ロボットと人間が共生する社会のヒント

「ロボットが台頭し、人間は仕事を奪われ、人生が破綻する。そして、人間にはなすすべがない」という誇張された話がまことしやかにささやかれています。つまり、人間による労働は時代遅れとなり、ディストピア的な未来が到来するというのです。少し前に騒がれた「ロボットにサウジアラビアの市民権が認められた」というニュースも、実際には話題作りに過ぎなかったのですが、「予想されている人類の終焉が、さらに一歩近づいた」という切り口で報道されました。(注1)

私(筆者)はテクノロジーのエバンジェリストであり、今では政治の世界に身を置いているものの、「世の中を、皆が住みやすく、働きやすい場所にする」という思いは、20年前にエンジニアリングの道に入ったときと変わっていません。(注2)

さて、私たちが、すさまじいテクノロジーの変革の時代を経験していることは紛れもない事実です。データ、アルゴリズム、オートメーションが統合されていくことで、今は、当たり前とされていることも、革命的な変化にさらされることになります。これは誇張ではなく、現実です。人間が生活し、息をする中で産み落とされた様々なデータは、それらを巡回収集する大規模なウェブクローラによって分解・分析され、ビジネスの機会へと形を変えていますが、その実態は、私たち自身はもちろん、政府にも把握しきれていません。私たちの脳よりもはるかに巨大な存在が、サッカーボール遊びから、病気の友人を思いやる気持ちまで、人間のあらゆる活動を真似しようとしているのです。

確かに以上のような変化は、私たちの生活の悪化をもたらす可能性もあります。その場合、将来の世代は、自らが購入したスマートフォンという名の看守によって管理される監視社会に生きるはめになるでしょう。その一方で、一握りのエリートは、多数の奴隷ロボットを従え、贅沢な暮らしを享受するのです。

しかし、そうなると決まったわけではありません。私たちには選択肢があります。変化に恐れて逃げ出す代わりに、新時代の責任にしっかりと向き合えばよいのです。

言い換えるなら、私たちとテクノロジーとの間の関係を定義する社会契約を確立する必要があります。そのためには、まず「誰が責任を持つのか?」という問いかけから始めなければなりません。

たとえば、あるアルゴリズムが特定の人物について重要な決定を下した際に、当人がその決定に抗議する権利を認められない状況は、適切といえるでしょうか? 事実、アルゴリズムによって職務状況を管理されているアメリカの教師たちは、査定の根拠が「商業上の機密」にあたるという管理者側の主張によって、それを目にすることが認められていません。このような状況は、雇用権と市民権の両方の侵害に当たると、私は考えます。

またデータ自体も、その所有者が自身の責任で管理できるようにすべきでしょう。そうすることで、データは日用品のように売り買いされるものではなくなり、人々に力と収入源を与える存在になります。英国議会でデジタル経済法案が審議される中で、労働党のチームがデータの所有権に関して個別著作権モデルの導入を検討しているのも、こうした観点からのことなのです。

ビル・ゲイツイーロン・マスクは、生産性向上による成果を社会で分け合うため、「ロボット税」を導入することに前向きな発言をしました。私自身も、富を公正に分配することには賛成ですが、単なるロボットの人頭税よりも効果的なソリューションが出てくることを願っています。機械だけでなく人間にも投資するインセンティブを、企業にも政府にも与える必要があるからです。現在のイギリスでは、24歳以上の人が勉強したいと思えば、事実上、独学の道を歩むしかありません。大人向けの無償教育制度がないためです。これに対してロボットは、その気さえあれば再プログラムによって簡単に新たな技能を身につけられるので、人間は当然ながら不利な立場に追いやられることになります。しかし、人間のプログラミングにあたる教育は、ロボットよりもはるかに柔軟で、価値があるものです。何事も純粋なAIのみで行うのではなく、その支援を受けながら人間が作業するという運用モデルを確立すべきでしょう。

人は、他の人たちのためにやりがいのある仕事を生み出せる、驚異的な能力を持っています。そして、この能力は、当分、尽きることはないでしょう。テクノロジーに関するルールや責任についての適切な体制を構築できれば、人間は、ロボットに従うのではなく、ロボットとともに栄えることが可能なはずです。

私たちが国として先を見越した動きをすれば、イノベーションの力を実際のサービスに適用して勝者になることの実例を、世界に示すことができるでしょう。映画「ブレードランナー2049」の世界では、前作と同様、警察はあっても政府が存在しない社会のあり方が衝撃的でした。過去を振り返ると、最初の産業革命のときには、まだ労働者には男女を問わず投票権が認められていなかったのです。そして、産業革命の成果が効果的に社会に分配されるまでに、何十年もかかりました。だからこそ、今、起こりつつあるロボット革命は、皆さんと一緒に、これまでとは違うものにしていきたいと思います。

(注1)関連記事:オートメーションがイギリス国内の5人に1人の職に影響するとの予測

(注2)筆者:Chi Onwurah(チ・オンウラ氏)は、イギリスの野党が組織した政策立案機関であるシャドー・キャビネット(影の内閣)の産業戦略担当大臣です。

この記事は、The GuardianのChi Onwurahが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。