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地域の力で共創する いつまでも安心して暮らせるまちづくりとは

魅力的なまちを作るには、行政や医療、教育など各分野の「力」を結集することが不可欠です。各分野で「まちづくり」に取り組んでいるトップランナーの方々は、具体的にどのような取り組みで「共創」を実現させているのでしょうか。また、その取り組みの中でICTやデジタル技術はどのような役割を果たしているのでしょうか。住民が継続的に幸せに暮らせる「まちづくり」の実現に向けた将来展望について考えます。
【富士通フォーラム2017 カンファレンスレポート】

魅力的なまちをデザインする取り組みとは

カンファレンス前半は、サスティナブルな「まちづくり」と「共創」について、私たちはどのように向き合えばいいのか、自治体、医療、教育といった観点から、4人の有識者の方々にご講演いただきました。

「成長と成熟の調和による持続可能な"最幸(さいこう)"のまち かわさき」の実現

川崎市長
福田 紀彦 氏

川崎市には「Colors, Future! いろいろって未来。」というブランドメッセージがあります。川崎市はいろいろな人が集まった、多様性で発展してきた街です。この多様性を生かし、自治体や企業、地域、NPO、研究機関などと一緒に、共創によるまちづくりを進めています。

まず、自治体との連携では、待機児童問題の解消に向けた横浜市との取り組みがあります。保育所の不足は、これまでも川崎市や隣接する横浜市にとって、大きな社会課題でした。そこで、川崎市は、横浜市と市境周辺の保育所を共同で整備し、双方の市民が市境を越えて利用できるように連携協定を結びました。このような取り組みの成果もあり、2017年4月に、川崎市は待機児童ゼロを実現することができました。

民間企業との取り組みでは、ICTを活用し誰もが安心して暮らせるまちづくりを、富士通と協力して推進しています。川崎市では、市内の子育てに係わる情報がなかなか子育て世代に届かない、という問題がありました。そこで、子育て支援に関する情報を、必要とする人に適切に届ける「子育てポータル」を富士通とともに開設。スマートフォンで「かわさき子育てアプリ」というツールを作りました。これは、子どもの年齢、住んでいる地区などの必要な情報を最初に設定しておくだけで、位置情報から、近くの予防接種の場所や、イベント情報などを取得できるアプリです。2014年2月に富士通と締結した包括協定をもとに、行政の情報をオープンデータ化し、富士通の位置情報技術とLOD(Linked Open Data)を活用しています。2ヶ月間の実証実験の結果、アプリ利用者の約8割(0歳児の親の9割以上)が継続利用を希望したことから、市内全域に展開しています。

NPOとの連携では、シニア世代が孫の世代に勉強等を教える、地域の寺子屋を展開しています。川崎市は、非常に若い、核家族の多いまちです。その一方で、シニア世代も多くいらっしゃいます。そこで、川崎市は地域の寺子屋を作り、知識、ノウハウ、時間のあるシニアの方々に、お孫さん世代の子どもたちへ勉強の補習や昔遊びを教えるなど、地域のつながりを作る取り組みを行っています。嬉しいのは、子どもたちの反応です。親や兄弟以外の大人たちと話ができたことを子どもたちが非常に喜んでいるとのことです。

また、NPOと協力して障がい者の方々に就労体験をしていただく取り組みも行っています。健常者と障がい者が隔離されているように見える今の社会を、どう混じりあった社会に変えていくか。私は、非常にチャレンジングなことだと思っています。この取り組みで、ハロウィンのパレードや、川崎フロンターレのゲームにゲストではなく、ホストとして働いてもらう、就労体験を促進しています。2016年度は365人、1日1人を目指したところ、約480人の障がい者の方々に参加していただきました。

研究機関との取り組みでは、川崎市をライフサイエンスの拠点にすべく、「殿町国際戦略拠点 キングスカイフロント」において、研究機関とのコラボレーションを進めています。革新的医薬品、医療機器の開発・製造と健康関連産業の創出をめざし、国立医薬品食品衛生研究所をはじめ、ライフサイエンス関係の企業の立地計画が進んでいます。

