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AIと自動化、その根本的な違い

「AI」と「自動化」という2つの言葉は、よく同じような意味で使われます。どちらも、様々な作業をより効率的・効果的に行えるようにするロボットやその他のデバイスの機能性を表すものです。そこには、自動車を組み立てる機械的な製造ラインや、非常時に煙探知器を作動させる信号なども含まれます。しかし、AIマシンと自動システムとの間には、かなり大きな差異があるのです。

たとえるなら、リンゴとオレンジ、DVDとVHSテープ、あるいは映画「2001年宇宙の旅」に登場するHALと、映画「ウォー・ゲーム」の中でマシュー・ブロデリックが第三次世界大戦を始めるために使った怪しいコンピュータぐらいの差があります。ところが、AIベースで自動システムを作り上げることも可能なので、多少混乱するかもしれません。しかも、すぐにそうなることが予想されています。

ごく単純化すれば、両者の違いは次のようなものです。

  • AIは、人間の思考をシミュレートできるように設計されている。
  • 自動化は、あらかじめプログラムされた規則に従っている。

とはいえ、現実には、それほど単純な話ではありません。IT系メーカーのアームがAIに関する調査を行ったところ、意外な事実が判明しました。(アップルのAI技術である)Siriのユーザーの4分の1は、それがAIパーソナルアシスタントであることを知りません。また、フェイスブックやネットフリックスなどの一般的なアプリケーションのユーザーになると、そうしたサービスがAI的な技術によって実現されていることを知っている人の割合は、さらに低くなります。この調査結果は、AIによって実現される機能について、一般にはまだほとんど理解されていないことを物語っているといえるでしょう。

自動化とは?

自動システムは、至る所で活躍しています。これが詭弁ではないことは、ここを調べればおわかりいただけるでしょう。たとえば、自動システムのおかげで、企業は100万件の顧客向けのマーケティングメールを1件1件コピー&ペーストせずに済むようになりました。また、スマートフォンのアプリで暖房の電源を入れたり、研修会社が委託企業の講座を管理したりすることも可能となっています。

自動化の目的はただ1つ。単調な繰り返し作業を機械に代行させることにあります。それによって、人は単純労働から解放され、人間としての個性を生かせる、より重要な作業に集中できるようになるわけです。そして、その結果、業務の効率やコスト効率があがり、労働生産性も向上します。

このように説明すると、AIも同じ目的を持っていると思われるかもしれません。
実は、AIとの違いにおいて極めて重要な差は、自動マシンではすべての手順を人が定義しなくてはならない点にあります。別の言い方をすれば、自動システムではワークフローなどを使用して動作方法を設定する必要があるということです。

つまり、自動化の場合には、常に「XならばY」といった手順を決めることになります。これは、自動システムに対してYを実行させるために、Xを定義するということです。要するに、自動システムとは、命令に従うのに必要かつ十分なだけの賢さを備えた機械といえるでしょう。

病欠の電話を入れたり休暇を取ることなく、与えられた仕事を常に完璧にこなす従順な労働者は存在するかと問われれば、答えは「ノー」です。したがって、企業が様々な作業や工程の自動化を推し進めてきたのもうなずけます。だからこそ、今や、地球上の重要な仕事のほとんどは、何らかの形で自動化されているのです。

AI(人工知能)とは?

映画の中には、人類を滅ぼすことになるロボットも登場します。それが一般的なAIのイメージ、というか、観客受けするAIの描写の1つでしょう。その場合、AIは自分で考えることができる、とても賢いマシンとして描かれます。

これに対し、実際のAIの本質は、人間が語り、考え、行えることを巧みにまねる技術を開発することです。

この意味において、AIは、ほとんどの人間と同様に、命令を受けて機能するようには作られていません。それが目的ではないからです。AIの目的は、(人間のように)常にパターンを探し、(人間のように)経験から学び、(人間のように)それに基づいて状況への適切な対応を自ら選んで実行することにあります。

