クラウドネイティブでデジタル革新を加速。今求められる攻めのクラウド活用とは?

デジタル革新の本格化に向けて、攻めのクラウド活用が注目されています。クラウドネイティブが当たり前になり、スピードが重要視されるデジタルビジネス時代において、企業にはどんなシステムが求められ、どのような対応が必要とされるのでしょうか。本カンファレンスでは、日経コンピュータの読者調査による最新のクラウド利用実態をお伝えするとともに、APIやクラウドの重要性なども踏まえながら、デジタルビジネスの現状と未来について議論を交わしました。
【富士通フォーラム2017 カンファレンスレポート】

攻めのクラウド活用へ。クラウドネイティブで実現するこれからのシステムとは?

変わるシステムづくりの新常識、アプリ開発は「作る」から「探す」へ

最初に登壇した日経BP社の星野友彦氏は「戦略アプリはこう作る~変わるシステムづくりの新常識~」をテーマに、日経コンピュータの読者調査結果を踏まえながら、企業におけるクラウド活用の動向について説明しました。

日経BP総研 イノベーションICT 研究所
上席研究員
星野 友彦 氏

2016年10月に実施した日経コンピュータ読者調査では、およそ3社に2社が基幹系や情報系システムでクラウドを利用しており、クラウドは着実に定着してきたことが分かります。これは、システムの構築・運用でクラウドの活用を第1に考える「クラウドファースト」から、クラウドが当たり前となる「クラウドネイティブ」へと移り、今や、クラウドを前提にシステムアーキテクチャや部門の体制、人の配置、ベンダーとの付き合い方を考え直す時期にきているということです。

また、クラウドの適用領域も変化してきています。情報系や基幹系システムのクラウド移行に加え、IoTやAI、さらにUber(ウーバー)の配車サービスやAirbnb(エアビーアンドビー)の宿泊手配サービスといった、これまでにない新たな価値を生み出す革新的な仕組みなど、企業のデジタル変革を支えるアプリケーションをクラウドで作る時代を迎えています。こうした状況を踏まえると、戦略的なアプリケーションをいかにスピーディかつ低コストに開発し、市場に投入するかが企業競争力を大きく左右する時代になったと言えるでしょう。

アプリケーション開発においても自前で「作る」時代から、既に外部にあるものを「探す」時代へと変化しています。PaaSやSaaSのAPIを活用して必要な部品を組み合わせ、足りないものだけを作ることで開発スピードを加速。さらに、ビッグデータ分析やモバイルなどの戦略アプリケーションもPaaSを活用することで合理化できます。PaaS、SaaSは様々な部品が用意され、APIが公開されているので、自前主義ではなく、共創やオープンイノベーションによって外部の力をうまく借りることが、これからのアプリケーション開発では必要だと考えています。

また、サーバレスアーキテクチャとしては、FaaS(Function as a Service)が注目され始めています。FaaSはこれまでのサービスとは違い、仮想サーバが自動的に立ち上がりファンクションが実行され、作業終了後は自動的に廃棄する仕組みです。そのため、スピーディな開発で求められる自動スケールや冗長化設計、システムイメージの保守作業が不要になり、IaaSなどに比べて運用面での期待は大きくなっています。これからは、APIによる部品のマッシュアップやサーバレスなど、クラウドネイティブ時代の新しい開発手法を取り入れながら開発スピードを上げ、デジタル社会における企業競争力を強化していくことが、今後重要になってくるでしょう。

ビジネス成功の秘訣は「APIファースト」の考え方

星野氏が指摘した、これからのシステム開発におけるAPIの重要性を受け、グーグル クラウドのブライアン・パガーノ氏が、なぜ今クラウドやAPIを企業が利用すべきかを解説しました。

