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未来の社会と、企業が仕掛ける「ゲームチェンジ」とは?

【「知創の杜」フォーカスシリーズ】ゲームチェンジ

このシリーズは、富士通総研が発行している情報誌「知創の杜」の中から旬なテーマを取り上げ、実際のビジネスに取り組んでいるコンサルタントを交え、対談形式でお届けするシリーズです。第7回のテーマは「ゲームチェンジ」です。)

対談者
松本 泰明(株式会社富士通総研 流通・生活サービス事業部 チーフシニアコンサルタント)
中谷 仁久(株式会社富士通総研 クロスインダストリー事業部 プリンシパルコンサルタント)
高橋 誠司(株式会社富士通総研金融・地域事業部 プリンシパルコンサルタント)
澤野 佳伸(米国富士通研究所 リサーチマネージャー)
※所属・役職は対談時2016年10月13日のものです。

成熟社会を迎え、求められるビジネスの新たな枠組み

[司会]
中谷 仁久(なかたに ひろひさ)
株式会社富士通総研 クロスインダストリー事業部 プリンシパルコンサルタント

――先進国を中心に社会、経済が飽和しつつある中、成熟社会での価値、あるいは顧客に対するサービスのあり方が変わってきており、社会、ビジネスの新たな枠組みが求められています。成長社会から成熟社会へ、所有から利用へ、そして循環へといった中で、どのようなビジネスの技術的変革(ゲームチェンジ)が起きているのか。今日はこの「ゲームチェンジ」をテーマにお集まりいただきました。澤野さんは米国シリコンバレーで様々な企業の方と交流がありますが、今の状況をお話しいただけますか?

澤野 今の世の中は中間層が相対的に貧しくなっていると言われています。背景には欧州を中心とした難民問題や、若者が職に就けないなど、いくつかの社会問題(ソーシャル・イシュー)があります。消費者は収入が減ると生活を合理化せざるを得ないので、「シェアリングエコノミー」(注1)に強く結びついていきます。シリコンバレーでは、テクノロジーに明るく、かつ収入があまり多くない若者がシェアリングエコノミーのサービスを積極的に利用しています。金融業界も、この流れが強いように見えます。

――日本の金融業界も自由化が進み、従来の延長では競争に勝てないという焦りがありますか?

澤野 金融機関の経営層の方はFintechに興味を示しつつ、既存のお客様を逃がさないマーケティング手法をとることが多いです。日本で今日、資産を持っているのは年配層ですし、若い人は年収が下がっているため金融商品への関心が薄れているからでしょう。若い世代の収入状況が上向かないので、すでに資産を持っている年配層のマーケットにより集中したいという企業動向が覗えます。

――高橋さんは、地域の産業活性化という観点で、地方自治体や産業振興に携わる人たちの意識に変化は見られますか?

高橋 誠司(たかはし せいじ)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部プリンシパルコンサルタント

高橋 地域のキーワードは「連携」であり、地域が一体となって、社会環境の変化や課題に対応するのがまさに地方創生ですね。IoT・ビッグデータ・ロボット・AI(人工知能)などは、地域で仕事をする際も重要なキーワードになっています。

――地方自治体と中小企業、地域住民が望んでいることが一致していることが大事ですね。

高橋 基本的には、自治体が地域の産業振興に直接的にできる役割はあまりないというのが私の持論です。自治体は商店街の活性化のためにイベント補助金等を出しますが、支援する理由は、その先に消費者がいるからであり、地域の生活が安全で豊かになるなら補助金を出すということですね。

――松本さんはブロックチェーン技術(注2)を活用し、小売・サービス・イベント等に新しいサービスを仕掛けていますが、お客様からの期待にはどのようなトレンドが見られますか?

松本 例えば、商店街と一般企業と自治体が連携しようとした時に、ブロックチェーンは非常に有効です。これは、誰かがすべてのサービスを一手に管理・提供する代わりに、参加者が一定の手数料を払う形でデータを共有するものです。集まったデータを活用する権利も、管理側が一括管理し、有償で提供するのではなく、参加者同士で緩やかに共有します。特に商店街などの小さな店舗は既存の大企業のネットワークに入るのは難しいので、「緩やかに、かつ簡単に情報共有」できることは、メリットが大きいと思います。

――「元締めや幹事を置かずにマーケットプレイスを作る」という、ある意味信頼関係のあるゲームを、皆がルールを守ながらビジネスを行うということですね。

松本 従来は大企業同士が連携し何年もかけて仕組みを構築しても、成功しなければ終了でしたが、今後は「緩やかに共同体に出入りしながら情報共有」できる仕組みが求められるような気がします。

