進まない日本企業の女性活用、実践から語る3つの問題点と解決策

少子高齢化に伴う労働人口の減少により、企業では優秀な人材の獲得が今後ますます難しくなる見通しです。そこで重要となるのが女性の活用。しかし、女性が活躍する組織づくりは難しく、意識の面では進んでいても制度や仕組みが追いつかないという現状があります。企業が女性の活用を推進するために必要なことは何でしょうか。
【Fujitsu Insight 2017「働き方改革」特別講演レポート】

女性役員の比率は1.1%、進まない女性の活用

株式会社キッズライン
代表取締役
経沢 香保子 氏

私は、26歳で起業し、2000年に女性向けマーケティングを手がけるトレンダーズ株式会社を設立しました。「女性に特化した」マーケティング会社は国内でも珍しく、2012年には東証マザーズに上場。その後、2014年に、スマホアプリで手軽にベビーシッターを呼べるサービスを提供する株式会社キッズラインを立ち上げました。なぜ2度も起業したのか。その理由は「女性の働き方改革を実現しなければいけない」という強い思いがあったからです。

なぜ企業の女性活用が進まないと思いますか?日本の女性は、世界と比べて大学進学率も高く優秀です。しかし、企業における女性役員の比率は圧倒的に低く、わずか1.1%。先進国では最下位のモロッコに次いで2番目に低く、1位のノルウェーと比較すると30分の1以下です。また、出産で7割の女性が辞めているという事実もあります。

女性役員の比率が低いと、決定権を持つ女性が少ないために、女性活躍推進のための制度は男性には理解されず、基本的に拒否される傾向にあります。

また、少子高齢化による労働者不足の点から見ても、女性社会貢献は必要ですし、時代の流れとして、アイデアや感性が必要とされてくるでしょう。お客様に対するホスピタリティやアイデアなど、女性らしい感性が男性の力と結合することによって、新しいサービスや価値が開拓されていくことが考えられるからです。その意味でも女性の管理職が増えることは重要で、男女半々の比率が理想です。

女性活用を妨げる3つの問題とは

女性活用が進まない原因は3つあります。1つ目はキャリアプランが描けないこと。私は女性支援を15年以上続けていますが、優秀な女性が出産後に仕事場に復帰しても、ルーティンワークしかさせてもらえず、キャリア形成を諦めるいわゆる「マミートラック」に陥り、退職してしまう女性が多いと感じています。

2つ目は組織の中にロールモデルがいないこと。男性は社長や役員になるなど、キャリアを長期的に描いている人が多い。同様に、女性も大きな夢を描けるような会社にすると、いい流れができます。

もう1つは「時間がない」ことです。子育てと仕事を両立するのは本当に「しんどい」。私の経験からしても、時間がないゆえに会議に参加できないとか、スケジュール通りに仕事が終わらないこともありました。

経営者の意識を変え、長期キャリアプラン、テレワークなどで問題を解決

じゃあ、どうすればいいのでしょうか? 実際には、この3つの問題は全て解決可能です。まず重要なのは、出産前マネジメントです。産休を取ってから、復職後のことや今後のキャリアを描くのではなく、経営者としては、出産前から教育しておくことが必要です。私は社員に「女性は独身時代が一番仕事ができる。だからこそ、いかに独身時代に周囲の信頼を勝ち得ておくか。『信頼貯金』の残高を増やしておくかが重要だ」と言い聞かせています。

これは、女性だけの問題ではなく、介護休暇後の復職など、働く人全てに関わる問題です。コンディションのいい時に信用貯金をして、戻ってきて欲しいと言われる人材になるよう教育することは、上司、経営者の大切な仕事です。

もう1つは復職マネジメントです。あまり長い産休はポジティブには働きづらいと考えます。もちろん、一人一人によって状況は違うと思いますので、出産後の会社との距離感の保ち方が重要です。経営者は、会社との距離を遠ざけすぎないため、定期的にコミュニケーションしたり、社内のイントラネットに自宅からアクセスできるようにするのは効果的です。

テレワークで何らかの業務に従事し、会社と付かず離れずの距離を保つことによって、復職時の不安を軽減するとともに、スムーズに仕事に戻ることができるでしょう。弊社ではグループチャットを活用して、産休や育休中もコミュニケーションを取り、希望すれば、自宅でできるリサーチなどを手伝ってもらったりすることもあります。

また、女性リーダーのマネジメントとして、外部の研修や女性リーダーのネットワークなどに参加してもらい、女性リーダーとしての自覚を学ばせる。ロールモデルを外に見つける機会を与えることで、内向きにさせず、会社全体の視界も広げていくことが重要です。

家事と育児のアウトソーシングで女性の負担を軽減

さらに、女性がもっと活躍できるようするために企業が取り込むべきことは、「集中して働ける時間」を得られるように支援することです。具体的には、女性が家事と育児から開放されるよう、アウトソーシングできるサポートをすることです。

それは企業の役割ではないと思うかもしれません。しかし現実には、保育園や保育士は不足し、待機児童問題は解決の目途がたたず、女性が働く時間を手に入れることは難しいのです。例えば、社員の家庭に待機児童がいる場合、ベビーシッターの利用料を企業が折半している例もあります。企業がベビーシッターの料金をサポートしてくれるのなら3カ月程度で復職したいという女性も増えています。

当社は、スマートフォンからベビーシッターを呼べるサービス「KIDS LINE(キッズライン)」を提供しています。この事業を立ち上げたのも、家事や育児をアウトソースできる環境を整えたいという思いからです。家事と育児のアウトソーシングに対して、企業や組織がもっと積極的になれば、女性の活躍を妨げる問題を解決できるはずです。

女性活躍の土壌作りが、企業・社会にとって有利な時代に

労働人口の減少が進む中、今のうちに優秀な女性を確保して、女性管理職が生まれる流れを作っておくと、今後非常に有利になります。女性が活躍する土壌を作るには、採用面を強化するだけでなく、女性が復職しやすい取り組みを行っている、女性のキャリアプランをしっかり描いている、そして女性が働く時間を確保できるように家事や育児のアウトソースを支援しているといった事例を今から作っていく必要があります。

ポイントは最初にどういう目標を設定するかです。妊娠、出産、復職という節目で会社としてどのようなプランを提示できるか。それができれば、女性が活躍する組織は自然に生まれると思います。日本がもっと元気になるには、女性が生き生きして誰もが子供を生みやすい社会になること。これが一番です。そうした社会作りを皆さんと一緒に進めていきたいと考えています。

登壇者
  • 株式会社キッズライン
    代表取締役経沢 香保子 氏