このように、川崎市は行政だけでは解決できないことを、いろいろな主体と協力しながら、社会課題の解決と新しい価値の創造に意欲的に取り組んでいます。また、ICTの技術が川崎市の掲げる「多様性を受けとめて、価値を創造する」ということにもつながっていくと期待しています。

医療・行政の現場から池田市のまちづくりをデザインする

池田市役所 市民生活部 にぎわい戦略室
地域活性課 課長 藤本 智裕 氏

「医療・行政の現場から、池田市のまちづくりをシステムデザインする」というお話しをしたいと思います。私は、大阪府池田市で地域創生を担当しています。そのかたわら、関西学院大学MBAでシステムエンジニアリング学(システムデザイン)を学んでいます。
私は、この共創の時代に、まちづくりを推進している一職員として、想いをカタチにする際に「システムデザイン」という問題解決のための思考が非常に重要であると考えています。システムデザインとは、答えのない問題に直面した時に、物事や事象を1つのシステムとして捉え、全体を俯瞰しながら解決方法を設計していく手法です。

今、なぜ共創が求められているのでしょうか。それは、予測不能で不確実な未来が待っているからです。私たちの周りには、高齢化社会や、情報格差、災害など、複雑に絡み合う問題が存在します。例えば、医療現場では患者と医師というようなステークホルダーの間に情報の非対称性が存在します。そのため、医療の質を評価することが難しいと言われています。さらにこの情報の非対称性のために、ヒト、モノ、コトのつながりが掴みづらく、問題が起きても他人事となりがちで、医療の質の低下に結びつく恐れも指摘されています。

このような問題は、医療の分野だけでは解決できません。専門領域内で、合理的な判断だけを繰り返しても、新しい視点は生まれて来ないからです。そこで、閉じた世界の外側から全体を俯瞰してシステムとして捉え、いろいろな視点から解決への方策をデザイン設計することが重要になるのです。

システムとは目的があり、その目的を達成するための構成要素で成り立ちます。問題を全体俯瞰し多視点から、1つ1つの要素のつながりを意識して、構造化、可視化することが課題の解決につながります。例えば、自動運転自動車で考えると、自動運転できる「自動車システム」を作るだけでは駄目で、自動運転車が走る仕組み、ルールの策定までやって「自動運転車が走る社会システム」を作っていこうという考え方です。そういう意味では、我々のいる時代も一つのシステムとして捉えることができます。

このシステムデザインの考え方で、情報の非対称性の解消につながった事例の1つに、地域包括ケアシステムがあります。地域医療と介護の連携は、地域包括ケアシステムの構築に欠かせない重要な要素です。地域にある医療施設などの情報は、医師会にも、行政上にも存在していましたが、どの施設がどういう機能を果たしているか、という情報までは、実際に連携した医療機関でないと分からず、施設間での情報の非対称性が存在していました。そこで、施設情報を共有する仕組みとして、医療介護連携マップを作成。単純ですが、全ての施設の情報を一元化させたことで、施設間での連携が容易になり、その結果として、日常生活圏で必要な医療支援や介護サービスを、高齢者や患者様がスムーズに受けられるようになりました。

このように今、私たちが日々直面する課題は複雑化し、高度専門分化しています。そして、ステークホルダーの間で情報の非対称性が大きくなり、皆がどこか他人事になりがちになっています。そのような時、一人一人が問題解決に向け、広い視点でヒト、モノ、コト、情報の繋がりをつくる力を身につけ、課題を自分事として捉えていくことこそが、魅力的で居心地の良いまちづくりにつながるのではないか、と私は考えています。

地域住民が「その人らしく」安心して暮らし続けるために

福岡県医師会副会長
福岡東医療センター名誉院長
上野 道雄 氏

地域住民が、その人らしく、安心して暮らし続けるためには、必要な時に必要な病院情報を分かりやすく手に入れることができる、ということが一つの条件です。
地域医療システムでは、電子カルテの改善や地域医療ネットワーク構築を通じて情報共有の途を考えてきました。地域医療には全体像を見ることが大事です。ところが全体像は誰にも見えない、という問題がありました。

そもそも病院情報は莫大です。地域に点在する医療は診療環境も違います。診療情報を共有が容易ではなく、地域医療と病院との間に情報格差が生まれます。膨大な病院情報を統合整理して、分かりやすい表現で出力するには、ICTの活用以外に方法はありませんでした。

