「絵心がないので...」が劇的に変化するラクガキメソッド~共創における共通言語「エモグラフィ」入門~

子どもの頃、ワクワクと楽しく絵を描く"ラクガキ"に誰もが親しんでいました。しかし、大人になるにつれ「絵心がないから...」と"描く"ことから距離をおいてしまっている方も多いのではないでしょうか。自分の中にあるクリエイティブな力を引き出すためのコツや、言葉や文字だけでは伝わらない考えや想いを"ラクガキ"で表現する。そんな新たなメソッドを体感いただけるワークショップを「富士通フォーラム2017」で開催。多くのお客様が楽しく参加していたワークショップの様子をレポートします。
【富士通フォーラム2017 ワークショップレポート】

絵心は誰にでもある!?

富士通デザイン株式会社 サービスインテグレーション・デザイングループ
グラフィックカタリスト/ラクガキコーチ
タムラ カイ

昨今、注目を集めている「グラフィックレコーディング」(グラレコ)という手法を皆さんはご存知ですか?グラレコは、議論や発表の内容、構造、流れをグラフィックを使ってリアルタイムに整理・可視化する手法です。
しかし、多くの人から聞かれるのは「自分は絵心がないから...」「絵は苦手...」という声です。そこで、ワークショップ講師の富士通デザイン タムラカイは、参加者の皆さんに「絵心という言葉を辞書で調べたことはありますか?」と問いかけました。そして、「絵心とは『①絵を理解する能力、②絵を描こうとする気持ち』なのです。決して難しいことではなく、絵心は誰にでもあります。描くか描かないかの違いだけなのです」と説明しました。

まずは表現してみる!

しかし、いきなり絵を描くのはハードルが高いもの。そこで誰しもが持つ表現力を感じるアイスブレイクからワークショップが始まりました。人の4つの感情(喜び、かなしみ、いかり、おどろき)をそれぞれ1本の線だけで表現するというワークです。最初は戸惑っていた参加者も、出来上がった線からはそれぞれの感情がしっかりと伝わってました。グループ内で共有すると、言葉や文字がなくても頷いて納得している姿が多く見られ、「面白い!!」と言った声も聞こえてきました。

感情を表現した線をグループ内で共有

参加者の緊張がほぐれたところで、次は顔を描くことにチャレンジ。ビジネスにおいても、アイデアを考える場でも顔を描くことはとても効果的です。お客様がどんな表情になっているか、どんな感情になって欲しいかを想像して描くことで、これまで気づけなかった課題を見つけることができます。

では、どうやって人の顔を描いて感情を表現するのでしょうか?それは、目を5パターン、口を5パターン、眉を4パターン覚えればいいとのこと。このパターンを組み合わせて5×5×4=100パターンの人の顔を描くことで、複雑な人の感情を表現することができます。また、輪郭を丸や三角形に変えたり、人の体を四角い箱にしてシャツを描いたりすると、複数の登場人物を描くことができます。

目、口、眉を組み合わせて様々な表情を描く

エモグラフィでアイデア発想がさらに活発化!

今回のワークショップの講師であるタムラは、感情記述記号を用いて非言語でコミュニケーションを取る技法を独自に開発。その技法を、「emotion(感情)」+「-graphy(記号)」をつなげた造語で、「エモグラフィ(Emography)」と名付けています。エモグラフィは、ノートやメモを取る時や自分の考えを整理するときにもとても効果的です。

続いて、「"働く"についての新しいアイデア」をテーマに、このエモグラフィを活用し個人ワークが始まりました。まず、紙の中央に"働く"というキーワードを書き、その周りに様々な表情の顔を吹き出し付きで描き、参加者が"働く"ということに対して感じることを文字のセリフで表現していきます。絵だけでなく文字を使うことについて「絵と文字の両方を行き来することが大切」だとタムラは説明します。

そして、グループ内で各自が描いた感情を共有すると、「そうだよね!」「分かる!」と言った声が各チームから挙がってきました。特に「そうなんだよね。この表情みたいに嬉しいけど、ちょっと悲しいんだよね!」という共感を含んだ声も印象的で、顔の絵から微妙な感情を伝え、まさにグループメンバーが共有できた瞬間でした。

"働く"をテーマにグループワーク、吹き出しにセリフを付け表現していく

さらに、グループ内で共感できる感情を1つ選び、そこから連想される課題を抽出。その課題を解決するアイデアを発想していきます。

言葉だけで考えると、アイデアの発想が言葉に出来る範囲に留まってしまいますが、言葉と絵を組み合わせることで、「気づかなかったけど、確かにそれあるね!」という"あるある(=集合的無意識)"までに働きかけることができ、アイデアに深みを持たせやすくなっていました。

共に考え、共に創るためのエモグラフィ

最初は絵を描くのに不安そうだった参加者の多くも、ワークの最後には楽しそうに自信を持って絵を描いていました。「自分の会社に戻っても続けていきたい」「アイデア発想で絵を使うと、こんなにもイメージが形に出来て伝わるのかと驚いた」「文字や言葉だけでは思いもつかなかったアイデアが、絵を描くことをきっかけに発想できた」との声も聞こえてきました。

「"ラクガキ"とは、いたずらとして描く"落書き"ではなく、楽しく描く"楽描き"を意味しています。皆様には楽しんで参加して欲しい」という想いが、ワークショップを通じて伝わったのではないでしょうか。

ワークショップ全体の内容をグラレコで記録

人は生まれたときから表現と観察と想像のサイクルを回しています。タムラは「このサイクルが"表現"から始まる」と言います。人間は生まれた瞬間に泣くという表現を行い、次第に大人の行動を観察するようになり、自分の求めるものを想像して次第に泣くという表現を言葉や絵での表現に変えていきます。

ビジネスを創出するアイデア発想の場でも、まずは表現してみること、想いを描いてみることからスタートしてみてはいかがですか?