実践、ビジネスのあり方を変える『働き方改革』~UXデザインにより働き方の「ありたい姿」を描く~

「働き方改革」の実現には、経営と従業員が、どういった「働き方」を理想としているか、「ありたい姿」を描くことが大切です。しかし、「ありたい姿」を思い描くこと、さらにはそれを全社のコンセンサスとして共有することは簡単ではありません。そこで、注目されているのが、「実現したいこと」から考える「UX(ユーザーエクスペリエンス:ユーザー体験)デザイン」によるアプローチです。
【Fujitsu Insight 2017 セミナーレポート】

働き方改革における各社の取り組み

世の中では「働き方改革」が叫ばれていますが、現実的な問題として特に大企業では現場の従業員が常に業務に追われ、「時間がない」状況です。就業時間中は会議やメール処理、依頼された資料作りをこなし、自分の仕事ができるのは定時後になってしまうのが実情という声をよく耳にします。
イノベーション創出を目指して様々なナレッジを活用し、さらに社外ともコラボレーションしようという動きも重要です。しかしそのためには様々な無駄をなくし、生産性向上により時間的余裕をつくることが必要です。
富士通総研(以下、FRI)では、グローバルでの競争力強化や持続的成長を目指した各企業の「働き方改革」への取り組みを支援しています。FRIによる支援は、Office365やBOXに代表されるコミュニケーション・情報共有基盤、さらにAI(人工知能)やIoTなど最新のテクノロジーの活用も視野に入れて徹底的に無駄を無くすことから始めるところが特徴です。2割生産性を向上することができれば毎週1日分の余裕ができます。そうすれば現在の業務の品質を上げ、さらに新しいことへのチャレンジも実現可能となります。
下記の図は、FRIが支援してきたお客様の取り組みの一部をマトリックスで示したものです。

「モバイルワーク」や「テレワーク」により移動時間の無駄を無くしながら、効率的に人や情報にアクセスできる環境を提供することは多くの会社が取り組んでいます。ワークライフバランスの実現に向けても改めて注目されています。
無駄の温床と言われる「会議」ですが、情報共有を目的とした会議は社内SNSやポータルによる代替手段に置き換え、さらにスケジュール調整の効率化やWeb会議の活用など、運営そのものを見直す動きもあります。
これらの前提となるのが、社内の「ペーパーレス化」です。大量の紙資料を常に持ち歩くことは現実的でなく、遠隔地との会議で紙を配ることも不可能です。逆に全てデータ化されていると様々なデバイスから閲覧でき、検索も容易です。有益な情報であればすぐに社内関係者と共有できます。当然、会議資料の準備などの無駄からも解放されます。
イノベーション創出に向けては、「社員のつながりを強化」、「ナレッジ活用」といった取り組みに着手する企業も増えてきています。他企業や有識者などのパートナーとのコミュニケーションや情報共有の仕方も社内と同様に見直し、社外コラボレーションを加速させることも競争優位性を生み出すためには重要です。

なぜ働き方改革が求められるのか?

「働き方改革」は、政府がその取り組みを牽引していますが、その実現に向けては、日本企業の労働生産性の低さや雇用における需給関係の変化など、改善すべき様々な課題があると感じています。グローバルでの競争環境においては従来の日本企業の常識ややり方は通用しないと考えます。

近い将来、日本では労働人口の減少が課題としてあげられていますが、一方でAIの積極的な導入による大量の余剰人員の出現なども予測されます。マニュアルのある仕事は全てAIにとって代わられます。生産性向上への取り組みだけでなく、新しい時代に適応するための従業員教育や意識改革など、雇用継続への取り組みも企業に課せられた義務です。従業員も自らの専門性を高め、変わることへ挑戦する必要があります。

「働き方改革」を成功に導く5つのポイント

次に「働き方改革」を成功に導くポイントを紹介します。これは、私が企業の「働き方改革」を支援していく中で得た「5つのポイント」です。具体的には「Vision」「Scene」「Measurement」「Action」「Passion」の5つで、頭文字を合わせて「VSMAP(ブイエスマップ)」と呼んでいます。

