブルが生じた時の責任の所在を明確にするためです。CSLでは、RPAを稼働させているパソコン1台1台に、必ず責任者をつけて対応しています。

またRPAを取り入れる際には、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)も重要になります。仕事の中身を明確に、業務を整理してからRPAを導入しなくてはいけません。これにより「新人教育の期間短縮や効率化」にも結びつきました。

現場のマネージャーからは、前述の「繁忙期のスタッフ確保が不要になった」ことのほか、「業務に難易度をつけられるようになった」「障がい者が多く働ける職場になった」などという声が聞かれました。

現場で働いている人からは、「休みを取得しやすくなった」「社員教育がしやすくなった」「早く帰って自分の時間が作れるようになった」という感想が聞かれました。働きやすさを調査するESアンケートでは 全体では3.70点(5点満点)であるのに対し、RPA 利用部署は4.38点と非常に高いスコアを達成しています。

「働き方改革」を成功させる5か条

AI利用について何から着手すれば良いのか、戸惑っている方も多いと思います。富士通では AIセミナー&ワークショップ体験会を開催しています。ここではお客様同士でグループワークを開き、ディスカッション通じて アイデアを掘り起こし、新たな発見をすることができます。

また、社内でAIエキスパートを育てることも大切です。富士通では、人材育成サービスとして「FUJITSU Digital Business College実務者向け『AI・Analytics』コース」を設けています。これはAIに関する様々なスキルを学べるコースで、Zinraiだけでなく他社のAIについても学習できます。

最後に、"「働き方改革」が失敗してしまう5か条"を紹介して講演を終えたいと思います。

  1. 1.目的が現場まで共有できていない
  2. 2.社員の意識が変わらない
  3. 3.推進部門が現場を分かっていない
  4. 4.成果を急ぎ、気配りがない
  5. 5.ビジョンがない

つまり、この5つの逆を目指せば、「働き方改革」は成功するということです。富士通はこれからもお客様と共創(Co-creation)することにより、AI による「働き方改革」を推進していきたいと考えています。

登壇者
  • 富士通株式会社
    常務理事
    グローバルマーケティング部門
    首席エバンジェリスト
    中山 五輪男