また、誰もが見て分かる情報で伝え、そして継続させる必要もありました。時間的、空間的に隔絶したリハビリや栄養指導などからの情報を集めて、医師と看護師が了解できるようにする。そして、この情報を地域の人たちも理解できる内容にして返す取り組みを行いました。これを電子カルテに打ち込むことで、情報はすべての関係部署に一斉送信されます。地域に情報が伝達されることで、全体のことが把握できるようになります。

介護保険の主治医意見書も電子カルテから自動出力できるように対応しました。病院と行政が双方向性の伝達で内容の確認や情報の取得も可能となり、患者にとってメリットとなっています。
膨大な病院情報を機能別に整理して、他の職種にも分かりやすい表現で出力する。病院と地域の双方向性のネットワークで院内外の情報共有の向上を図ることを実現したつもりです。医療と介護、患者をつなぎ、地域住民がその人らしく、安心して暮らし続けられるまちづくりの実現をこれからも目指していきます。

オープンエデュケーションによるまちづくり

国立大学法人九州大学
名誉教授
村上 和彰 氏

今日は、オープンエデュケーションによって、今後のまちづくりがどのようになっていくのかについてお話しします。オープンエデュケーションとは、一人ひとりの無限の可能性のための次世代教育環境のことです。私は、まちづくりを人と組織が共存するビジネスエコシステムと捉えています。このビジネスエコシステムを作ることは容易なことではありません。国や行政に任せるのではなく、地域の課題は地域、つまり私達で解決する、という意識を持つことが非常に重要です。そのためのまちづくりには4つのステップがあると考えます。

ステップ1は、マインドセットを変えること。つまり、まちづくりをするのは私たちであり、他人任せにしないという意識を持つということです。その原動力は、デジタル技術とオープンネス、つまり自治体によるオープンデータの公開、そしてオープンエデュケーション、住民の継続的な学びです。データを公開することによって、データからナレッジが生まれ、ナレッジを基にしてアクションが起きる。そういうパイプラインがあちこちの自治体で起きています。また、市民もオープンデータを活用して、従来は行政が行っていたサービスをアプリとして提供するようになりました。つまり、地域の住民が自分たちの力で課題を解決することが可能な時代になってきたのです。
ステップ2は、協働型経済でビジネスエコシステムをデザインし、まちを作って行くことです。今、ビジネスの世界では、デジタルテクノロジーによって、ビジネス構造を根本から変えていくような破壊的なイノベーションが起きています。その代表例がシェアリングエコノミーです。これは、売る側と買う側、貸す側と借りる側との間に信頼関係が構築されていることが必要です。この点も、デジタル技術を活用し評価が可能な時代になっています。

ステップ3はデジタル技術、オープンネスの存在を前提にして社会システムを再構築する、という発想です。今、機能している社会システムを再構築する必要は無い、と考えるかもしれません。しかし、少子高齢化社会で税金収入が減っている今、税金に変わる収益モデルをどう構築するかなど課題が存在しています。

そして、ステップ4は、まちづくりとオープンエディケーションの掛け算で、まちを活性化する発想です。今は、100歳まで生きる時代。学生までに受けた教育の知識で100歳まで生きることはできません。まちを活性化するには、人々が生き生きと学べることが必要です。オープンエディケーションとは、一人ひとりの無限の可能性のための次世代教育環境です。富士通は、デジタルラーニングプラットフォーム『Fisdom(フィズダム)』というサービスを提供しています。このようなICTとのシナジー効果で、これからの私たちのまちを作っていくことが重要と信じています。

