"空飛ぶクルマ"という夢を、実現するために。(後編)

【未来を創るチカラ Special】CARTIVATOR代表 中村翼×TechShop Japan 代表取締役社長 有坂庄一

「あれこれと指示を出すよりも、メンバーのやりたいことをどんどん引き出したほうが、トータルでアウトプットのレベルは高くなると思います」(中村)

前編からの続き)

有坂:最初、仲間内でやってたベンチャーが急拡大して、100人企業になった状態ですよね。人数がそれだけ変わってもマネジメントができるというのもすごい!

中村:僕自身が全てのマネジメントをやっているわけではないのですが、全体をなるべく少人数のチームに分けて、細かいタスクに関してはチームごとに解決してもらうようにしています。みんなやりたいことをやるために集まっているので、ピラミッド型の経営だと活動が成り立たなくなると思うんです。ミッションやビジョンをブレないようにするというのはリーダーとして心がけていますけど、それ以外は、メンバー発意でどんどんアイデアを出してもらうようにしています。

有坂:"イノベーション型経営"っていうのかな。そういうカタチが理想的なんでしょうね。

中村:本当に、個人の発意から出てくるアウトプットって恐ろしいくらいすごいんです。変な人が集まってるっていうのもあるんですけど(笑)。あれこれと指示を出すよりも、メンバーのやりたいことをどんどん引き出したほうが、トータルでアウトプットのレベルは高くなると思います。

「このプロジェクトは、技術だけじゃなく、働き方も最先端。その点にも注目すべきだと思います」(有坂)

CARTIVATOR代表 中村翼さん(右)と、TechShop Japan代表取締役社長 有坂庄一(左)

有坂:このプロジェクトって、完全に新しい働き方なんですよね。拠点を複数持って臨機応変に動きながら開発を進める"モバイル型"であり、多様な人材が集まる"オープンイノベーション型"であり。チームを小さく分けて総括させるっていうやり方も、それが最適なものとして、徐々に形作られていったわけで。このプロジェクトは、技術だけじゃなく、働き方も最先端。その点にも注目すべきだと思います。

中村:こういうと、なんだか偉そうに聞こえてしまうかもしれないんですけど、働き方改革にしても、オープンイノベーションにしても、「目的は何なのか」の議論が抜けがちだと思うんです。例えば、空飛ぶクルマを作ろうとしたら、一企業じゃ当然できないわけで、必然的にオープンイノベーションになるんだと思います。

有坂:全く同感です。やりたいアイデアとか熱い思いというのがあって初めて、共創やオープンイノベーションは実現する。目的じゃなくて手段なんですよね。

中村:もっと具体例がいろいろ出てくるようになると「そんなのもあるんだ」って、後に続くような人たちが出てきて、新しいビジネスのやり方が広がっていくかもしれないですね。例えば、うちは、メンバーの中にプログラミングを学んでいる中高生もいるんですよ。っていうとみなさん驚くんですけど、彼らが何をやっているかというと、SkyDriveのゲームを作っているんです。出会いのきっかけはある講演なんですが、その時に「ゲーム作ってみたいんだ」って言ったら、「僕たち作れますよ」って言うんで、「じゃあ、一緒にやろう」みたいな、軽いノリで。

有坂:それは、また新しいですね。オープンイノベーションっていうと、他企業とか、異業種といった"横の繋がり"に目がいきますけど、世代を超えた"縦の繋がり"もあるんですね。

中村:あえて中高生を狙ったわけじゃなく、求めているスキルとマインドが一致したというだけなんです。僕ら世代にもプログラミングをやれる人はいますけど、どっちかというと今の子たちの方が慣れているし、彼らは彼らで、横で実物を見ながら、それをモチーフにしたゲームを作れるというのがすごく刺激的みたいで、インタラクションがある。すごく新鮮です。

「残り3年で、みんなヒーヒー言ってるんですけど(笑)、しびれるくらい短期間のほうが、やってやろうっていうモチベーションにはなると思います」(中村)

有坂:「2020年にSkyDriveを世界デビューさせる」というのを目標に掲げていらっしゃいますよね?

中村:はい。2025年には市販化を予定しているんですけど、その手前にもう一つ、大きな目標を刻みたいと思って、プロジェクトを立ち上げた時、一番最初に決めたのが「2020年世界デビュー」でした。

有坂:2014年にスタートしたから開発期間は6年。これって、かなり短いですよね。

中村:10年となるとモチベーションがなかなか持たないし、3年だと実現が厳しい。6年だと、頑張ればなんとか行けるというラインなんです。残り3年で、みんなヒーヒー言ってるんですけど(笑)、しびれるくらい短期間のほうが、やってやろうっていうモチベーションにはなると思います。

有坂:今は、どういう段階なんですか?

