「個」を大切にしたマーケティングが新たな顧客体験価値をもたらす

モバイルデバイスやSNSの普及による販売チャネルの多様化で消費者の購買行動は大きく変化しています。そうした状況の中で、顧客とのエンゲージメントを維持・強化するため、一人ひとり異なる「個」をリアルタイムに正確に捉え、的確にヒットするアクションへと繋げていくことが必要となります。イノベーティブなデータ活用方法を共創したお客様事例から、マーケティングの進化を紹介します。
【富士通フォーラム2017 カンファレンスレポート】

360度視点でお客様を理解しながら、最適なCXを提供する

カンファレンスの様子

カンファレンスは、富士通 平山の「皆さんは、お客様が本当に望むことを届けていらっしゃいますでしょうか?」という、問題提議からスタートし、自身がゴルフのドライバーを購入しようとネットで調べ、ショップに行って購入したときの経験を語りました。

「ショップで購入した数日後に、購入したドライバーの値引きのクーポンが届きました。さらに、一週間後には更なる値引きとゴルフボールをセットしたクーポンが届きました。それを見て私は、なんだか損をしたような気になりました。そのようなことが起こる理由は、おそらく各事業部が縦割りで、バラバラに施策を展開してしまっているからでしょう。お客様から見たときに、一貫したお客様体験が提案されていないことが原因だと考えています。

富士通ではこうした課題の解決として、お客様に最適な顧客体験を提供するため、2016年に富士通のデジタルマーケティングの新体系である「FUJITSU Digital Marketing Platform CX360」を発表しました。CX360とは、360度視点でお客様を理解しながら、最適なCX(カスタマーエクスペリエンス)=顧客体験を提供する、というコンセプトです。富士通が数多くのお客様とCX360を活用したデジタルマーケティングに取り組む中、どのお客様でもキーワードとしてあがってくるのが"お客様起点"です。そして、成功の鍵となっているのが"リアルタイム"と"パーソナライズマーケティング"です」

続いて、実際に自社のビジネスに「CX360」を活用し、デジタルマーケティングに取り組まれているお客様の講演に移りました。

カスタマージャーニー分析を活用した個別アプローチプロジェクト

株式会社ベネッセコーポレーション
営業基盤本部 チャネル開発部 幼児デジタル推進課
課長 清水 耕太郎 氏

ベネッセコーポレーションは教育、育児、生活、語学・グローバル人材教育、シニア・介護と、人生をトータルでサポートしています。その中で、0歳から6歳児向けの通信教育サービスの「こどもちゃれんじ」は、お客様とベネッセコーポレーションを結ぶ最初の接点として重要視されています。そのため、顧客数を増やすにあたり販促費の投下に依存した施策になりがちでした。それを見直し、「適正な費用で顧客を獲得していくこと目指し、お客様と施策の合致率を上げるパーソナライズを実施する」というのがCX360活用の経緯です。

施策はDM(ダイレクトメール)と電話とWebの3つが主力です。しかし、この3つの施策のデータはバラバラな状態。お客様を明確に把握するためCX360でデータを統合し、分析を行いました。分析した顧客情報をヒントに、DMと電話の効率化、Web施策の効果を増やすことができました。特に効果が高かったのが電話でした。

電話は平日昼間にかけても、仕事中だと取ってはもらえません。しかし、昼間にWeb閲覧があるお客様は電話をかけても繋がりやすい。Webの行動データと紐づけることで、お客様の生活パターンにあったタイミングで電話をかけることができます。

また、その家庭の子供が男の子か女の子かでも勧めやすい教材は変わります。ユーザーが見ているページから行動内容や興味、悩みを推定したスクリプトを用意して電話することで、DMからの引上率を上げることもできました。その結果、通話率はテスト期間に、テスト前と比べて180%上がり、入会率も上がりました。

また、Webはユーザーがサイト内を回遊し目的のページを探していく構造だったのを、ユーザーニーズに合った導線を設計し、パーソナライズしやすいサイトに変えました。目当ての教材を説明しているページに遷移させる率はすごく上がっており、そこからの入会率も上がっています。でも、上がったというと聞こえはいいですが、ここがスタート地点。細かい方がいいのか、ある程度類型化した方がいいのか、最適なパーソナライズにトライすることを考えています。

各チャネル間でのデータの相互活用は一定の成果を見いだせたことにより、それを継続しつつWeb広告やLINEなどのサイト訪問前のチャネルとの連携に取り組んでいきます。さらに手動で実施していた業務スキームをオートメーション化して負荷を減らし、リアルタイムで進めていきたいです。2017年以降も「こどもちゃれんじ」はパーソナライズ化を通じて、さらなる販売効率の改善を目指していきたいと思っています。

あなたに"ぴったり"のハウスキーパーを探そう

株式会社タスカジ
代表取締役
和田 幸子 氏

タスカジは家事代行のシェアリングエコノミーを展開しています。タスカジに登録することで、家事の仕事をしたい個人(ハウスキーパー)と、お願いしたい個人がマッチングすることができます。ワーキングマザーの味方として、「望む人誰もが家事代行を利用できる世界を作ろう」というスローガンのもと、確実にシェアを伸ばしています。

そんなタスカジですが、2つの課題がありました。1つめは、サイトへの訪問はあるが、ユーザー獲得まで進まないこと。2つめは、リピーターがなかなか増えないことでした。この2つの課題を解決するためにCX360を活用しました。