デジタルテクノロジーで広がる 持続的なまちづくりの可能性

<モデレーター>
慶應義塾大学
医学部 医療政策・管理学教室 教授
宮田 裕章 氏

カンファレンス後半は、先に登壇した4名の方々にモデレータとして宮田裕章氏、富士通からは佐藤秀暢、岡田英夫を加え、講演に補足する形で意見交換を行いました。

自分事として捉え、相手の立場に立つことが共創への第一歩

「これまでの日本は技術イノベーションにこだわるあまり、全体を捉えた形で物事を変えていくことが苦手だった。これを打破していくのがシステムデザインの手法だと思う」と唱える藤本氏に、モデレータの宮田氏は「問題解決にあたり、現場でいろんなアイディアを収束して結実するのは難しかったと思います。どのように乗り越えたのでしょうか」と質問しました。それに対して藤本氏は「収束という意識は自分にはないが、学問的にシステム思考があるよ、と教えていただいたことがとても強かった」と語りました。そして、「医療の世界は目の前にたくさんの課題があります。それをシステム思考という考え方で実践できたことが良かった点だと思います。」と述べ、現場の切迫感とそれを『自分事』でとらえるという組み合わせが、状況の打破につながったことを示唆しました。

続けて、宮田氏は、医療と介護、患者をつなぐ地域医療システムに取り組んだ上野氏に、システムの構築に取り組む中で、一番印象に残ったことを尋ねました。上野氏は「僕たち医師に欠けているものは、一緒に仕事すべき介護の人、病院の中で仕事をされる方々のことをあまりにも知らなったということでした。」と率直に答え、ICT活用による診療情報の共有が、相手の立場に立つ心の余裕を生み、ステークホルダーの連携につながったと振り返りました。

住み心地の良いまちであり続けるためにICTができること

富士通株式会社
公共・地域営業グループ VP
佐藤 秀暢

さらに宮田氏は、富士通の佐藤に、地域医療システムの現状とあるべき姿について質問しました。佐藤は「医療職だけでなく、例えばケアマネージャーやホームヘルパーの方々にも使っていただけるネットワークを提供し、利用者のすそ野を拡大していくことが必要だと考えています。富士通の持つデジタル技術で、業態の違うお客様同士をつなぎ、いつまでも安心して暮らせるまちづくりに貢献したいと考えています。お客様と共に考え、価値の高いコンテンツやサービスを富士通は提供していきたいと考えています」と富士通の考えを説明しました。

続いて、オープンエデュケーションに取り組んでいる村上氏に「個人的に近い質問」として、「税金収入に替わる可能性として、どんなものを考えていますか」と問いました。村上氏は、1つのアイディアであることを前置きした上で、Googleの広告モデルを挙げました。「選択肢はたくさんあります。素早く試して素早く失敗する。成功したものだけを残す。プラットフォームがあって、デジタル技術があれば可能です。今まさに、ビジネスの世界でやっていることを、実際の社会システムの再構築に適用できる時代だと思います。」と、デジタル技術が可能にする社会的資産の活用に期待感を示しました。

富士通株式会社
行政システム事業本部 統括部長
岡田 英人

さらに宮田氏は、村上氏も取り上げた、富士通のデジタルラーニングプラットフォーム『Fisdom(フィズダム)』に関連して、富士通の岡田に「オープンネスをどのように考えているでしょうか」と質問しました。岡田は「誰でも利用できるようなオープンなプラットフォームを富士通として世の中に提供し、社会システムの再構築に貢献できるようなサービスを提供する会社に変わっていかなくてはいけない」と前向きな姿勢を示しました。

「Colors, Future! いろいろって未来。」というブランドメッセージを掲げる福田氏に、宮田氏は、新しいまちづくりにかける意気込みを問いました。福田氏は「他の方々の講演を聞き、多くのことを学ぶことができました。ICTでしかできないことは沢山ある。地域住民一人ひとりに合ったソリューションを提供できるヒントはいっぱいあると感じました」と将来に向けた意気込みを語りました。

最後に、宮田氏は「ICTやデジタル技術を活用し、地域の人々を中心に据えて共創していくことで、新しい時代の日本を切り開いて行けるのではないかと感じています」と述べ、パネルディスカッションを締めくくりました。

登壇者
  • 川崎市長
    福田 紀彦 氏

  • 池田市役所
    市民生活部
    にぎわい戦略室
    地域活性課 課長
    藤本 智裕 氏

  • 福岡県医師会副会長
    福岡東医療センター名誉院長
    上野 道雄 氏

  • 国立大学法人九州大学
    名誉教授
    村上 和彰 氏

モデレーター
  • 慶應義塾大学
    医学部 医療政策・管理学教室 教授
    宮田 裕章 氏

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