AIとIoTの融合が消費者、企業、エコシステムに与える影響とは?

私たちが気づかぬうちに、AIとIoTは、消費者環境やビジネス環境に大規模なイノベーションをもたらしています。たとえば、私たちが持ち歩くスマートフォンには9~13個ほどのセンサーが搭載されており、過去何年にも渡って、デバイス上のファームウェアやクラウド上で、機械学習とディープラーニングが進められてきました。しかし、消費者、企業、エコシステムにおいて、こうした動向がどのように幅広い影響を与えているのかを確かめるには、その収束の仕方や意義を考える必要があります。以下に3つの例を挙げてみることにしましょう。

1.より「人間らしい」IoT

コネクテッドデバイスはもちろん、ロボットでさえ、身近な存在となってからしばらく時間が経っています。にもかかわらず、インターフェースの観点からは、モバイルデバイスやラップトップの世界の標準である、タイピング、クリック、タッチといった旧来の手法から抜け出せずにもがいてきました。しかも、それらの新しい機器の機能性は、別のデバイスや電源に依存したままだったのです。それでも、幅広い市場で普及するための懸命な努力が続けられてきた経緯があり、2020年には、消費者が保有するIoTデバイスの数が150億台に上るだろうと予想されています。その反面、メーカー各社は、このような飛躍的な成長曲線をどうやって促し、実現するかに頭を悩ませてきました。

一方で、機械学習やディープラーニングと共に、自然言語の処理や理解が進歩したおかげで音声認識の信頼性が高まり、それに伴って、人間とマシンとのインタラクションの方法も再定義されつつあります。具体的には、IoTデバイスや何もない空間に話しかけるだけで処理が開始されるようになり、人間とマシンとの関係性が、人間同士のそれに近づいてきたのです。これは、テクノロジーの普及という面から見て、タイピングやタップではなく言葉によるやりとりが可能となる、つまり、キーボードや画面の操作のようにうつむくことなく顔を上げた状態で使えるという利用方法の違いのみにとどまらず、まったく新しい市場の開拓につながることも重要といえます。たとえば、「高齢者が在宅ケアアプリを利用する」、「障がい者がインターネットサービスを楽しむ」、「テクノロジーに疎いユーザーでもデジタルコミュニティに受け入れられる」といったことが可能になりますが、そのインパクトの大きさを考えてみてください。

人間には、比較的小さな労力で言語を学習し生み出す能力が生まれつき備わっていますが、特に声というものは、私たちが言葉によるやりとりをする上で、感情や口調、文化的なニュアンスなど、無数の目に見えないコミュニケーション要素を伝えてくれます。私たちは、それを社会的なインタラクションにおける個性ととらえて、昔からモノを擬人化する際にも用いてきました。モノに生命的な要素を見出すと、私たちは信頼感や親近感を覚えます。加えて、処理速度が向上したことで、デバイスは様々なデータセットや顧客の好み、リアルタイムで得た会話中のヒントなどから、文脈に沿った動的な応答が可能になってきました。

こうして、デバイスが信頼できるパートナーやコンシェルジュ、あるいはメディアのキュレーターのような役割を担う時代が訪れようとしています。そしていずれは、友人にさえなるかもしれないのです。

2.企業における新たなスケーラビリティ

  • AIは、確かに、意思決定の自動化やプライバシー、コンプライアンスへの準拠など、新たな領域のリスクを秘めています。しかし同時に、デジタル変革に向けた現行の取り組みの一環として、多くの組織が積み上げてきた努力を拡大し拡張できる、さまざまな新しいビジネスチャンスももたらします。こうしたチャンスは企業活動のあらゆる部分に訪れますが、IoT的な観点からは以下のような例が考えられるでしょう。
  • 顧客へのサービスやサポート:チャットボットについては話題になる機会が増えていますが、仮想アシスタントの各種デバイスへの広がりによって、企業がサポートを拡大できることは確かです。AIベースのエージェントは、よくある単純な問い合わせに応えるには最適といえ、さらに、より複雑だったり、より機密性の高いサポート案件を人間の担当者に転送する役割も果たせます。また、同じ情報を何度も確認する必要がなくなり、サポートチャンネル間の連携も高まるでしょう。ダイアログフローなどのサービスを利用して自社製品に自然言語の処理能力を付加すれば、ブランドごとに顧客のサポート内容に最適化されたインターフェースを提供することができます。たとえば、ルーターに対してWi-Fiの構成やセキュリティ診断を実行するように声で指示したり、ネット接続された愛車に対して次のオイル交換のスケジュールを決めるように頼める世界を想像してみてください。
  • 営業:営業担当者にモバイルデバイスやウェアラブルデバイスを支給して、現場で情報を取得し、ログに記録できるようにすることは、もはや珍しいことではありません。しかし、コンピュータの撮影・表示機能とディープラーニング、そしてIoTの進歩によって、営業担当者はさらに新しい機能を利用可能となっています。たとえば、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)が、B2B/技術販売ツールとしてだけでなく消費者への営業ツールとしても普及しつつあるのは、その一例です。また、工業分野においては、VRの利用によって、注文書にサインする前に機械や部品、工具の細部を視覚的に確認できるようになります。さらに、消費者向けのビジネスでは、ユニクロをはじめとするいくつかの企業が、顧客が自分の服を着たままで商品を「試着」できる仮想試着室の試みを進めてもいるのです。

3. エコシステムのインテリジェンス

IoTとAIの間の基本通貨にあたるものは、データです。最近のAIの復権は、過去数十年にわたって何十億もの既存のIoTやそれに準じたデバイスから生成された、膨大なデータが原動力となっています。一方、IoT市場では、より詳細な分析を素早く行い、玉石混交のデータから有用な情報を抽出して、新しいサービスを実現する役割を担っているのがAIです。そして、すでにこうしたデバイスには、単なる「スマート」からより深い「インテリジェント」への変化が起こりつつあります

  • 「スマート」とは、つい最近まで「インターネットに接続して、付属のモバイルアプリを利用する」という意味に過ぎなかったところがあります。
  • 「インテリジェント」とは、 「デバイスが、ユーザーやサービスプロバイダー、その他のデバイスだけでなく、ネットワークや製品ライン、あるいは全製品群に含まれるすべてのデバイスとの相互作用からも学習できる能力を持つ」ことを意味するものです。

「エコシステムのインテリジェンス」にIoTとAIを利用する企業の注目すべき例としては、テスラが挙げられます。同社のラインアップにあるすべての自動運転車両は相互学習を行っているのです。1台のテスラの経験がネットワーク上の他の全車両に送信され、各車両がそれを「学習」するという点で画期的といえるでしょう。

あるいは、組織をまたがるエコシステムレベルの学習も可能になりました。たとえば、テスラは、米国運輸省や競合自動車メーカーともデータを共有しています。オープンデータ、オープン開発フレームワーク、そして、共通の標準規格は、どれもAIとIoTの相互運用性と拡大、ひいては両者の社会的利益の実現において、欠かせない要素なのです。

ジェシカ・グループマン氏は、カレイド・インサイツの業界アナリストであり、共同創設者でもあります。同社は、目まぐるしいテクノロジーの破壊的変化を明確かつ実践的な戦略に変える方法について、企業のリーダーに助言を提供しています。

この記事は、Kaleido InsightsのJessica Groopmanによって執筆されたVentureBeatの記事であり、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。