ファミリーマート、味の素など、アジアで成功する企業の「独自戦略」とは

40億人の巨大市場、アジア。アメリカ、中国、日本に次ぐ大きな市場と期待されるこの市場で日本企業が成功を収めるには何が必要となるのでしょうか。2017年6月、東京で「アジアで挑む事業のグローバル化と成長戦略」をテーマに「FUJITSU Asia Management Forum 2017」を開催しました。企業の事業戦略に精通する有識者や、果敢に海外事業の展開に現場で挑んできた日本企業が登壇し、アジア市場進出に向けた課題と実践方法を具体的に示しました。
【FUJITSU Asia Management Forum 2017 イベントレポート】

富士通のグローバルビジネスへの取り組み状況

富士通株式会社
執行役員 流通ビジネス本部長
山口 裕久

最初に登壇した富⼠通の山口裕久は、「アジアには、中国、インド、インドネシアなど、多くの市場があり、開拓の余地がまだ多く残されている」とアジア市場の可能性を示唆しました。そして、富士通は世界100ヶ国以上に進出し、日本を除いたアジアで働くスタッフは約1万7,000人と、日本、ヨーロッパに次ぐ3番目の規模であることを紹介。富士通がグローバルでの取り組みの中でアジア市場に力を入れている状況を示しました。

さらに、「One Asia」をキーワードに掲げ、アジアと日本の市場を一つのものとし、「日本とアジアはワンストップでサービスを提供し、引き続き皆様のグローバル進出を支援していきます」と語りました。

新興国市場での勝ちパターン構築のポイント

早稲田大学ビジネススクール
教授
内田 和成 氏

キーノート・スピーチとして登壇した早稲田大学ビジネススクールの内田氏は、「グローバル・アドバンテージ ~新興国市場で勝ちパターンを構築、持続する」と題して、新興国市場で大きな武器となる企業の独自性について話しました。

内田氏は、日本企業がグローバル市場で成功するためのポイントとして「勝ちパターンの構築には最初から答えがあるわけではありません。試行錯誤を繰り返し、時には痛い目を見ながら経験し学ぶこと。成功している日本企業は、日本で成功した強みを、何らかの形で海外市場でも活かしています。日本での強みが通用するならそのまま活かし、必要なところは現地化していくことが大切です」と述べ、アジア各国で展開する企業の具体的な実践例を数多く交え解説しました。

内田氏講演のレポートは、以下のコンテンツで詳しく解説していますので、ご参照ください。

日本流のコンビニをベースにローカライズを進めるファミリーマート戦略

株式会社ファミリーマート
海外事業本部 海外業務部長
小林 桂 氏

続いて、ファミリーマートの小林桂氏は、「ファミリーマートの海外事業戦略」と題し、約28年にわたる海外事業で得たノウハウを解説しました。

ファミリーマートは、1988年の台湾進出を皮切りに現在、アジア7地域にファミリーマートブランドを展開。小林氏は「ファミリーマートは成長を続けるアジアの中でも、東アジア、ASEANを中心にエリアを拡大してきました。コンビニエンスストア事業として見ると、魅力的な市場です」と述べました。

しかし、「決して順風満帆とは言えなかった」とこれまでを振り返り、「仕組み・構造」「制度・規制」「経済環境や政治リスクなどのマクロ環境」「人・文化」「市場シェアや取引先との関係性などの競合環境」など、アジアビジネスにおける5つの課題を示しました。

インフラの整備

まず、5つの課題のうち「仕組み・構造」にフォーカスし、特に「インフラの整備」について紹介。日本では、お客様のニーズに合わせて商品の調達や在庫管理を行い、必要な情報はCVS本部が掌握しています。しかし、ASEANでは本部と店舗の間に卸が入り情報が掌握しにくく、また店舗の商品を置く棚をサプライヤーが購入するため、お客様のニーズに合わせて棚を工夫することもできないという問題もあります。

ほかにも、おむすびやサンドイッチなどの中食(なかしょく)用商品を専用の工場で作る日本に対し、アジアではそのようなビジネスモデルがなく、品質・衛生観念のばらつきが否めないという状況を説明。そこで「進出当初はインフラ整備に注力し、黒字化を達成してから、店舗を増やすというビジネスモデルが良いという答えを見つけました」と小林氏は語りました。