「Vision」は、変革を目指す姿を全社員に対してわかりやすく伝え、共感を得ることです。その具体的な方法の一つにビジョンマップがあります。
ワークスタイル変革全体のビジョンマップだけでなく、例えば、定着化し効果創出することが難しいテレワークなどの取り組みも対象者やマネージャーとワークショップを実施し、その結果をビジョンとしてデザインするケースもあります。

「Scene」は、現場の業務がどのように変わるかを具体的に定義します。コミュニケーションのやり方や情報活用が、オフィスや営業、現場で現状の姿から変革後はどのように変わるかを1枚ずつワークシーンとして整理します。FRIでは、これまでの支援経験をベースに100を超えるシーンをテンプレート化しています。
「Measurement」は、変革の効果を定義し、モニタリングすること。期待する効果を定量、定性の両面から設定することや、直接的に費用削減につながる項目などから投資対効果を計算していきます。
「Action」は、ワークシーンをもとに必要な全ての施策を抽出します。テクノロジーの活用だけでなく、ルール・制度の見直し、従業員の意識改革など、様々な施策を組み合わせて実施します。
「Passion」は、経営層から現場メンバーまで、想いを反映した計画づくり、施策づくりです。

「働き方改革」を成功に導くための「UXデザインアプローチ」

では、「働き方改革」を成功に導くための考え方や方法論は何か。その一つとして、自社の10年後、20年後といった未来 を見据えた働き方、関係者が共感できる"ビジョン"を描く「UXデザインアプローチ」を提案します。足元の課題や問題だけでなく、ユーザー自身の本質的な欲求や実現したいコトからアプローチすることが重要であり、そのポイントは「デザイン思考」と「共創」です。

「デザイン思考」とは、デザイナーが行っている思考法や創作手法を誰もが参加できるようにプロセス化し、ビジネスにおける顧客価値や市場機会の創出に活用する手法のこと。UXデザインでは、未来志向で"ありたい姿"を描きます。まずは"現在の姿"を知り、そして将来のありたい姿をワークスタイルビジョンとして中長期的な目標を共有します。そこから"ありたい姿"を実現するための短期事業施策を導き出します。

UXデザインでは、参加者が主体的な立場で、共有できるビジョンを未来志向で描き、ビジョンの実現に向けたステップに取り組むことが重要です。そのための共創プラットフォームとして、「HAB-YU platform」があります。新たな価値づくりや様々な課題発見や解決に取り組む共創プラットフォームです。普段とは違った環境でワークショップを計画したり開催したりすることで関係者の想いを引き出し、テーマの確定や関係部門との共創で"あるべき未来の働き方"を描くことができます。

「働き方改革」推進におけるFRIの強み

これまでFRIでは各業界のリーダー企業を中心に働き方改革の企画から定着化までトータルで支援してきました。FRIでは、「働き方改革」を「ビジョン・計画」「準備」「実行」「持続」のフェーズに分けて考えています。ビジョン・計画フェーズではUXデザインコンサルティング、準備フェーズではプロジェクト立ち上げ支援、実行フェーズではテンプレートを活用した会議や文書管理、セキュリティ、コミュニケーションマナーなどのルール整備やポータルデザイン、持続フェーズでは各種教育やワークスタイル成熟度をベースとしたアセスメントを提供します。
50社を超える働き方改革支援実績によるノウハウ及び各種ツール・手法を活用し、企業が「働き方改革」に取り組むときの課題・ニーズを捉え、改善策(意識改革、ルール、ICT)を導き出せるのがFRIの強みです。

働き方改革は、単なるテレワークや残業削減といった目先の取り組みだけでなく、ビジネスを強くするためのものです。そのために様々な環境変化に対応しながら、労働生産性を含めた働き方をグローバルレベルに引き上げ、強い個、強い組織を作ることに取り組む必要があります。
働き方改革をこれから始める企業は先行企業の遅れをとることになりますが、本格的な働き方改革は実は始まったばかりであり、後発企業は各事例などを参考に効率的にすすめることができるというメリットがあります。

登壇者
  • 株式会社富士通総研
    コンサルティング本部産業グループ
    マネジングコンサルタント 菊本 徹