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「ムーアの法則」はもはや限界! 「組合せ最適化問題」を解決する新アーキテクチャーを開発

今後、コンピュータが社会を改善するために必要なことは?

コンピュータの性能は日々進化し続け、世の中を大きく変えてきました。これからもコンピュータで実現したい夢は沢山あります。例えば社会問題の解決などです。災害復旧の手順を決める場合や、投資ポートフォリオの最適化、経済政策の決定など、世の中には限られた人や時間などの制約のもとでは意思決定が難しいケースがあります。これらの難しい意思決定に、コンピュータの力を借りることはできないでしょうか?

コンピュータが次に何をするべきかを自身で判断するためには、様々な要因の組合せを考慮して評価を行い、最適なものを選択する必要があります。これらは「組合せ最適化問題」と呼ばれています。「組合せ最適化問題」は、考慮すべき要因の数が増えると組合せの数が爆発的に増えるため、実用的な時間内で解くためには、コンピュータの大幅な性能向上が必要となります。ところが、過去50年にわたってコンピュータの性能向上を支えていたムーアの法則(注1)にあるような性能向上は限界に近づいていると言われており、半導体のスケーリングによる性能のかさ上げは、もはや期待できません。

今後、コンピュータが社会と生活を改善していくには、これまでとは異なる様々な手を打つ必要があります。その中の一つとして期待されているのが、量子コンピュータ(注2)など全く新しい原理のデバイスの登場です。

従来コンピュータの限界

しかし、現行の量子コンピュータは、この「組合せ最適化問題」を高速に解くことができますが、近接した素子同士でしか接続できないという制限があり、現時点では多様な問題を扱うことができません。一方、従来のプロセッサは、ソフトウェア処理により扱える問題の自由度は高い反面、高速に解く事ができません。このため、実社会で求められる多様な「組合せ」を最適かつ高速に解くために、新しい計算機アーキテクチャーの実現が課題となっていました。

(注1)「半導体集積回路のトランジスタ数は2年ごとに2倍になる」という法則。大規模集積回路の製造・生産における一つの指標とされている。インテル創業者の一人であるゴードン・ムーア氏が1965年に出した論文の中で初めて提唱。
(注2)量子現象を利用するコンピューティング技術の総称。組合せ最適化問題向けに、量子アニーリングと呼ばれる方式のものが開発されている。

最適な組合せを探す新しい計算機アーキテクチャーを開発

このたび、富士通研究所とカナダのトロント大学は、実社会における様々な課題解決のため、膨大な組合せの中から最適な組合せを探す新しい計算機アーキテクチャーを共同で開発しました。このアーキテクチャーでは、現実の問題への適用性を高めるため、CMOSデジタル技術を用い、自由に問題を扱うことができます。開発した技術の特長は以下の二つです。

一つ目は、「非ノイマン型(注3)処理でデータ移動を極小化する技術」です。ノイマン型(プログラム実行型)とは異なる非ノイマン型処理を使い、最適化問題の評価値が小さくなる方向に最適化の変数(ビット)の組を更新します。演算を行うためにまずメモリから問題をロードし、次に最適化の演算を必要なだけ行って、最後に結果を読み出します。演算を行っている間はメモリへの読み書きが発生しないため、その分の時間やエネルギーの損失が極小になります。また、基本回路間のデータ移動を抑えることにより、上位層へのデータ移動が殆どなくなります。

非ノイマン演算でデータ移動を極小化する技術

二つ目は、「基本最適化回路内の高速化技術」です。基本最適化回路では、確率論の手法を用いて、ある状態からより最適な状態への探索を繰り返し行います。複数ある次の候補に対するそれぞれの評価結果の値を一括して並列計算することにより、次の状態を見つけ出す確率を向上させます。探索の途中で膠着状態になった場合には、脱出確率を高めるための評価値に一定値を繰り返し加えることで、次の状態に移行しやすくします。これにより、高速に最適な解を求めることができます。

基本最適化回路の高速化技術

(注3)「ノイマン型」は、プログラムをデータとして記憶装置に格納し、これを順番に読み込んで逐次実行する計算方式で、現在の殆どのコンピュータが採用している。近年、コンピュータの性能の飛躍的な向上により、メモリから命令を読み出す速度が遅いという弱点が目立つようになり、別の基本設計を利用する「非ノイマン型」が検討されるようになった。脳神経回路をモデルとしたニューロコンピュータ、量子力学の素粒子の振る舞いを応用した量子コンピュータ、DNAを計算素子に利用するDNAコンピュータなどが非ノイマン型にあたる。

従来のソフトウェア処理と比較し、約1万倍の速度で動作

今回、1024ビットで表される組合せを扱うことができる基本最適化回路をFPGA(注4)に実装して評価を行ったところ、従来プロセッサで動作するソフトウェア処理に比べて約1万倍の速度で動作することを確認しました。

最適化演算を行う演算回路を複数用いて並列動作させることにより、現行の量子コンピュータより多様な問題が扱うことができ、扱える問題の規模や処理速度が向上できます。例えば、数千箇所ある物流拠点を最適化したり、限られた予算で複数のプロジェクトの利益を最適化する投資ポートフォリオを策定するなど、現在の汎用プロセッサでは手に負えない計算量の多い組合せ最適化問題を高速に解くことができるようになり、最適な意思決定を迅速に行うといった領域にICTの適用領域が広がることが期待できます。

富士通研究所では今後、開発したアーキテクチャーの改良を進め、2018年度までに、実社会の問題が適用できる規模である10万ビットから100万ビットの計算システムを試作し、実用化に向けて実証を進めていく予定です。

(注4)Field Programmable Gate Array。製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路。

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