ブロックチェーンは、新ビジネスに踏み出すトリガー

――製造業もモノを売るだけでなく、オペレーションや運用保守をお客様から受託し、利用する価値だけをサービスとして提供し、ビジネス領域を広げようとしています。ただ、ブロックチェーンでは「こんなことができるのでは」という先進技術をトリガーとしたビジネス展開が可能になりますね。

松本 従来のソリューションは特定業種向けであったため、他のサービスとの連携が難しい側面がありましたが、ブロックチェーンは他サービスとの連携が簡単にできます。従来の特定業種向けパッケージでは新たなビジネスを作り出す発想が難しいのに対し、ブロックチェーンを活用することにより、その既成概念を壊せると考えています。

――チャットボット(注3)も金融業界での適用が進んでいますが、人と人とのインターフェースにコンシェルジュ機能を提供するという点では、どの業種にも適用可能な技術ですね。

澤野 チャットボットは他業態や他コミュニティとつながるという点で、Fintechの最初の一歩だと思います。チャットボットの開発にMicrosoftやOracleやGoogleやFacebookが注力している理由は、さらにその先に音声インターフェース、さらにその先にあるVR(仮想現実空間)まで見据えているわけです。

――そういうインターフェースが改善されると、そのうち英語を勉強しなくても外国の方と会話できるのでしょうか?

澤野 近いところまで来ています。例えばAmazon Echoは、アクセントを聞きながら各個人の発音の特徴を理解し、ジャパニーズ・イングリッシュとネイティブ・イングリッシュを聞き分けてくれます。またGoogleは、今後はパーソナライズに特化していくと発表しました。今後新しいビジネスモデルが次々と発表されていくのではないでしょうか。

――これまでは利用者側が業務特化型のパッケージに合わせる形でしたが、今後は合わせなくても、パーソナライズされた仕組みが提供されるということですね。一方で、公共サービスはいかがですか?

高橋 国や行政の規制を可能な範囲で効果的に緩和し、より豊かで安全な地域社会を作っていくことが重要です。世田谷区や三鷹市、川崎市、横浜市といった先進的な取り組みを行う自治体では、企業と連携してブレークスルーしようとしていて、それが地域における新たな規制緩和や物事を新たに生み出していく動きにつながっています。

事業継続とマネタイズの鍵

――初期投資して事業を開始して事業継続するためには、安定的にお金を回収する必要があります。皆さんは検討しているサービスを継続してお金に換えるためには何が必要だと考えていますか?

松本 泰明(まつもと やすあき)
株式会社富士通総研 流通・生活サービス事業部 チーフシニアコンサルタント

松本 成熟した市場においては、製品の機能で差別化が難しく、どうしても価格競争になってしまいます。また、中間層の若い人がお金を使わなくなったと言われます。しかし、実はお金がないわけではなく、「好きなものにならいくらでもつぎ込む」というような嗜好に市場が変わってきたような気がします。例えば先日、千葉で2つの自治体と、出版社、放送局、プロ野球チーム、鉄道事業者を交えてアニメキャラクターを使ったコラボレーション企画を行ったのですが、多数の若者が訪れて出費し、地域も潤いました。別の動きとして、今、米国の映画や日本のアニメでも、中国から制作費が出資されることがありますクラウドファンディング(注4)の仕組みを使い、世界各国から出資者を募り、コンテンツ制作するなど、お金の流れがグローバル化しています。ブロックチェーンを使えば、グローバルで出資の流れ、収益還元の流れを管理することが可能となり、個人が好みに合わせて出資でき、幅広く出資者を募ることができます。

――ロングテールに対応できる豊富な品揃えができるプラットフォームが勝者になれるポイントということでしょうね。

松本 一企業が自社リソースのみでビジネスを行うのではなく、スポーツやアニメや映画の複数コンテンツを持ち寄り、お互いの購買情報を共有することで、マネタイズ(収益事業化)の機会が拡大すると思います。

――澤野さんはシェアリングエコノミーなどの新たなビジネスの枠組みが広がっていく中で、自社のマネタイズを行い、事業継続していくために何が必要だと思われますか?

澤野 米国に来て最初に気づいたのが、「所有権」と「使用権」という考え方の違いです。日本人は所有権を要求する民族であるのに対し、米国人は使用量に応じた対価を支払う民族です。レンディングプラットフォームを自動車会社が運営し、金融業に乗り出し始めています。いわゆるリース業を製造業がやるようになり、モノを作ってモノを出荷する製造業が、一歩進めて「モノを貸す」所まで行っているのです。

――マネタイズで一番難しいのは地方自治体だと思いますが、お金を還流させ事業を継続するための良い考えはありますか?