また、都市部では欧米人や富裕層が多く高い売り上げを期待できますが、郊外では現地の人を相手に商売する小規模店舗が多く、仕入れルートの違いから同じ商品が安い価格で売られるという、地域差の課題も指摘。「都市型、郊外型それぞれの店舗戦略にて舵を切る必要があると学びました」と述べました。

人・文化の違いと生産性

また、アジアでは一つの業務だけを行うシングルタスクが当たり前であるために、一人あたりの生産性が高くないという現状があります。しかし、複数の業務ができるように無理に教育しようとすると、現地の人との溝が広がってしまうという問題の根深さを例に挙げ、「人や文化」の違いにも言及しました。

この課題に対しては、「最初はシングルタスクのまま業務を進め、その過程でリーダーになりうるスタッフを見つけることで問題は解決できる」と日本の経験から小林氏は言います。そして、そのリーダーにマルチタスクの仕事の進め方を学んでもらい、次にリーダーから他のスタッフに広めていくという流れを作ることで、徐々に生産性を上げることを計画。実際、マルチタスクでの業務が可能になった店舗では、より少ないスタッフ数で業務を行うことができたとの成果を示しました。

事業パートナーの選定と共通言語

さらに、小林氏は「事業パートナーの選定もアジア市場でビジネスをする上で非常に重要なポイントです」と説明しました。1988年に立ち上げた台湾のファミリーマートでは、沢山の失敗を重ねながらも、日本流をベースに台湾流を積極的に取り入れることでローカライズを進めました。

そして、ビジネスを進める上で成功の鍵となるのが、「コンセプトを伝えるための"共通言語"です」と小林氏は力説。「日本流の変えてはいけない領域、ローカライズが必要な領域を明確にするために、共通の言葉で定義して伝えること。コンビニの事業とは何か、接客とは何か、事業とバリューチェーンなど、私たちのビジネスを共通の言葉にして『見える化』すること。それが業界コンセプトです。ビジネスモデルに対する相互理解のベースになります」と続けました。

最後に小林氏は、「現地企業とファミリーマートが互いに理解しながら、適応力を強化していくことが必要です。日本のやり方を現地に押し付けず、コンバートしていく方法を検討しながら、ビジネスを拡大していきたいと考えています。それが地域に根ざしたコンビニエンスストアの確立につながります。ファミリーマートが持つノウハウ、現地企業が持つ情報やアイデア、それらを翻訳して伝える能力が私たち自身に求められています」と述べ、講演をまとめました。

見えない課題をICTで可視化、解決に結びつけていく

富士通株式会社
流通ビジネス本部 営業統括部長
福田 修一

次に登壇した富士通の福田は、「ASEAN展開における課題と実践事例」と題し、富士通のアジアでの取り組みを説明しました。

まず、自身の5年間タイでの駐在経験を通して感じた課題として、「政治や法制度、コンプライアンスの問題」「文化の違いや、言語の問題により意思疎通に時間がかかる」「現地スタッフの育成」などを挙げました。さらに、実際に取り組んだお客様との実践事例を紹介しました。

例えばエースコックベトナム様では、南北に長いというベトナムの地理上の問題から、予定した時間通りに商品を届けられないという物流の課題を抱えていました。さらに、ベトナムの商習慣、交通事情も要因となり、トラックがどういうルートで、どれだけの量を運んでいるのかを正確に把握することも困難でした。そこで富士通は、ブラックボックスと化していたトラックのルートや積載量、物流工程を見える化した上で、適切な配車計画に基づく、効率的な輸送を実現可能としました。将来的には、他の日系企業と共同利用できる共同物流システムを構築し、納品時間の正確性と納品ミスの低減にも合わせて貢献していきます。

また、システムなどの直接的なIT課題ではないビジネス課題を解決する特長的な事例として、バンコク東急百貨店様のフィールドイノベーション事例を紹介。フィールドイノベーションとは、事実の見える化と現場の人たちの知恵による改善を継続していくことを意味します。このケースでの課題には「業務の属人化」「業務フローの暗黙知化」が挙げられます。そこで売場スタッフの接客時の動作や対応時間などをカメラで撮影して記録したり、現地スタッフへのインタビューを行なうことなどで業務の見える化を図り、改善提案へと結びつけました。