グーグル クラウド
グローバル・プラットフォーム・ストラテジスト
ブライアン・パガーノ 氏

今日、私が皆さんにお伝えしたいのは「今が2017年だということ」です。今、こうして話している間にも、デジタルビジネスで先行している企業は、市場から支持され収益を上げています。その一方、何も行動を起こそうとせずにデジタルビジネスで取り残される企業もあります。そのデジタルビジネスで重要になるのがクラウド基盤です。例えばユーザーは「セルフサービスがほしい、あらゆるデバイスで稼働するアプリケーションがほしい」と考えています。企業も、「よりスピーディに新製品を市場に投入したい、エコシステムに参加したい、どこでも使えるアプリケーションがほしい」と考えています。言い方は違いますが、ユーザーも企業も必要なアプリケーションと共にそれを支えるクラウド基盤の役割に期待しているのです。

このような期待に対し、「当社は時期尚早」と思っている企業は、既に手遅れだと私は考えています。なぜなら、これまでの方法、つまり自前主義でデジタルビジネスを進めて失敗した企業はたくさんあるからです。

では、デジタルビジネス時代で成功するにはどうすればいいのでしょうか。米国の成功企業の例ですが、SNSやシェアエコノミーなどのサービスを提供する企業の多くは、時価総額で既存の製造業やエネルギーなどの企業を上回っています。ここで重要なのは、SNSなどを提供するIT企業だから成功するのではなく、成功している企業はみなクラウド基盤を活用し、ビジネスに必要なパートナーとつながり、社会生活のプラットフォームを提供しているということです。つまり、自前主義でサービスを提供するという考え方を既にやめているのです。

APIs as a Service

企業がデジタルビジネスで成功する鍵はクラウドであり、APIプラットフォームです。APIプラットフォームにより、企業はユーザーが利用するフロントのシステムに影響を与えることなく、顧客管理などバックエンドのシステムをクラウドに移行できるのです。また、APIプラットフォームを活用することでマルチクラウドに容易に対応できます。ビジネスパートナーが提供するアプリケーションをクラウド上で連携することで、ユーザーからのアクセスが増え、収益のアップや顧客満足度の向上も可能になるでしょう。

最後に、デジタルビジネスで成功する秘訣についてお話ししましょう。それは、APIプラットフォームを重視する「APIファースト」の考え方を導入することです。APIを起点に、ビジネスパートナーが参加できるエコシステムが生まれ、デジタルビジネスを加速するとともに、ビジネスに価値のある分析や意思決定を行うことができます。また、APIプラットフォームを導入する際は、過去の方法を再考するだけでなく、いかに顧客やビジネスパートナー、社員を満足させられるかを注視してください。皆さんの会社が2017年の勝者になるために、まずAPIファーストを社内に問いかけていく必要があるのです。

クラウドネイティブなシステムを実現する上で重要な3つのこだわり

続いて、富士通の太田が壇上にあがり、クラウドネイティブなシステムを実現する上での富士通の取り組みを紹介しました。

富士通株式会社
デジタルビジネスプラットフォーム事業本部長
太田 雅浩

一般的なクラウドサービスは利用者の責任に任されているのに対し、私たちが提供するクラウドサービス「K5」は、お客様に寄り添うクラウドを目指しています。

この「K5」が持つ「3つのこだわり」を紹介します。1つ目が「システム運用」です。従来は計画的な保守停止は通知していませんでしたが、K5ではお客様に通知して日程を調整するなど、システム運用をコントロールするようにしています。2つ目は「オープン性」。独自技術のクラウドサービスではなく、OSSのOpenStackなどオープン技術で提供することにより、お客様に世界の英知と自由の提供を目指しています。3つ目は「PaaS」の提供です。SaaSを起点にしたPaaSにより、柔軟性と効率性、持続可能性を三位一体にしたクラウドサービスの提供を進めていきます。