高橋 例えば鹿児島県薩摩川内市にある製紙会社の工場では、全国一自生する竹をパルプ材の原材料として収集するシステムがあるので、それを地方創生プロジェクトとして活用させていただくとともに、様々なビジネステーマで関連企業を集めて、竹で複合的に儲けていくビジネスを行っています。地域にお金が流れ雇用が生まれていくために、地域と一緒になって様々な支援を効果的に行い、着実に成果を出していくことが自治体のマネタイズだと思います。

――富士通のスタートアッププログラム第1号となったシタテルさんは、東京の有名なデザイナーと熊本の縫製工場を結んで、小ロットでこんなデザインが作れないかという要望をつなぐクラウドソーシングを始めました。まさにそういうことが新たな価値を生むと思います。

高橋 プラットフォームだけ作ってもビジネス化は難しく、事業化まで持ち上げていくうえで、いわゆる世話焼き人が調整し、IoTの仕組みとする形が望まれると思います。

新ビジネスを創る人材とは?

――最後になりますが、「こういう人材が求められる」「こういう育成の仕方がいい」といった話をお聞かせいただけますか?

松本 シェアリングを行い新しいメンバー間でエコシステムを築く場合に必要なのは、異業種のプレーヤーをつなぐことです。私も千葉のアニメコラボ企画で数十社に飛び込み、プロ野球チームや放送局や商店街をつなげました。実際にチャネルを作って各プレーヤーと話をまとめあげ、仕組みを成立させるまでの実行力を持つことが必要です。

澤野 佳伸(さわの よしのぶ)
米国富士通研究所 R&Dマネジメントオフィス リサーチマネージャー

澤野 シリコンバレーにはITに特化したエンジニアだけでなく、超一流デザイナーや医療や金融のトッププレーヤーも来ており、彼らが結びつくことで、これまで想像し得なかった質の高いサービスが生まれています。スペシャリストの重要性を日本より強く感じますね。また、日本はゼネラリストの平均点をとれる教育ですが、私の息子がこちらの学校で最初に聞かれた質問は"What is your difference?"でした。ユニーク性の重視は日本の教育でも今後より重要になると思います。

――日本は"What is your difference?"を押し殺し、「人と同じようにできること」を身に付ける教育をしてきましたが、今後は「違い=強み」のように教育方針も少しずつ変わるかもしれませんね。

高橋 今後ますます重要と思うキーワードは「考える」ことです。2045年のシンギュラリティ(注5)が現実になれば、単純作業はロボットに代わられてしまいます。それに対して、「思いや信念」をもって、こうしたら幸せになる、社会に役立つといったことを自分なりに考えて行動できる人材の育成や機会を作っていくことが重要だと思います。

澤野 息子の学校はApple本社があるクパティーノにあり、小学校から異文化とつながるためのITを徹底的に教え込みます。これは、SNS文化が発展した結果、個人が投稿したツイートやブログを様々な人に見てもらう機会が得やすくなっており、スペシャリティ、つまり高い知識や技術を持てばキャリアを形成できるということを教え込んでいるのです。

――教育も変わってきており、知識を手に入れる手段が多様化しITリテラシーも飛躍的に向上していますいつまでも驕らずに新しいものを学ぶスタイルは必要ですし、業種や技術に閉じずにネットワークをつなぎ、皆さんとも情報連携してビジネスを推進していきたいと思います。

(写真左から)松本、中谷、高橋、澤野 ※澤野は米国から電話会議で参加

(注1) シェアリングエコノミー : ソーシャルメディアの発達で可能になったモノ、金、サービス等の交換・共有により成り立つ経済のしくみ。
(注2) ブロックチェーン : 分散型台帳技術、分散型ネットワーク。
(注3) チャットボット : 人間の代わりにコミュニケーションを自動で行うプログラム。
(注4) クラウドファンディング : 不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うこと。
(注5) シンギュラリティ : 人工知能が人間の能力を超えることで起こる出来事とされ、テクノロジーが急速に変化し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうとする未来予測。

知創の杜(フォーカスシリーズ)「未来の社会と、企業が仕掛けるゲームチェンジ」

当記事の詳細をPDFでご覧いただけます。

コンサルタントやエコノミストの知見・ノウハウをご紹介する情報誌「知創の杜」 はこちら >>

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