福田は「富士通は、ICTに限らず、ビジネス現場のそのものの見える化にも取り組んできました。特に難しい課題には積極的な姿勢で取り組むのが富士通の強みと考えています。アジアで課題を抱えているお客様は、ぜひ相談していただきたい」と会場に呼びかけました。

味の素が考える、海外食品事業で競争力を発揮する3つの力

味の素株式会社
食品事業本部 海外食品部長
寺本 博之 氏

最後に登壇した、味の素の寺本氏は「味の素グループにおける海外食品事業戦略」と題し、競合との競争を勝ち抜くマーケティング戦略について説明しました。

食品やアミノ酸、医薬品など、様々な事業をグローバルに展開している味の素は、食品とアミノサイエンスという二つの事業をベースに、売上や利益などの経済価値だけでなく、食資源の確保や健康な生活への貢献といった社会価値との両立を目指しています。1917年に初めて海外に自社の事務所を設立し海外展開を志向して以来、2017年でちょうど100年目に当たります。現在はアジアを中心に30の拠点を構え、130を超える国と地域で販売活動を行っています。

寺本氏は、「食品を扱うので、進出する先は人口の多い国や地域となります。2016年のパキスタン進出で、人口1億人を超える国はすべてカバーしましたが、海外事業は決して容易ではありません。難しい点があるのも事実です」と語り、海外事業では『見つけ、創る力』『届ける力』『伝え、応える力』という3つの力でスペシャリティを磨きあげ、競争力を発揮してきていると述べました。

見つけ、創る力

1つ目の『見つけ、創る力』は、各国の食文化を独自の手法で分析し、各国での「おいしさNo.1」を実現すること、と寺本氏は説明。「基礎研究は日本、R&Dは現地で行い、味作りは現地に任せて日本は口を出さない方針で進めています」と続けました。

また、社員はインタビューなどで、現地の家庭での調理方法や嗜好性を調べ、食習慣を研究することで、現地の嗜好に合った製品の開発を進めています。その結果、国や地域ごとに、違うブランドで販売するといった、現地に適合したビジネスを展開しています。

届ける力

2つ目の『届ける力』は、「買いやすい、何にでも使える、どこでも買える」という点の重視です。具体的には、現地の市場の小売店に、商品を自社のセールスが直接お届けし現金で販売するビジネスモデルを展開。調味料一つとっても、価格や容量は国によって異なります。そこで、現地の生活水準に合わせて、ワンコインで買えるパッケージにしていくために、例えばベトナムでは50g(4,000ドン=約20円)、インドネシアでは0.7g(50ルピア=約0.5円)のパッケージで販売。「味の嗜好だけでなく、容量や価格まで現地適合することで、届ける力を強化しています」と寺本氏は語りました。

また、生活者(お客様)はお店を選ぶが、味の素はお店を選ばないことも、届ける力には大切なポイントとし、「いつでもどこでも誰にでも、製品を提供できるように努めています」と説明しました。

伝え、応える力

3つ目の『伝え、応える力』はブランド戦略です。現地の人の語感で親しみやすく、覚えやすいネーミング、美味しさが最大限に伝わるパッケージを重視。例えばインドネシアの風味調味料「Masako®」は、現地語の「Mari Masak(料理しよう)」という言葉をアレンジしたネーミングを採用しています。

但し、この戦略には「国ごとにブランドがバラバラになってしまい、商品は覚えてもらっても、会社名を覚えてもらえない問題もある」と指摘します。そこで味の素では、個別の製品ブランドを支援する企業ブランド(AJINOMOTO®)強化の活動も行っています。

締めくくりとして、寺本氏は今後の活動について、「従来の成功モデルにとらわれず、各地域に応じた事業展開を強化していくために、これからはM&Aも積極的に実施。外部の事業基盤を活用し、スピーディに事業を展開していく」と展望を述べ、「各国で市場は違い、成功モデルも違いますが、原理原則は普遍です。それにのっとって事業を進めれば、必ずや成功に辿り着ける」と熱く語りました。

まとめ

昨今のアジア市場の注目の高さを受け、満席となった「FUJITSU Asia Management Forum 2017」。アジア市場進出に向けた課題と実践方法を示す具体的な内容に聞き入る方々で、会場は熱気に包まれていました。