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世界初!自動運転レベル3がいよいよ登場、注目の"クルマ向けAI/IoT技術"とは?

世界中の自動車メーカーがしのぎを削る自動運転車の開発競争において、2017年7月に歴史的な事件が起こりました。独アウディが世界で初めて、自動運転レベル3に対応する自動運転機能を市販車に搭載すると発表したのです。

世界で初めてレベル3相当の自動運転機能を搭載する「新型Audi A8」(出所:アウディ)

レベル3以上は運転操作の責任をクルマが持つ

今、世の中を走っているクルマが備えている自動運転機能は、すべてレベル1あるいはレベル2と呼ばれるもので、ドライバーの安全運転を支援することに主眼が置かれています。

そして、自動運転機能を使っている状態であっても、それらの利用はドライバーの管理下でなければならないので、ドライバーは常に運転操作の負荷がかかっています。これがレベル3以上になると、自動運転モードにおける運転操作はすべてクルマの責任において実行されることになります。

自動運転レベルの違い

ドライバーは運転操作を一休みして、メールをチェックしたり、同乗者と顔を見ながら会話したりすることができるようになるわけです。当面は、高速道路や自動車専用道路などの特定のエリアに限定されることになりそうですが、限られた場面であってもドライバーが運転操作から解放されることの意義はとても大きいです。自動運転の技術開発が加速していることを考えると、自動運転が可能となる場面はどんどん広がることでしょう。

もっとも、現状、多くの国では公道での運転操作の責任はドライバーであることが法的に決められているので、レベル3機能の提供は法制度が整った地域から始まることになりそうです。それでも、アウディがレベル3を市販車に実装すると宣言したことにより、各国の制度担当者は法制度の見直しを、各自動車メーカーと関連企業の技術担当者はレベル3の早期の実装を迫られることになります。

レベル3が求める新たな三つのICT技術

レベル3の世界では、自動運転機能の高度化に加えて、レベル3の必須機能を実現するためのICT技術開発が求められます。代表例を三つ紹介しましょう。

第一はAI技術を活用してドライバーの状態を監視する「ドライバーモニタリング」。第二は、自動運転ソフトウエアや、クルマが多数搭載する電子制御ユニット(ECU)のソフトウエアをネットワーク経由で更新する「OTAアップデート」。そして第三はクルマが搭載するセンサー情報をクラウドで収集したり、収集したビッグデータをリアルタイム解析して最新の交通情報をクルマに配信したりする「Cloud-to-Car」です。

ドライバーモニタリング:運転動作に戻れるかを常時監視

ドライバーモニタリング技術は、レベル3で求められる運転操作の引き継ぎ機能の実装に欠かせないものです。レベル3では、自動運転モードで走行しているクルマが自動運転の継続が難しくなったときに、運転操作をドライバーに引き継いでもらいたいと警告を上げることになっています。

例えばアウディのレベル3の自動運転機能である「Audi AI Traffic Jam Pilot」は、以下の4条件を満たしたときに利用可能となっています。

●高速道路、あるいは中央分離帯とガードレールなどが整った片道2車線以上の自動車専用道路を走行
●隣接する車線も含めて、前後を走る車両との車間距離が詰まった状態
●走行速度が時速60km以下
●車載センサーの検知範囲に交通信号や歩行者がいない

このため、例えば自動運転中に走行速度が時速60kmを上回った場合、クルマはドライバーに「運転操作を代わって下さい」と警告を発します。もし、このときドライバーが眠っていれば、すぐに運転操作を再開できる保証はありませんし、運転時の安全性も確保できません。

そのような場合は、クルマは運転操作の権限をドライバーに渡さず、自動的に停止します。つまり、レベル3の自動運転車では、ドライバーを監視し、運転操作できる状態なのかどうかを常に監視するためにドライバーモニタリング技術が必要になるわけです。

ドライバーモニタリング技術では、ドライバーの表情や体温などをモニタリングしてドライバーの状態を判断します。車内に設置したカメラやステアリングに取り付けたセンサーで表情や体温、脈拍を記録し、AIを用いたビッグデータ解析に基づいた判断ツールに照らしてドライバーの状態を診断し、運転操作できる状態かどうかを判断するわけです。