K5の目指す姿とこだわりのポイント

クラウドネイティブ時代のデジタルテクノロジーがもたらす変革として、クラウド、ソーシャル、モバイル、アナリティクス、AI、IoTといった要素だけでなく、デジタルビジネスに対応するエンジニアリング、それを支えるクラウド技術が必要です。例えば、スモールスタートから必要に応じてスケールするには、インフラとアプリケーションの自動スケールに加え、仮想マシンを瞬時に立ち上げられるコンテナ技術や、初期投資を抑えるサーバレスアーキテクチャのFaaSといったクラウドネイティブな技術が求められます。加えて、短期サイクルでの拡張を可能にするアジャイル開発及びCI/CD(注1)、部品を組み立てるマッシュアップ技術とAPI、ユーザー体験を実現するユーザーエクスペリエンス(UX:顧客体験価値)部品とデザイン思考のアプローチなど、クラウドを補完する技術が必要になります。

富士通が考えるクラウドネイティブでは、スモールスタートしても、ビジネスの成長に応じてアーキテクチャが分断されないように持続可能な技術でつないでいきます。また、ビジネス拡大に伴いアプリケーションのライフサイクルが長くなるため、回る運用や高い可用性、予兆監視などの堅牢性が必要です。K5では、FaaSを使ってスモールスタートし、サービスが広がればコンテナ技術で拡張します。さらにアプリケーションは堅牢なプラットフォーム上で動作するようにつないでいく仕組みです。そのシームレスなアーキテクチャを支える基盤として、イベント駆動型共通基盤を用意しています。

「クラウドネイティブ視点」と「デジタルビジネス視点」で構成される富士通のクラウドサービスK5は、お客様のデジタルビジネスの成功に役立つ付加価値の高いサービスを提供し続けていきます。

(注1)
CI :(Continuous Integration) 継続的インテグレーション
CD:(Continuous Delivery) 継続的デリバリー

クラウドネイティブ時代のデジタルビジネス、鍵を握るのは「スピード」

各講演の内容を受け、カンファレンス後半では、日経BP社の星野友彦氏より、デジタルビジネスを進める上で重要なポイントを両名に伺いました。

まず、モデレータの星野氏からの「クラウドネイティブ時代の具体的なスピード感」に関する問いかけに対して、ブライアン氏は「サービスを提供するのに、1日以上では長過ぎです。APIプラットフォームを利用すれば、セルフサービスを作るのもボタン一つ、1日で完了できます」とスピードの重要性を訴えました。太田も「例えばミーティングで議論したその日のうちにシステムを作ってしまう。これがクラウドネイティブの世界です」とデジタルビジネスに求められるスピード感について説明しました。この回答を受け、星野氏は「クラウドネイティブ時代のスピード感はこれまでとは全く違いますね。1カ月や1週間ではなく、1日でお客様の要望に応えないと競争に勝てないと聞き驚きました」と感想を述べました。

続いて、「お客様のデジタル革新を支援する富士通の特徴は何か」という問いに対して、太田は2つの要素を提示しました。1つ目は、富士通の知見をお客様にフィードバックするというものです。「富士通では社内システムをクラウドに移行中で、AIやIoTを活用した取り組みを進めており、社内で培ったデジタル革新の知見をお客様にフィードバックしていきます」と説明しました。また、2つ目は、富士通のナレッジを活かしたデジタル革新です。「当社のSEはお客様のデジタルビジネスのお手伝いを通じ、様々なナレッジを蓄積しています。このナレッジを活用し他社と一線を画すデジタル革新を巻き起こしていきます」とグローバル展開も視野に今後の抱負を述べました。

そして、星野氏は「これからのクラウドネイティブ時代がどう変わっていくのか、この時代に富士通がどのようなデジタル革新を進めていくのか、今後も注目していきたいと思います」と述べ、カンファレンスを締めくくりました。

登壇者
  • 日経BP総研 イノベーションICT 研究所
    上席研究員
    星野 友彦 氏

  • グーグル クラウド
    グローバル・プラットフォーム・ストラテジスト
    ブライアン・パガーノ 氏

  • 富士通株式会社
    デジタルビジネスプラットフォーム事業本部長
    太田 雅浩