それには、「機械学習」が必要です。これは、元々「コンピュータに明示的なプログラミングなしで学習する能力を与える」ための研究をする中で開発された技術であり、デロイトによる「Intelligent Automation Entering the Business World(ビジネス分野に進出するインテリジェントなオートメーション)」という調査では、次のような記述があります。

機械学習システムは、日付、時刻、加盟店、加盟店所在地、価格、取引の正当性など、クレジットカードの取引に関する情報のデータベースが与えられると、そこから不正の予測パターンを抽出する。そして、処理する取引データが多くなるに従って、実際の不正が発生する前に状況を予測できるところまで精度が向上することが期待される。

つまり、ここで実際に取り上げられているテーマは、単なる人間の能力の複製ではなく、それを超えた強力なシステムの創造なのです。

しかし、こうした人工的で知的な無生物が映画のように脳内に侵入してくるかもしれないという妄想を抱く前に、AIの強みが、現時点では弱点ともなることを指摘しておきましょう。AIは、規則に縛られずに猛スピードで学習できるかもしれませんが、その一方で、一般的なプログラミングではたいてい規定されている文脈を与えられずに様々なことを学んでしまう可能性もあるのです。それで、ときには周囲の空気が読めない行動に出ることがあり、たとえば学習するマイクロソフトのAIチャットボット「Tay」が、Twitterでデビューしてから24時間足らずの間に、頭のおかしい人種差別主義者的な発言をすることになったのもそのためでした。

自動システムとAIの本当の違い

自動システムもAIも、そのパワーの源は、ビジネスと同じくデータの活用にあります。ただし、大きく異なるのは、自動マシンがデータを「収集」するだけなのに対し、AIシステムはデータを「理解」するという点です。

サービス・ナウによる調査結果には、企業における自動化の影響が端的に記されています。「収益成長率が20%を超える企業の業務は平均して61%自動化されている。一方、成長が横ばいかマイナス成長の企業の自動化割合は35%に過ぎない。」

もちろん、これらの数字は、生産性向上や業務効率の改善、事業拡大のような重要課題に従業員が真剣に取り組む時間の確保など、自動化に付随する様々なメリットを含めて多くの要素に起因するでしょう。しかし、根本のところではデータが関係します。それは、自動マシンが、試合中にガムを噛むサッカーチーム監督のごとく、ひたすらデータを「咀嚼」し続けて生まれた結果だからです。

その膨大なデータをAIが処理することにとって、企業は従来にも増して賢い経営判断を行うことが可能になります。この組み合わせによって生まれる新たな能力が、すでにビジネスのあり方を変えつつありますが、それも当然のことです。マッキンゼー・アンド・カンパニーのレポートにも、こう書かれています。

破壊的なデータ駆動型モデルとその能力は、すでにいくつかの業界を変革しつつあり、今後さらに多くの分野に波及する可能性がある。特に以下のような問題点に対して、新しいデータ駆動型のアプローチは、破壊的な改革をもたらす。

  • 需要と供給の非効率的なマッチング
  • 遊休資産の拡大
  • 消費者の行動データが入手可能であるにもかかわらず続く、大量の人口統計データへの依存
  • 膨大なデータを扱う作業における人為的なバイアスやミス

ここで、改めて自動システムもAIの根本的な違いを振り返っておきましょう。つまり、前者がデータを「収集」するのに対し、後者はデータを「理解」するということ。そして、互いを完全に補完しあえる存在であることです。

膨大な量のデータを自動的に収集できるマシンと、その情報の意味を知的に理解できるシステムを組み合わせることによって、私たちが、個人として、企業として、人類として、どれほど大きな力を持つことができるのか想像してみてください。
今は、まだ、ほんの始まりに過ぎないのです。

Dave Evansは、クラウドベースの企業向けオールインワン学習管理システムを提供するAccess Planitのマネージングディレクターです。
この記事の初出はMediumです。Copyright 2017.

この記事はVentureBeatのDave EvansおよびAccess Planitが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いします。