これまでドライバーモニタリング技術は、運送事業者や保険会社が職業ドライバーに安全運転を促す目的で遣われていました。レベル3対応の自動車への搭載に当たっては、運転操作に戻れるかどうかを正確に診断・判断する技術開発が求められることになるでしょう。

OTAアップデート:自動運転機能の追加・高度化を遠隔実行

OTAとはOver the Airの略。つまり、LTEやWi-Fiといった無線通信技術を用いてソフトウエア更新を実行する機能のことです。OTAアップデートはすべてのスマートフォンが標準装備する機能ですが、自動車の世界でも徐々に使われ始めています。

OTAアップデートをフル活用することで有名なのは、高性能EV(電気自動車)の開発メーカーである米テスラです。テスラはソフトウエアをアップデートすることでクルマの機能を強化・拡充する戦略を採用していて、現在の自動運転機能もソフトウエアのアップデートによって提供しました。

2016年10月に「これから製造するテスラ車にはすべて、完全自動運転に必要なハードウエアを搭載します」と発表したときも、将来、ソフトウエアをOTAアップデートして、完全自動運転機能を利用できるようにする方針を示しました。

2017年7月に出荷が始まったテスラのModel 3(出所:テスラ)

これまで自動車におけるOTAアップデートは、ECUソフトウエアのアップデート用途での利用が想定されていました。これはECUソフトウエアにバグが見つかったとき、自動車メーカーは大量のリコール処理に追われることなくソフトウエアを更新できるという利便性があるからです。

今後はテスラのように自動運転機能の提供もOTAアップデートで実施するケースが増えることが予想されます。というのは、紹介してきたように、レベル3の自動運転車に関しては、法制度が整った段階にならないと提供が難しいという事情があるからです。OTAアップデートでクルマに実装できるなら、法制度が整った段階でOTAアップデートすれば機能追加できるので、製品販売時に将来の機能追加を盛り込んでクルマをセールスできます。

このように、ハードウエアの機能を最大限に利用できる機能を後から追加できるという特徴を考えると、自動車はスマートフォン以上にOTAによるソフトウエア更新の価値があるIoT機器に進化していくかもしれません。

Cloud-to-Car:クルマがIoTセンサーとなってビッグデータを作る

レベル3では、クルマが自律的に運転操作を実行する場面が出てくるため、これまで以上に安心・安全な運転操作が求められます。そのために実現が急がれているのが、自動運転に欠かせない高精度3次元デジタル地図の整備と、最新の交通規制や道路状況を高精細の3次元デジタル地図と組み合わせてクルマに配信するためのダイナミックマップの構築です。Cloud-to-Carは、このダイナミックマップの構築・更新・配信に欠かせない技術です。

Cloud-to-Carの基本的な仕組みは、車載センサーの情報をクルマからクラウドに送信することと、ビッグデータ解析の結果をクラウドからクルマに配信することです。

例えば、どこかで事故が起こったとき、事故情報と事故周辺道路の混雑状況をさまざまな情報ソースと車載センサーからの情報(位置情報、速度情報、ブレーキの踏んだ回数など)をクラウド側で収集し、現状分析と今後のトラフィック状況の予測をします。そして、該当エリアを走行しているクルマに対して、最新の交通状況を伝えたり、混雑を回避する迂回路を示したりします。

「安心・安全」な自動運転社会実現に向けて

ここではレベル3の自動運転車の開発に向けて研究開発が活発化する技術分野を三つ取り上げました。安心・安全で便利な自動運転社会の実現はクルマ本来の高度化だけでなく、さまざまな視点でユーザーに受け入れられるためのICT技術が必要になります。

富士通は、自動運転社会の実現に向け、コネクテッドカーや自動運転車に関連サービスを提供するためのプラットフォームとして「Mobility IoT Platform」を提供しています。最先端ICT技術を活用して大量のデータをセキュアかつ効率的に収集し、クラウドAIによる学習・分析、自動運転に必要な高精細3次元地図の管理・配信、そして車に搭載されたソフトウエアを安全にOTAアップデートするためのプラットフォームです。

Mobility IoT Platformを含む「富士通が考える2020年に向けたモビリティ社会」を動画で紹介しています。ぜひご覧下さい。