中村:来春までには無人安定飛行実現を目指してプロジェクトを進めているところです。先日、1/1スケール試作機の設計とデザインが固まったので、これからTechShopの機械を使って、部品などを作っていきたいと考えています。そして、無人安定飛行の確証が得られたら、次はいよいよ有人飛行です。ただ、あと3年しかないので、実際、有人機の設計も並行で進めています。こちらは法規の話も絡んでくるので、そのあたりの調査もやっていますね。2019年の頭には、人を乗せて約30メートルの高さで安定飛行させる予定です。

有坂:30メートル!結構高いですね。

中村:1回飛び上がって数メートルで安定してしまえば、あとはパワーがあれば上がっていくこと自体はできるんです。まずは数メートルのところで安定浮上するというのが課題ですね。そこがしっかりできないと、次にいけないので。

「下町の職人さんとも連携したいです。やはり人と人のつながりというのはイノベーションにとって、欠かせない要素だと思います」(中村)

有坂:これからTechShopで実現してみたいアイデアってありますか?

中村:まず、SkyDrive の1/20スケールの模型を作って、こちらに常設展示させていただきたいなと思っています。それと、手のひらサイズの小型模型を自分の好きなデザインにカスタマイズするDIYイベントなんかもやってみたいです。子どもたちとやったらすごく楽しそうですよね。
あとは、SkyDriveの足回り設計を東京でやっているので、TechShopで試作機の部品を作りたいと思っています。東京は大田区や墨田区に自動車関連の素晴らしい町工場が沢山あるので、下町の職人さんとも連携したいです。やはり人と人のつながりというのはイノベーションにとって欠かせない要素だと思います。

有坂:CARTIVATORさんがここを拠点としてくださることで、TechShopのメンバーにも、すごくいい刺激になると思います。これから世間の注目も益々高まっていくでしょうしね。有名になると批判も増えると思うのですが、気にせずに突き進んでいただきたいですね。

「"産業の新陳代謝"を自分たちで能動的に起こしていかないと、そのムズムズ感はなくならないんじゃないかな、と思います」(中村)

中村:ネガティブな意見を聞くこともありますが、なるべく余計なことは耳に入れないようにしています。誰かに言われて止めるぐらいだったら最初からやっていないですし、立ち止まっている時間はないので。商品化するときの議論は、もちろん徹底的にしなきゃいけないですけど、その前のフェーズでは、自分がやりたいからやるんだって突き進んだほうがいい気がするんです。

有坂:基本的に新しいものって、そういうモチベーションで生まれるものがほとんどですよね。「やりたいからやるんだ」「欲しいから造っちゃった」って。そのうちの何百分の1が成功したら、全体で見ると十分イノベイティブなんですね。

中村:最近、いろいろなところで講演させていただくんですけど、特に私と同じ年代が、みんなすごくムズムズしているんです。せっかくスキルもアイデアもあるのに、いろいろな制約があってなかなか出せないって。構造的な問題なのでなかなか難しいとは思うんですけど、"産業の新陳代謝"を自分たちで能動的に起こしていかないと、そのムズムズ感はなくならないんじゃないかな、と思います。

有坂:技術だけじゃなく、働き方という意味でも、すごくイノベイティブなプロジェクトで、今後が本当に楽しみです。完成したら、乗らせていただけますか?頑張ってライセンス取りますから(笑)。

中村:もちろんです!ぜひ一緒に空をドライブしましょう。

CARTIVATOR代表
中村翼
1984年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。2009年、大手自動車会社に入社し、量産車の設計に従事。一方で、2012年に業務とは別に、有志団体CARTIVATOR(カーティベーター)を設立し、次世代にふさわしい空飛ぶクルマの実現を目指している。現在、100名のメンバーと共に、組織や世代を越えた形で、2020年に向けて開発を推進中。

TechShop Japan 代表取締役社長
有坂庄一
1998年富士通株式会社に入社、米国、欧州、アジア各国におけるICTシステムのマーケティングを担当。2015年10月テックショップジャパン株式会社代表取締役社長に就任。日本におけるメイカームーブメントを拡大させ、多くの人が創造力をカタチにする社会を目指し、2016年4月に東京都港区で "TechShop Tokyo" をオープン。
「全てのアイデアは良いアイデアで、試す価値がある」
http://www.techshop.jp/