今後5年間でAIはここまで発展する

この記事では、向こう5年間のAIの社会や産業界への影響と波及効果について考察していきます。これまでの技術の進歩は10年スパンで語られることが多かったのに対し、AIの場合には、その半分の期間を基準にしなくてはならないほど、別次元の発展を遂げつつあることが理解できるはずです。

なぜ「5年間」なのか

タイトルを見て、「今後10年間」ではなく「5年間」という数字を中途半端だと感じた方もおられるでしょう。しかし、「5年間」とした理由は、AIの進化のスピードが、現時点ですでに10年後の姿を予見することなど到底不可能なほど驚異的なレベルにあるためなのです。

テレフォニカ・アルファの最高イノベーション責任者であり、オートデスクの元ディレクターであるMaurice Conti(モーリス・コンティ)氏は、2017年2月にTEDxに登壇した際に、次のように指摘しました。人類史では、まず狩猟採集時代が数百万年続き、それから数千年の農耕時代があり、さらに2百年ほどの工業化時代を経て、情報化時代に入ってからは、まだほんの数十年しか経っていません。そして、AI時代にいたっては(その概念が創案されたのが1950年代とはいえ)、実際に始まったのがここ5年以内の話に過ぎないのです。

AIとRPAの違いとは

AIは、その基本概念がRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と間違われやすいところもあるため、まずは両者の違いを明らかにしておきましょう。

RPAは、コンピューターがロボットを操作する際に、プログラムコードへの変換後に実行される細かい指示を開発する中で生み出されました。そのため、RPAはロボット型マシンなどのメカトロニクス機器との組み合わせによって、人間が行う作業を部分的または完全に自動化するために用いられます。しかし、置き換えの対象となる作業は、手動で行えるものや、反復的で明確なルールに基づいていることが必要です。

一方、AIの目的は、特定のルールに従って反復作業をこなすのではなく、作業の実行や観察を通して新たなやり方を学習することにあります。つまり、AIには、当初設定されたプロセスを向上させる目的で主観的判断を行う能力があるということです。

AIとは、単なるプログラミングから「機械学習」に移行することを意味します。機械学習では、AIが特定のパターンを「認識」し、ひいては対処方法を自ら判断できるようにするためのトレーニングが行われる点が特徴的です。

さらに、もしAIがRPAに対して指示を行うコードまで作成できるようになると、サイバネティックス(生物と機械の区別なく制御や情報処理の仕組みを研究する学問)の領域に入ってきます。それについても後述しますが、この分野では、いくつかの軍用ドローンを含むA2IM(自律型人工知能メカトロニクス)の開発も進行中です。

AIに関するいくつかの事実

この記事の内容に強い確信を持つ理由にもなった、次のような事実を紹介します。

  • 2011年、人とAIの両者に対して、ぼやけた画像内に何が映っているかを特定するように「依頼」する初の実験が行われた。エラー率は人が5%だったのに対し、AIは26%であった。ところが、2013年に再び同じ実験が行ってみると、AIのエラー率は3%にまで低下した。
  • 2015年には、AIが米国トップクラスのポーカープレイヤーにあと少しで勝つところまで進化した。ポーカーは、単に「役割を担ったカードで遊ぶ」ゲームではなく、戦略的な「思考」を要するゲームである。特に、AIがその過程で「ブラフ(はったり)をかける」方法を学習した点は特筆に値する。
  • 同2015年、AIは、文字として書かれた指示を与えられ、その内容と合致した絵を正確に描くことに成功した。
  • さらに同年、カリフォルニア大学バークレー校AIラボのPieter Abbeel(ピーター・アビール)教授率いるチームが、初めて「自分で考える」ことをロボットに「教える」ことに成功。PR2と名付けられたこのロボットは、同じ形にたたむ作業を2回繰り返す作業を行うなど、うまく衣服を扱うことができた。
  • 2016年には、いくつかのAIによる挑戦が次のような驚くべき結果をもたらした。
  • ビデオクリップの静止画像を分析して、そのシーンの次に起こると予想される結果を描いた5秒間の短いビデオを作成。AIは、画像内の人物が地面に倒れ込んだり、ボトルを開けて飲んだり、ビーチで犬が水に飛び込んだりといったことを、実際の結果に対して96%の精度で予測できた。
  • 別の実験では、人がこれまでにない状況に直面した場合にどのように行動するかを、別の状況で同一人物の行動を映したビデオを分析した後で予測するようAIに「依頼」した。すると、ここでもAIは92%の精度を達成。映画『マイノリティ・リポート』をご覧になったことがあれば、これが意味するところがわかるはず。
  • 2017年1月には、AlphaGO (アルファ碁)が囲碁の対局で世界最強の棋士を破った。これが重要視される理由は、囲碁が人間の考案したゲームの中で最も難しいとされているためである。実はこのゲームには、宇宙に存在することが計算で確認された原子の総数よりも多くの手が存在している。
  • 指数関数的なAIの進化を示す明らかな事例は「自動運転」であろう。まだ初歩的で、特定目的に限られてはいるものの、私たちの日常に加わりつつAIの事例といえる。2013年には、GoogleがBMW(ほか、非公開の他社)と共同で自動運転の実現に向けた取り組みを進めていたが、現在、両社はテスラと同じレベルで、ほぼエラーのない自動運転AIを顧客の要望に応じて車両に搭載するまでになった。他のメーカーも、すぐこの後に続くものと思われる。
  • 純粋な好奇心から、これらすべての実験で人にもまったく同じ作業を行わせてみたところ、平均精度は82%にとどまったことを指摘しておきます。

映画『2001年宇宙の旅』を観た方は、AIのHALが、宇宙船外に居る主人公のデイブに対して、「ドアを開けて中に入れることはできない」と丁寧に答えるシーンで、明確に「自由意志」を示したことを覚えておられるかもしれません。

そのようなことが、明日すぐに起こるとは思えませんが......10年もかからないともいえます。
これは、たった今こうしている間にも起きている静かな革命なのです。そして、自己認識型や自己学習型のAIが「人類」による最後の発明になることは確実でしょう。これは、AIによって人類が全滅するということではありません。それから先、新たなテクノロジーの開発はAIによって行われるようになると予想されるためです。