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風を掴み、世界に挑む。SE兼選手が開発したセーリング技術向上のためのIoTトレーニングシステム「Windsurfing Lab」

【未来を創るチカラ Vol.5 前編】

ウインドサーフィン上達の最短ルートを見つけたい。全てはここから始まった。

セール(帆)を巧みに操り、風に乗る一人のウインドサーファー。ナショナルセール番号「JPN224」のゼッケンを背負い、水上を飛ぶように滑走しているのは、富士通のデジタルイノベーター・横井愼也。彼はシステムエンジニア(SE)でありながら、ウインドサーフィンの選手でもあります。

普段ウインドサーフィンのトレーニングを行なっている本栖湖をバッグに笑顔を浮かべる富士通デジタルフロントセンターの横井愼也。

ウインドサーフィンは、ヨットのセール(帆)をつけたサーフィンボードに乗り、風力だけで動くスポーツです。風力だけといっても速度は時速40〜50km、スピードの世界記録は100kmに達し、欧米では"海の上のF1"として人気を集めています。

「水面すれすれを疾走する爽快感がやみつきになり、私も始めてすぐにハマりました。ただ、効率よく風の力を捉えるために必要なセールの操作スキルは非常に感覚的なもので、上手くなりたいと思ってトレーニングを積んでも、速い選手との差が一体何なのか、いまいち掴めずにいました。プロの選手やインストラクターにコツを聞くと『マスト(セールの軸棒)を立てて引き込め』と教えてくれるのですが、どのくらい立てて、どのくらい引き込めばいいのか具体的にはわかりません。そこで、暗黙的でわかりにくいセーリングのスキルをセンサーによってデータ化し、上達のための最短ルートを見つけたいと思って立ち上げたのが『Windsurfing Lab』です」

センサーによりセールの動きを数値化することで、10年かかるスキルを3年で習得!

「Windsurfing Lab」は、IoT(モノのインターネット)を活用したウインドサーフィンの新しいトレーニングシステム。セールに、GPS情報と9軸センサー情報(加速度、ジャイロスコープ、地磁気)を同時に記録できる装置を取りつけ、収集したデータを富士通のクラウドサービスでリアルタイムに解析し、セールの動きや艇速、針路などの走行情報を3Dモデルやグラフで可視化します。

収集したデータは、スマートフォンやタブレット、PCにリアルタイムに送信される。過去のデータや他選手とのデータと比較も可能。

画面イメージ。クラウド上に収集されたデータは波などの振動ノイズを除去し、あらゆる艇速、針路における正確なセール角度を割り出す。「将来的には位置情報をクラウドにリアルタイム連携することで、万が一遭難した時の救助にも役立てることができます」

「現在のトレーニングでは、小型のアクションカメラで撮影した動画とGPSの情報を照らし合わせて、スピードと乗り方を分析するというのが主流です。特に速い選手はマストがしっかり立ってぶれないといわれていますが、動画だけだと微妙なセールの角度までを把握することが難しい。
その点、3Dモデルやグラフを使えば、自分の過去のデータや他選手のデータとの重ね合わせができるので、上手い人の乗り方に近づけられたり、自身の乗り方の癖を客観的に把握することもできる。改善点を数値で把握することで、動きのイメージが具体化されて、練習がぐっと効率的になります。
実際に私自身もこのトレーニングシステムを練習に取り入れて、一般セイラーがマスターするのに10年はかかると言われているセーリングスキルを僅か1,2年で着実に身につけられ、ウインドサーフィン歴3年とまだまだレース経験は浅いのですが、アマチュア大会でも優勝を経験しました。この勢いでプロまで最短で目指していきたいですね(笑)」

共創空間「PLY」でセンサーのプロトタイプを製作。最初は夏休みの工作だった。

センサーのプロトタイプ第一号機。絶縁板は富士通の木製コースター、防水ケースは100均のお弁当箱とビニール製の袋で作った。「手作り感満載ですね(笑)」

横井がセンサーの開発をはじめたのは、2016年の夏休み。同時期にオープンした富士通の共創空間「PLY」を拠点に、約2週間かけてプロトタイプを自主製作しました。

「秋葉原やホームセンターで部品を買い集めて、PLYの講習会でハンダ付けを習って、回路の設計をして、3Dプリンタで取り付けパーツを作って...まさに夏休みの工作でしたね。身近にあるものを使ったDIYのセンサーですし、『波の影響もあって正確なデータは難しいんじゃない?』と周囲は否定的でした。しかし選手としてやっているので問題なくデータを取れる自信がありましたし、結果きちんと処理すれば希望しているデータを得ることができました。海や湖で、60人以上のウインドサーファーに『こんなシステムがあったら使ってみたい?』とインタビューしたところ、評判も上々。プロからも『こんなのがずっと欲しかった』と言われ、ビジネスとしても可能性があると確信しました」