利用までのフェーズを細かく分け、初回利用までのプロセスにおいてアクセス履歴から分析すると、多くのユーザーがアカウント登録で離脱しており、さらには検索画面で検索していても利用に結びつかずに離脱していることがわかりました。

また、サイト流入から初回利用までのカスタマージャーニー分析結果から、サイト離脱前に次の行動に誘導するような施策を実施しました。一例を挙げると、「検索ページに一回行っている訪問者はアカウント登録率が高い」という結果に基づき、トップページ滞在時間が長く、利用を迷っているような方には検索ページ閲覧を促すポップアップを表示させるようにしました。

実施したことで仮会員ID取得と初回依頼の実施比率が大幅にアップしました。アカウント登録に関しては3倍、検索から初回利用は2.5倍という成果を出すことができました。

また、ユーザーにはハウスキーパーの紹介をメールマガジンで配信していましたが、それをパーソナライズ化し、ユーザーへ個別のメッセージを配信することによって、効果を上げることもできています。われわれとしてはこの成果をもとに、一人ひとりのお客様に今後も最適な情報を提供して、利用を促進し、ユーザー体験を損なわないような施策を展開してきたいと思っています。

Domoを使ったPDCAサイクルの効率化

ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア
マーケティング部 CRM推進課
課長 秋葉 武宏 氏

ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアは、プレイステーションの日本国内およびアジア地域向けビジネスを管轄しています。
Web、メール、SNSなどのさまざまなタッチポイントでお客様とコミュニケーションを取って、お客様にゲームを楽しんでいただく、というコミュニケーションを行っています。そのため、各々から多様なデータが発生します。KPIを見ていくにあたり、レポーティングにも多様なツールを使わないといけない状況でした。

レポートを出すことがわれわれの本業ではありません。レポートのデータからお客様の動向を知り、次のアクションに進めていくことが本業です。レポートに追われる日々を解消したい、というところがスタートでした。

そこで、「Domo」にすべてのデータソースを集約し、Domoを見れば日々の結果が分かるようにしました。各データソースからどの情報を連携させ表示するかという初期設定には工数はかかりましたが、一度構築するとデータは自動的に更新されるため、今まで感覚や過去のデータで仮説を立てていたのを、リアルタイムなデータをもとにPDCAを回せるようになりました。おかげで、本業であるPDCAに多くの時間を割けるようになりました。

Domoはデータを持っていないBIツールのため、データを入れてみないと価値が分かりません。導入にあたってはスモールスタートで始めましたが、今は他の部門のメンバーにDomoをシェアすると「このツールはいい」という声が聞けるようになりました。今後は利用部門を広げ、連携データを拡張し、海外データもみながらPDCAのサイクルを早くしていきたいと考えています。

富士通が取り組むCX360の強化

富士通株式会社
イノベーティブIoT事業本部 デジタルマーケティング事業部
事業部長 平山 将

デジタル接点の重要性が高まっていますが、『取り組み意義が明確にできない』『目標やKPIが設定できない』『どのようなプロセスで取り組めばいいのかわからない』など、さまざまな課題がBtoBの領域にはあります。その課題に対して、デジタルマーケティングの戦略の立案から業務システムの再デザインまで具現化に向けたロードマップの作成が重要です。CX360では、BtoB領域の戦略コンサルティングを強化し、支援していきます。

また、マスマーケティングの時代から単発型のマーケティングへとシフトしています。セグメントではなく個人に、一時的ではなく長期的なエンゲージマーケティングへと時代はシフトしています。エンゲージマーケティングの世界においては、いつ誰に提供していくのか、が大事。一人ひとりに対して最適なワンツーワンのコミュニケーションを実施していくうえで、マーケティングオートメーションの実行は有効的な手段です。世界4600社以上で採用されているマーケティングオートメーションのマーケットリーダーであるマルケト様と協業し、お客様状態を把握して、最適なタイミングのアプローチを実現していきます。

さらに、トレジャーデータ様との協業でDMPの領域を強化します。データ分析による判断を重視している企業は74%。大量データをいかに高速に分析するか、業務のPDCAをいかに高速に回してくか、というニーズは多くあります。こうした背景において、トレジャーDMPと連携することによって、クラウド型で大量データを蓄積しながら大量データの高速分析を実行し、デジタルマーケティング業務の高速PDCAを実現します。

そして、マーケティングAIコンテナによる機能拡充に取り組みます。汎用的な分析ツールでは、もはや分析ニーズを十分に満たすことができなくなってきています。さまざまな課題をXDP(eXperience Data Platform)のマーケティングAIコンテナで対応します。富士通のデータサイエンティストが200を超える分析プロジェクトを通して得たノウハウ、知識、手法を体系化したさまざまな分析モデルを実装しています。

ソリューション、チーム、コミュニティ、この3つの価値から構成されているCX360において、お客様のリアルタイムな顧客理解と、パーソナル化されたアプローチを実現することで、マーケティングイノベーションを起こしてまいります。

登壇者
  • 富士通株式会社
    イノベーティブIoT事業本部
    デジタルマーケティング事業部
    事業部長
    平山 将

  • 株式会社ベネッセコーポレーション
    営業基盤本部 チャネル開発部
    幼児デジタル推進課
    課長
    清水 耕太郎 氏

  • 株式会社タスカジ
    代表取締役
    和田 幸子 氏

  • ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア
    マーケティング部 CRM推進課
    課長
    秋葉 武宏 氏