プロトタイプ第二号機。「ケースには工事現場用の電工ボックスを使い、防水性を高めました。1号機に比べると、だいぶそれらしくなりましたね(笑)」

最大の壁は、趣味をどうやってビジネスに発展させていくか。

手応えをつかんだ横井は、2016年の12月から『Windsurfing Lab』をプロジェクト化。ビジネスコンテストに個人名義で参加してみると、1000社のエントリーの中から20社まで勝ち残り、起業の道も見えてきました。しかし、ここで一つの大きな壁にぶつかります。

「ウインドサーフィンは2020年東京オリンピックの種目にもなっていますし、将来性は十分にあります。ただ、現段階では日本のウインドサーフィンの市場は小さく、すぐに収益が見込めるものではないので、会社を辞めて起業するにはリスクも大きい。
なんとか形にできないかといろいろな人に相談するなかで、富士通で新事業として立ち上げてみることになったのですが、新しいものになかなか手が出せない大企業の壁というのもあって...。もどかしさを抱えて悩んでいたとき、たまたま『デジタルフロントセンター』が立ち上がり、『ここだ!』と思って企画を持ち込みました。
このプロジェクトにこれまでのSE経験だけでなく、全人生をかけて"世界一"に挑んでいきたいという想いに、経営層が『ぜひ一緒にやろう』と応えてくれた。本当に嬉しく思ったのと同時に、必ず成し遂げると改めて強く決意しました」

「デジタルフロントセンター」は、デジタルの力を使って世の中を変えうる新ビジネスを生み出すことを目的に設立された新組織。横井はここで"デジタルイノベーター"として、プロジェクトを進めることになりました。

「横井さんの熱い思いを応援したい」。そう言ってくれる仲間ができた。

そんな横井にさらなる追い風が吹きます。日本ウインドサーフィン協会がプロジェクトに賛同し、2016年5月開催のウインドサーフィンワールドカップ横須賀大会を皮切りに約5ヶ月間、大会でのデモ展示や実証実験を行えることになったのです。

「ただ、プロの選手に使ってもらうのに、手作りのセンサーでは見た目もカッコ悪いですし(笑)、性能的にも限界が来ていました。そこで、より高性能なセンサーを作れないかとPLYに来ているメンバーの方に相談したら、半導体メーカーのラピスセミコンダクタさんを紹介していただけたんです。開発は全部一人でやるつもりだったので、技術的なアドバイスをお願いしたところ、『ビジネスになるかはわからないけど、横井さんの熱い思いを応援したい。センサーはうちで作りましょう!』と言ってくれて。この時も本当に嬉しかったですね」

ラピスセミコンダクタが製作した小型で高性能なセンサー。「防水ケースはTechShopで作りました」

最新のセンサーを携えて臨んだワールドカップ横須賀大会でのデモ展示は多くの注目を集め、世界のトップ選手からも「今すぐにでも使いたい!」「テストライダーになりたい!」というオファーが殺到。プロジェクトの実用化に向けて、大きな一歩を踏み出しました。

ワールドカップ横須賀大会でのデモ展示の様子。海外のトップ選手やメディアからも注目を集めた。

インタビュー後編では、横井が見据えるプロジェクトの未来にフォーカス。今後の展望、イノベーションを起こすためのヒントについて語ります。

富士通株式会社
デジタルフロント事業本部
デジタルフロントセンター
横井愼也
1983年 愛知県生まれ。学生時代は柔道や野球に打ち込む。
2007年 富士通グループに入社し流通業のお客様を中心に基幹システム開発に従事。
2014年にウインドサーフィンと出会い、本栖湖チャンピオンシップ2015のビギナー部門で優勝。
本格的にウインドサーフィンを始める。
2017年 デジタルフロントセンターにてウインドサーフィンの選手能力向上に向けた合同実験PROJECT Windsurfing Labを立上げ、開発者兼選手としてトレーニングシステムの開発に取り組む。

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